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山口達也の書類送検 被害者叩きに見る「認知のゆがみ」

山口達也の書類送検 被害者叩きに見る「認知のゆがみ」

過熱報道を見て思うこと

人気グループTOKIOの山口達也メンバーが、女子高校生に対する強制わいせつ容疑で書類送検された。

歴史的な南北首脳会談の前日であるにもかかわらず、ワイドショーばかりかニュース番組もこれをトップで報じ、本人の謝罪会見の場面が長々と流された。

国民的人気グループのメンバーによる性犯罪容疑というのは、確かにショッキングであるし、復興支援や東京オリンピック・パラリンピックなどに関する活動も行っているため、多方面に影響を及ぼす事態であることはわかる。

しかし、それにしても、隣国の歴史的イベントであり、わが国にとってもわれわれ自身の生命や安全がかかっている朝鮮半島の核問題や、拉致家族問題の解決が大きく動き出すかもしれない会談よりも、これが大事なニュースなのだろうかと、毎度のこととはいえ呆れてしまった。

さらに、被害者やその家族にしても、どのチャンネルに変えてもこれだけ長々と見たくもない顔が流れていたのでは、さらにその傷を深めてしまうのではないか。

メディアは、被害者の味方を装って責め立てるが、被害者のことを第一に思うならば、もっと節度のある報道をすべきである。

甘すぎる現状認識、不誠実な態度

会見の内容にしても、首を傾げざるをえない場面が多々あった。

真摯に反省していることは伝わってきた。その中で、感極まって泣いてしまうのは仕方ないが、終始泣いてばかりで言葉が不明瞭になりがちだった。

これでは、行動だけでなく感情のコントロールもできないのだろうかと思わせるほどだった。

自らの責任を感じているのならば、きちんと相手に伝わるように誠実に、そして明確に話をすべきである。

そして、肝心なところは「酔っていたのでおぼえていない」「捜査中なので話せない」などと発言を回避する部分が多かった。

もちろん、被害者のプライバシーにかかる部分もあると思われるので、詳細を話せないこともあるだろう。自己を守る権利もあるので、何もカメラの前で不利益になることをすべて話す義務はない。

とはいえ、酒のせいにして、自分の責任をあいまいにするのは誠実な態度と言えるだろうか。以前にも酒のうえでいくつもの不祥事を起こしていたと報じられているが、それが事実ならば、なおさらである。

過去の失敗から学び、酒との付き合い方やふるまい方を改めるのが責任ある大人の態度というものだろう。この期に及んで、酒のせいにするのではなく、長年の飲酒問題を放置しておいた自分の責任、そしてこのような事態を招いてしまった責任について言及すべきだろう。

また、自らの行為について会見では、「酒に酔ってキスをしてしまいました」と述べているが、同意のない相手に無理やりに性的行為をすることは、れっきとした「性暴力」である。

キスというのは、同意のある者同士が行うものであって、それを同列に述べてはならず、はっきりと区別するべきである。

あるタレントが「泥酔してキスを強制したことはわいせつ行為???」「たかがキスでしょ」「うがいして帰ってくればよかったのでは」などとツイートしているが、見当違いも甚だしい。

何より一番驚いたのは、「またTOKIOとしてやっていきたい」「戻れる場所があるなら戻りたい」と今後の希望を述べた点である。そのような楽観的希望を持つのは自由だが、この時点で言うべきではない。あまりにも時期尚早だ。

報道されていることが事実であるならば、事務所を解雇されてもおかしくはない事件である。自ら行ったとされることへの認識が甘すぎるし、これではいくら口で反省していると言っても、すべてが台無しである。

アルコール依存症なのか

山口メンバーについては、かねてからアルコール依存症の疑惑がたびたび報道されていた。

2年前の2016年に離婚に至ったのも、顔を腫らして眼帯をしてテレビに出たのも、アルコールが原因ではないかとの憶測を呼んだことがある。

今回の会見でも、アルコールで体調を崩して入院していたが、病院を退院した当日の事件であることが明らかになった。退院した日に、正体がなくなるほどに飲酒をし、挙句の果てに事件を起こしてしまうというのは、尋常ではない。

断片的な事柄をもとに安易に決めつけるのは控えるべきであるが、やはり飲酒に対するコントロールを喪失している可能性がきわめて高い。端的に言えば、アルコール依存症の疑いが濃いということである。

会見では、今後の飲酒についても問われていたが、「今は飲まないと決めているが、今後のことはわからない」としか答えられず、将来のことについては言葉を濁し、未練が相当あることがうかがえた。

〔PHOTO〕iStock

さらに、「アルコール依存症であるとは思わない」と否定もしていた。

アルコール依存症の症状の1つが、「問題の否認」であると言われている。

酒のうえで数々の問題を起こしているのもかかわらず、それに直面できず、自らの飲酒に問題はないと認識してしまう、いわば「認知のゆがみ」である。この会見では、それが如実に表れていたと見ることができるだろう。

