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RADWIMPS衝撃の愛国ソング「HINOMARU」を徹底解剖する 「日出づる国の 御名の下に」…

RADWIMPS衝撃の愛国ソング「HINOMARU」を徹底解剖する 「日出づる国の 御名の下に」…

「HINOMARU」は明確に愛国ソング

「さぁいざゆかん日出づる国の御名の下に」などと歌う、RADWIMPSの新曲「HINOMARU」(野田洋次郎作詞・作曲)が「軍歌っぽい」として話題になっている。

軍歌云々はあとで触れるとして、この歌はなにより明確に愛国歌(愛国ソング)である。

まず、歌詞の内容を確認しよう。

この歌は、「あなた」と「僕ら」でなっている。

「あなた」とは、「御国」であり、「日出づる国」であり、「帰るべき」祖国であり、「守るべきもの」である。

これにたいし、「僕ら」とは、日の丸を仰ぎ見ると感情が高まる者たちであり、「気高きこの御国の御霊」を身体に宿す者たちであり、父母から歴史を受け継いだ者たちである。

そして「僕ら」は「さぁいざゆかん」と鼓舞され、「あなた」の「御名」の下に、どんな困難があろうと突き進んでいく。たとえ「僕ら」の身が滅んでも、「あなた」は永遠に栄えよと願いつつ――。

以下の部分に、この歌のエッセンスが凝縮されている。

ひと時とて忘れやしない帰るべきあなたのことを
たとえこの身が滅ぶとて幾々千代にさぁ咲き誇れ

このような「あなた」(祖国)と「僕ら」(国民)の関係性は、典型的な愛国歌のそれである。

〔PHOTO〕iStock

今年4月には、ゆずの「ガイコクジンノトモダチ」(北川悠仁作詞・作曲)が同じように「政治的な歌」として話題にのぼった(参照「ゆず新曲に『靖国・君が代』がいきなり登場、どう受け止めるべきか」)。

だが、その歌詞で登場するのは、あくまで個人である「僕」と、その外国人の友達である「君」であり、日本や国歌・国旗への愛も、随分と遠回りで間接的に示されているにすぎなかった。

それにくらべれば、「HINOMARU」の内容のなんと直接的でわかりやすいことか。この歌が明確に愛国歌だと述べたゆえんである。

浮かぶ疑問

とはいえ、愛国歌として完成度が高いかどうかは別の話だ。

「HINOMARU」の歌詞をみると、古めかしい言葉づかいと、現代的な言葉づかいが微妙に混ざり合っていて、どうしても違和感をぬぐえない。

「日出づる国」は、なぜここだけが歴史的仮名遣いなのだろう(現代仮名遣いでは「日出ずる国」)。

「さぁいざゆかん」や「どれだけ強き風吹けど」「遥か高き波がくれど」などは、なぜ口語調と文語調が目まぐるしく切り替わっているのだろう。

祖国に敬意を表して「御名」「御国」とするならば、なぜ「旗」は「御旗」とならないのだろう。

……こうした疑問が何度も思い浮かんでしまう。

〔PHOTO〕iStock

現代人に向けて、親しみやすくわかりやすいように、言葉をつないだのだといわれるかもしれない。

しかし、「御国の御霊」は「御」が二度もつづいてなんとも重苦しいし、「御霊」がなんなのかよくわからない(大和魂的なもの?キリスト教で聖霊のことを「御霊」ともいうので、「あなた」と「僕ら」と「御霊」で三位一体にでもなるのかもしれないが――いずれにせよ、理解しにくいし、そこまでこだわるわりには日本語の使い方が雑すぎる)。

そのうえ、「HINOMARU」の歌詞はきわめて抽象的であって、(日の丸を除けば)愛国歌に欠かせない具体的な記号や英雄や物語に乏しく、どうしても散漫な印象を受ける。タイトルと「日出づる国」を伏せれば、ほとんど無国籍だ。

いかにメロディーが優れていても、歌詞が空虚では、愛国歌として十全な機能を果たせない。

作者は、愛国心を発露しようとして、愛国歌の構図はほぼ完全におさえた。だが、そこに当てはめる言葉の選択に失敗してしまった。そのため、この愛国歌がフェイクであり、空洞であることをかえって明らかにしてしまったのではないか。

もちろん、愛国歌など突き詰めれば、すべてフェイクであり空洞ではある。これはどこの国のものでもそうだ。

だがそこに、あたかも揺るぎない国民の歴史や、世界に誇るべき大義名分があると感じさせ、フェイクや空洞を覆い隠してこそ、優れた(そしてときに本当に危険な)愛国歌なのである。

その点で、一見して違和感をぬぐえない「HINOMARU」は、愛国歌としての完成度が低いといわざるをえない。

2020年に向けて、愛国ソングは増加する?

