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「池の水」人気の内幕 異なる意見も取り入れた忖度なしの番組づくり

「池の水」人気の内幕 異なる意見も取り入れた忖度なしの番組づくり

池の水ぜんぶ抜く?

「テレビがつまらなくなった」と言われる昨今にあって、池の水を抜くだけの番組が異例の人気となっている。番組を手がけた伊藤隆行プロデューサーにその内幕を聞いた。

おかげさまで、『池の水ぜんぶ抜く』は、第6弾まで放送され、これまで合計で21の池の水を抜いてきました。いまも各地の自治体から「うちの池の水も抜いてほしい」という手紙が続々と届いている状態です。

まさか、ここまで人気になるなんて予想もしていませんでした。いまだに番組が当たったという実感すらありません。

『池の水』のヒットに対して、さまざまな方からありがたい言葉をかけてもらうのですが、「もう忘れました」と言っています。あえて成功体験は忘れて、毎回リセットしているんです。成功のフォーマットを作ってしまうと、それに固執して新しいことができなくなりますから。

『池の水』のもともとのアイデアは、スタッフと話し合う中で生まれました。知られざる仕事の裏側というテーマで企画ができないかと。そこで「かい掘り」という、池の水を抜いて底をきれいにする作業のことが話題に上がったんです。

その少し前に、池の中を警察が捜索するニュース映像を見ながら、「池の水をぜんぶ抜いちゃえばわかるのに」って考えてたんですよね。

その記憶が、かい掘りとつながって、池の水を抜いて何かでてきたら面白そうだなと。すぐに「これで2時間番組やらない?」とスタッフに相談しました。

「よく企画が通ったね」と言われますが、日曜日の夜8時台は『イッテQ!』(日本テレビ)に「大河ドラマ」(NHK)と激戦区のため、他局と同じことをやっていても勝てません。だから「いままでにないもの」をやろうと考えたのです。

とはいえ、会議に提出すると、最初は上層部に「『面白そう』だけで番組を作られたら困るよ」、「これで2時間持つのかね」と難色を示されました。

確かに、ふざけたような企画ですが、僕は成功する予感があって企画を出しているわけで、否定されても簡単には納得できない。

そこで上層部の人に直接会って、みながいる前で「どうしたら実現できるのか」と聞いたのです。そうこうするうち、タイトルを変えることで話がつきました。

見られないものを見せる

タイトルを『緊急SOS!危険生物から日本を守れ!』に変更して、「池の水ぜんぶ抜く」はサブタイトルに小さく入れることにしたんです。

あくまで、困っている住民を助ける感じを強調することで、なんとか企画が通りました。頭のなかには、水を抜くことしかなかったんですけど(笑)。

最初のロケのとき、幅広い年齢層の方々が見物にきてくれたのが印象的でしたね。まず午前中にはご年配の方がたくさん集まってくれました。「どこテレビだ?」と話しかけてくれたり、昔、この池でパンツ一丁になって泳いでいたころの話をしてくれたり。

また話が長いんですよ(笑)。午後には下校中の子供や親たちが、「がんばれ〜」と声援を送ってくれる。

池の底という怖いもの見たさに老若男女が集まってくれたのを見て、熱気があった時代のテレビっぽい雰囲気だなと思いましたね。

この番組は、視聴者にとってのエンターテインメントを提供できたからこそ、成功したんじゃないかと思うんです。そもそもエンタメは、ふだん見られないものや、非日常感があるからこそ成り立つもの。池の底がまさにそれだったのでしょう。

みんながテレビを食い入るように見ていたのは、現実世界より面白いものを提供してきたからですよね。でも、最近のテレビって、どっかで見たような安心感とも言うんでしょうか、手堅く数字が取れるような、無難な番組ばかりになってしまった。

バラエティの黎明期ならまだしも、すでに面白いものを知っている視聴者が多くいる時代、そこそこの面白さの番組は通用しなくなっています。

でもみんな頭ではわかっているはずなのに、チャレンジしない。それはやっぱり失敗が怖いからだと思うんです。だから過去の成功体験にしがみついてしまうし、前例がないものは排除してしまう。

もちろん失敗すれば、冷ややかな目で見られますが、それを怖れているようではテレビの未来はないと思います。

この番組だって、失敗する可能性があったわけです。池の水を抜くだけの2時間番組なんて、誰も企画として成立するとは考えていなかった。

視聴率の呪縛から逃れる

実際にロケをやるにしても、わからないことだらけでした。そもそも池の水を抜く業者に会ったことがないし、本当に水が抜けるかさえわからなかった。

ただ、こちらも何が起こるか予想できない状態だったからこそ、視聴者に「リアルさ」が伝わったのかもしれません。結果的に、ありのままの面白さを視聴者も面白がって見てくれたから、この番組はここまでの反響があったんじゃないかな。