アルコール依存症の克服は、並大抵のことではない。

少し入院すれば、体調のほうは回復するかもしれないが、今回のように退院するや否や大量に飲酒をしてしまうことから考えても、症状は相当進んでいるとみるべきで、10年20年単位で治療にコミットする必要がある。

「復帰」を口にするのであれば、その先のことであろう。

なぜ強制わいせつに及んだのか

さらに、1つはっきりしておくべきことは、アルコール問題と「性犯罪」は別物だということである。この事件においても、この2つはきちんと分けて考えるべきである。

アルコール依存症患者は、わが国では100万人を超えているが、言うまでもなく彼らのほとんどは性犯罪とは無縁である。

酩酊下で暴力行為に及んだり、性犯罪に及んだりする者も確かにいるが、それは元来、そうした問題性を有していたからだとみるべきである。

その問題性とは、暴力を肯定する価値観であったり、女性を性的対象としか見ない態度であったり、社会の規範やルールに対する甘い認識であったりする。

例えば、本人は会見のなかで、被害者について「好感の持てる方で、話が合う」と述べていたが、50歳前の中年男が高校生に対して述べるコメントとしては異様だ。

彼はかつてアイドルとしてちやほやされ、今でも若いつもりでいたかもしれないが、相手からみれば50歳近いオッサンであり、おそらく父親よりも年上の存在だろう。

それを自覚していないからこそ、「相手も好意を抱いているはずだ」などと、独りよがりな思い込みをし、自宅に誘ったり、性的な接触を持とうとしたりしたのではないだろうか。

これもまた「認知のゆがみ」である。

一番やってはいけないこと

ところで、この事件を受けて、テレビやネットではさまざまな意見が飛び交っているが、一番やってはいけないことは、被害者を叩くことである。

すでにあるテレビ番組で、往年の演歌歌手が「被害者も悪い」と臆面もなく言ってのけたことが批判を呼んでいる。

百歩譲って、軽率だったのかもしれないが、相手はまだ高校生である。

大スターから誘われたら、舞い上がってしまうかもしれない。あるいは、普段は父親のように慕っていた存在が、いきなり襲ってくることなど夢にも思わなかったのかもしれない。将来芸能界を夢見る少女だったとすれば、無下に断ることができなかったのかもしれない。

どんな性犯罪でも、被害者が悪いことは絶対にない。どんな事情があったにせよ、同意のない相手に性暴力に出ることが許される理由など1つもない。加害者が100%悪い。

それでなくても、被害者は自分にも非があったのではないかと思い、罪悪感に苛まれることが多い。

私自身、病院や刑務所で何百人もの性犯罪者の治療に携わってきた。

そのなかで、痴漢常習者は「相手も喜んでいると思う」「あんな短いスカートをはいているのは、触ってくれと言っているようなものだ」と言うし、小児性愛者は「相手から誘われた」「愛情の印だった」などと平気で言うことがある。

被害者の非を責め立てる者は、加害者と同じ「認知のゆがみ」をもっていることを告白しているのと同じである。

〔PHOTO〕iStock

これからの長い道のり

山口メンバーは、飲酒問題を放置していたことで、未成年を傷つけ、多くの人に多大な迷惑をかけ、大きすぎる代償を払ってしまったわけであるが、彼に今後立ち直る道があるとすれば、まずは自分の問題と向き合うことである。

以前にも書いたことがあるが、もし依存症なのであれば、依存症に打ち勝つための最初の一歩は、「負けを認める」ことである。

「自分の手には負えない」と負けを認めてはじめて、アルコールに勝つための戦いの長い道のりのスタート地点に立つことができる。

そして、その次には誰かに頼ることである。それは依存症治療の専門家だったり、「断酒会」など、すでに長い時間をかけてアルコールと戦ってきた「先輩」だったりする。

そして何より、許してもらえるかどうかわからないが、すばらしい仲間もいる。

どんな過ちを犯した者であっても、立ち直れないことは絶対にない。ただ、その方向を誤らないでほしい。

彼はTOKIOである前に、1人の人間なのだから、TOKIOに戻る戻らないということよりも、まずは被害者に対する償いをし、壊してしまった信頼関係や友情を修復することが先決だろう。

TOKIOには戻れなかったとしてても、罪を償って1人の人間としての尊厳を取り戻し、友情を回復することはできるだろうし、そのほうがずっと大事なことではないだろうか。

それを差し置いて「TOKIOに戻りたい」などと言ってしまうことは、問題の重大さがわかっていない証拠であるし、自分の進むべき方向が見えていないことの証拠でもあるだろう。

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