そもそも「HINOMARU」は、6月6日に発売されたRADWIMPSのニューシングル「カタルシスト」のカップリング曲である。

「カタルシスト」は、2018年のFIFAワールドカップを控え、フジテレビ系のサッカー番組のテーマソングに決まっている歌だ。

スポーツの試合はもともとナショナリズムを刺激しがちであり、応援歌などにもそうした要素が紛れ込みやすい。

『カタルシスト』通常盤

そのため、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、「われこそ」と愛国的な音楽が続々と作られてもおかしくない。

差異化を図るため、もっと過激で、直接的なものや、あるいはもっと巧みで、自然に受け入れられるものも出てくるかもしれない。

そこにはかならずしも思想信条は必要ない。国策イベントやナショナリズムに興味がなくても、作詞者、作曲者などがビジネス志向で積極的に愛国的な音楽を大量生産する――これはかつてこの国で軍歌が蔓延ったときの状況そのものだった。

エロ・グロ・ナンセンスが流行ったときには、モダンな流行歌を作り、満洲事変や日中戦争が勃発したときには、勇ましい軍歌を作る。

軍歌もまたビジネスの対象だったのであり、流行りの歌手が歌う、大手レコード会社の有力な商品のひとつだった。

今回の「HINOMARU」は「軍歌っぽい」と形容された。

それは表現からいわれたのだろうが、むしろその発生の経緯にこそ軍歌と比較すべき部分があるように思われる。

そして、作者の真意はさておき、愛国歌がビジネスチャンスと結びついているのだとすれば、なかなか止めることは難しい。

したがって続出する愛国歌については、すでに何度も述べてきたとおり、受け手の側で「またこういうのが出てきたか」と受け流し、影響力を削ぐしかないのである。

「右も左もなく」をいい意味に

ところで作者の野田洋次郎は、ツイッターで「HINOMARU」についてコメントしている。最後にこれに触れておきたい。

野田はこの歌について、「日本に生まれた人間として、いつかちゃんと歌にしたいと思っていました」「僕はだからこそ純粋に何の思想的な意味も、右も左もなく、この国のことを歌いたいと思いました。自分が生まれた国をちゃんと好きでいたいと思っています」「まっすぐ皆さんに届きますように」などと述べている。

HINOMARU
ただまっすぐに届きますように。pic.twitter.com/McV51WYoX0

-YojiroNoda(@YojiNoda1)2018年6月8日

以上を読む限り、「この歌は敢えて作ったもので、愛国への皮肉ではないか」などとの裏読みは必要なさそうだ。

それより、以下では「右も左もなく」の部分に注目したい。

この表現は、ゆずの「ガイコクジンノトモダチ」の「TVじゃ深刻そうに右だの左だのってだけど君と見た靖国の桜はキレイでした」をほうふつとさせる。

インターネット上で「右でも左でもない」は、だいたい「普通の日本人」を自称する、右派の自己紹介文である。それゆえこの表現は評判が悪いし、今回の問題でそれに拍車がかかってしまった。

しかしだからといって、「偏っていていい」と開き直って、仲間内で「いいね!」しあいつつ、SNS上で敵対陣営と延々殴り合っていることがいいわけではない。その不毛さや閉鎖性もまた自明である。

「右でも左でもない」を目指すことは、本来よいことなのだ。だから、こう考えてみてはどうだろうか。

「右でも左でもない」とは、自分は中立なので絶対正しいと居直ることではなく、自分が偏っていることを自覚しつつ、それを是正するため、さまざまな見解を集めつつ、特定の陣営に与せず、よりまともな状態を絶えず目指しつづけていくことなのだと。

それでもなお愛国心を示すのであれば

そのうえで、あらためて愛国歌の問題に戻りたい。

作者は、(ビジネスなどではなく)純粋な気持ちから「HINOMARU」を作ったと述べている。それをあえてそのまま信じるとしよう。

だがそれでも、この歌は典型的な愛国歌の構造に取り込まれ、しかも不完全なものになってしまった。純粋な気持ちほど、思い込みや偏見と裏腹で、創作をするときに頼りにならないものもない。

本当に「右も左もなく」であれば、過去の事例を参照にしつつ、それとはまったく違った、「軍歌っぽい」とはほど遠い、新しくも穏当で、バランスの取れた作品を理知的に目指さなければならないのではなかったか。

たいていの国には第二国歌や愛国歌のたぐいがある。国際試合のときに気軽に愛国心を謳いたいという気持ちもわからないではない。

そもそも愛国心自体は全否定されるべきものでもない。だが、そこには毒もあるのであって、それをうまく避ける回路を作る点にこそ、創作の妙味があるだろう。

今後生まれるこの手の作品には、せめてそういう工夫を期待したい。

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