テレ東だから実現できた部分もあると思いますよ。特にテレ東は、おカネも人も少ないテレビ局なので、アイデアで勝負していく文化がある。不思議なことに、テレ東には、心配されていた番組ほど当たる傾向があるんですよね。

『開運!なんでも鑑定団』が始まる際もそうでした。「人の家の蔵にあるものを鑑定するだけでゴールデン番組が成立するのか」と心配されていましたが、のちにテレ東を代表するヒット番組にまで成長しました。

PhotobyiStock

やっぱり、人って新しいものを目の前にしたとき、前例がないと、どう解釈したらいいかわからなくなるものなんです。お役所もそうじゃないですか。とりあえず批判する。でも反対に批判されるということは、気になっている証拠だと思うんです。

話し合い次第で突飛な企画も思いっきりやらせてくれるのは、テレ東ならではの芸当です。

今後は、今まで以上にどの局も独自のカラーが求められていくでしょう。せっかくこれだけのチャンネルや番組があるのだから、それぞれの局が「らしく」あってほしい。各局が横並びでワイドショーをやらなくてもいいじゃないですか。

もちろん視聴率も大切です。ビジネスモデルとしては、視聴率を取らなければ地上波は儲かりません。ただ、これからは視聴率(スポンサーからの広告収入)以外の稼ぎ方も同時に考えていくべき時代だと思います。

実際に、低視聴率でもアニメの放送が続けられるのは、グッズ販売など、他の部分で稼げているから。新しい稼ぎ方を見つけるのも不可能ではないはず。

たとえば、夜中3時に目が覚めてしまう高齢者が多いならば、その時間帯にワイドショーをやってもいいと思うんです。

台所で和服の女性が味噌汁を作っていて、うなじとか唇をひたすら撮るような昭和のエロスを感じさせる番組も面白いと思います。それでおじいちゃんが元気になってくれれば嬉しい。

でも、そんな常識外の番組は「視聴率が取れない」という理由で放送は難しいのが現状です。

視聴率以外の稼ぎ方があれば、それぞれの世代の生活サイクルを、より反映した番組も提供できるのではないでしょうか。そう考えると、まだまだテレビは可能性がある。

最近、地上波放送vs.ネット動画という議論がよくされますが、個人的にはネット動画に、地上波の視聴者を取られている認識はまったくありません。

今後はスマホやネットで見られてきた動画が、テレビ画面でも見られるようになっていくことが考えられます。つまり、地上波の番組もネット番組も、横並びで表示されるようになる。

結局は、どちらのコンテンツが面白いかだけの話。そこで、地上波vs.ネットの議論は意味をなしません。

「AbemaTV」(サイバーエージェントとテレビ朝日が手がけるネットTV)より面白い番組を作れば、視聴者は地上波を見てくれる。

いまは追尾型のドローンがあるのですが、それからひたすら逃げる番組なんて面白そうじゃないですか。欧米ではすでにスマホで番組を撮影したりもしています。

PhotobyiStock

今も昔も、そしてこれからも、テレビに求められるものは、やはりコンテンツの面白さなんです。じゃあどうやって面白い番組を作るか。

そのためには、いまのテレビマンが面白いと思うことを、一回ぜんぶ無視してみる。そうやって、ありえなかったものを「あり」にしていく。そうしないと、もう一度テレビが注目されるような時代はこないと思うんですよ。

あと面白いものを作るため、あえて僕は制作チームに、優秀だけど自分とは合わないスタッフを入れるようにしています。そのほうが「面白くない」とはっきりと指摘してくれますから。

テレビ業界で「忖度」なんて禁止ですよ。言うべきことを言わないと、いい番組なんてできるわけがない。

じつは僕、あんまりテレビを見ないんです。もちろん仕事では見ますけど、特に参考にしている番組もありません。この適度な距離感こそが、もしかして良いのかもしれません。

テレビの人って、クリエイター意識が強い傾向がありますが、どうも違和感があるんです。「どうだ、面白いだろ」と言われても、それがこれからもずっと面白いとは限りません。

『池の水』だって最初から、世のため人のため、地球環境のためを目的にしていたら、ここまでになっていなかったと思います。「ただ池の水を抜くだけで番組が成立するのか」という「不安」が視聴者の関心を引きつけたのでしょう。

誰もわからないことを、ありのままに伝える。素直さと勇気がこれからのテレビに求められていると思うんです。

伊藤隆行(いとう・たかゆき)
72年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、'95年にテレビ東京入社。バラエティ番組のプロデューサーとして『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』(日曜夜7:54〜不定期放送)や『モヤモヤさまぁ〜ず2』などを手がける

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