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南果歩 抗がん剤治療中止のコメントが独り歩きして批判も

先日、女優の南果歩さんにインタビューする機会を得て、「週刊文春」(2017年10月19日号)に「南果歩独占告白乳がん公表1年半、初めて明かす苦悩の日々」というタイトルの記事を書きました。

きっかけはネットニュースで、南果歩さんが「術後の抗がん剤治療やホルモン療法をストップし、糖質制限などの代替療法を行なっている」と報じられたことでした(BuzzFeedJapan10月3日付「乳がん治療中の南果歩さんの講演『責められるべきは本人ではない』」)。

ちょうど私は、「週刊文春」で代替療法(民間療法)について記事にすべく、取材を進めているところでした(その記事は、南さんの翌週10月26日号に「著名人がすがった『がん民間療法』」のタイトルで掲載)。南果歩さんにも取材を申し込んだのは、どんな代替療法を、どんな考えで行っているのか、直接ご本人にお会いして確かめたいと思ったからです。

詳細は記事をお読みいただければ幸いですが、ご本人によると、代替療法といっても緩やかな糖質制限のようなもので、それによってがんの再発予防になることも期待してはいるものの、むしろ「一般的な健康法に近い」とのことでした。

コメントが独り歩きして批判される芸能人

南果歩 抗がん剤治療中止のコメントが独り歩きして批判も
<ピンクリボンフェスティバル2016>シンポジウムに出席し、乳がんの早期発見・治療を訴えた南果歩さん©時事通信社

しかし、亡くなったフリーアナウンサーの小林麻央さんが、「標準治療を拒否して代替療法に頼ったために手遅れになった」などと週刊誌で報道されたこともあって、ネットニュースのコメント欄などには、南さんの誤った選択が、多くの人に悪影響を与えるなどと批判する書き込みがたくさん見られました。

そもそもが、10月1日に東京・有楽町で開かれたピンクリボンシンポジウムで南さんが語った一部を、「日刊スポーツ」が切り取って報じたことが発端だったのですが、発言が独り歩きして、一方的に批判されてしまう芸能人は、ちょっと可哀想だなとも思いました(日刊スポーツ17年10月3日付「南果歩抗がん剤ストップ中と明かす」)。

ご本人に話をうかがってみると、南さんの病との向き合い方には批判すべき点よりも、むしろ学ぶべきところがたくさんあったのです。その一つが、南さんの治療選択でした。代替療法をやっていることよりも、そちらの方を多くの人に知ってもらいたい。そう思いながら、私は記事を書きました。

抗がん剤治療をやめたのは現代医療を否定しているからではなかった

南さんが抗がん剤治療やホルモン療法をやめたのは、決して現代医療を否定しているからではありませんでした。薬の副作用の出方は人によって異なり、軽く済む人もいますが、南さんの場合は手足のしびれ、めまい、高血圧などの副作用が強く出て、臥せった状態が長く続いたそうです。それが、南さんが治療を立ち止まろうと考えるきっかけになりました。

それを主治医に相談したところ、南さんの病巣は乳房温存切除で取り除くことができており、リンパ節転移もない状態だったことから、主治医も抗がん剤治療とホルモン療法の中止を肯定してくれたのだそうです。

セカンドオピニオン、サードオピニオンまで受けた勇気と行動力

それだけではありません。その選択が正しいかどうかを別の視点からも検討してもらうため、南さんは主治医以外の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」「サードオピニオン」を受けに行きました。その両医師も、南さんが薬をやめることを肯定してくれたとのこと。それだけ、慎重に慎重に検討を重ねての判断だったのです。

近年は、がんなど重い病気の治療選択にあたって、セカンドオピニオンを聞きに行く人がかなり増えました。とはいえ、まだまだ主治医に対する遠慮もあって、ためらう人が少なくありません。それだけに、南さんの行動力は評価されるべきでしょう。

それだけでなく、セカンドオピニオンを聞きたいと申し入れて、検査結果などを貸してもらうようお願いしたところ、主治医の先生は嫌な顔一つされなかったそうです。大学病院の女医さんだそうですが、定期検査だけでなく長期的な健康管理も考えてくれて、飲んでいるサプリメントなどのチェックもしてくれる、本当に心強い存在だと南さんは語っておられました。

南さんの主治医との関係性の築き方、そして主治医の患者さんとの向き合い方にも、学ぶべきところがあると私は感じました。

怖くて見られなかった傷口を少しずつ見ていく

さらには、南さんが「自分らしく生きること」を目標とされていることも、強く印象に残りました。乳房温存手術といっても胸の様子が変わるので、身体的なダメージだけでなく、精神的なダメージも大きかったそうです。そこから回復するため、「上がらない腕を少しずつ上げて行く」「怖くて見られなかった傷口を少しずつ見ていく」といった目標を見つけて、薄紙を一枚一枚はぐような日々が続きました。

しかし、そうしたつらい経験を通して、家族や友人、仕事仲間、医療チームに感謝する気持ちが強くなり、自分らしい日常や時間を過ごすことのかけがえのなさに気づいたのだそうです。このことを南さんは、「キャンサーギフト(がんからの贈り物)」という言葉で表現されていました。がんになるとつらいことが多いのですが、そんな日々の中でも「得るものもあった」と感じる人が多いと言われます。そのことを広く知ってもらうことも、意義があると私は思います。

その人の生き方をサポートするために治療がある

がん患者の中には、病巣を取り除ける人もいますが、がんと共存している状態の人たちもたくさんいます。しかし、どんな人も四六時中、治療ばかりしているわけではありません。その人が、その人らしく生きる時間を持てることが一番大切なのではないでしょうか。治療が目的なのではなく、その人の生き方をサポートするために治療があるのです。

南さんが語っておられるように、がんとの向き合い方に「これが答えだ」というものはなく、だれ一人として同じ答えには収まりません。乳がんをはじめ多くの病気で、標準治療を示す診療ガイドラインがつくられるようになりました。それを基準に治療選択を考えるべきなのでしょうが、その通りにすることがベストとは言えないこともよくあります。

その際、「自分らしく生きる」ために、何を大切にして、どう選択するのか。その一つの例として南さんは、彼女なりの向き合い方を示してくれたのだと思います。ですから、その人が選んだ生き方を、第三者が安易に批判すべきではないと私は思います。もし芸能人の治療選択が多くの人に悪影響を与えるというなら、ご本人の言葉から真意をくみ取ろうとせず、ニュースになりそうなところだけを切り取って報道するメディアの姿勢のほうを問題にするべきでしょう。

南さんだけではありません。がんを始めとする重い病に、有名無名の多くの人が向き合っています。当事者のありのままの言葉に耳を傾け、そこから何かを学び取ることこそが大切なのではないか──今回の取材を通して、あらためて強く感じた次第です。

(鳥集徹)

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