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太田光の裏口入学報道 父がネットワークの門を叩いたと新潮

太田光の裏口入学報道 父がネットワークの門を叩いたと新潮

爆笑問題「太田光」を日大に裏口入学させた父の溺愛(1/2)

結成30年の「爆笑問題」はお笑いの第一線で長らく活躍してきた。ボケたりイジったりの太田光が相方と出会ったのは日大芸術学部だが、太田はそこへ裏口入学していた。受験日直前にホテルへ缶詰で、現役教員のレクを受け……ほとんどは父の溺愛によるものである。

***

毎週日曜日に掲載される朝日新聞の求人欄には、【仕事力】と題するコーナーがあり、各界の著名人が自身の来し方、仕事との向き合い方を4週続けて語る体裁となっている。

6、7月は太田光(53)が登場していた。敬愛して止まぬ立川談志が、落語を“業の肯定”と定義したときのことを振り返り、ざっとこう語る。

太田光の裏口入学報道 父がネットワークの門を叩いたと新潮 太田光

〈例に取ったのはご存じ「忠臣蔵」。師匠は「討ち入りを果たした47人を英雄として描く映画やドラマなどが圧倒的に多い。でも落語はね、討ち入りをするのが怖くてたまらず逃げていったような人を描くんだ。「しょうがねえなあ、人間だからなあ」ってね」と〉

談志の著書『あなたも落語家になれる』の内容に沿ってもう少し細かく続けると、

「現代流(いまりゅう)にいいますと、この浅野会社は5万3千石だから、300人くらいの社員がいたはず。しかし、仇討ちに行ったのはたった47人で残りはみな逃げちゃった。そこには善も悪もありません。人間てなァ逃げるものなのです。そしてその方が多いのですョ……。その人たちにも人生があり、それなりに生きたのですョ、と。こういう人間の業を肯定してしまうところに、落語の物凄さがあるのです」

実力では及ばない。しかし、カネで解決できる。ならば逃げちゃおう。肩書きを得ることで人生に有利に働くかもしれない……。

太田も含め、裏口入学に頼る者の心象風景とはそんなものだろう。名誉欲、金銭欲、権力欲。人間の業が、人間そのものがとてもわかりやすく表出している。文科省のキャリア官僚のように、国民から絞った膏血(こうけつ)を裏口の原資としたのではないから犯罪に当るわけでもないのだが、ともあれ、冒頭の【仕事力】は、

〈高校の入学式の日です。見知らぬ誰かに自分から声を掛けるなんて恥ずかしいし、ずっと黙っていたら、そのまま高校の3年間が過ぎていってしまった気がします〉

という告白に始まり、父母のこと、大学受験、中退、お笑いデビュー、その後の不遇、処世術の披露……といった構成となっている。

「部活は演劇部」

太田は東京・板橋にある大東文化大学第一高校に在学した3年間、誰とも口をきくことがなかったという。級友には変な奴だと思われていただろうと自覚する高校時代、登校拒否もせず皆勤賞だった。実際、同級生に聞いてみると、

「あー、太田光ねえ。はっきり言って、クラスメイトと関わり持たない奴だったんだよね。部活は演劇部。これは間違いないよ。先輩は1人いたけど、俺らの代で演劇部は彼だけだった。ウチの高校って、ラグビー部とか陸上部とかサッカー部とか、体育会系が強いから、あんまり文化系の部活に入る奴いなかったのよ」

孤独な時間の反動だろう、

〈大学でははじけてやるぞと思っていました。日本大学芸術学部演劇学科を受験したのは、俺にとっての夢が映画を撮ることだったから。筆記試験後の面接では暗かった高校生とは打って変わって、過剰なギャグや物まねでアピールしたように記憶しております(笑)〉(【仕事力】)

試験場からそんなこんなだったが、キャンパスでは、

〈教授に理論を説かれても物足りない。ほとんど授業には出ないまま、様々な舞台を見に行き、大学3年生の時にはシナリオセンターに通っていました〉(同)

という状態で、85年に中退。今の相方の田中裕二(53)を誘って舞台に上がったところ、観客の心を掴んだ。それがきっかけでプロダクションからスカウトされ、23歳でお笑いデビューを果たす。

試験官に“引っ込め”

今年で結成30年。お笑い界の第一線を長らく張り、タモリ、ビートたけし、明石家さんまといった斯界トップに早くから高い評価を受けてきた。MCを務める生番組「サンデー・ジャポン」(TBS)はスタートから既に17年。単なるお笑いの枠を超え、政治や経済に歯に衣着せぬ主張を展開する姿勢が幅広い層から支持を受けている証左だろう。先の同級生が、

「何しろ影が薄い奴でさ。テレビで爆笑問題みても最初は気がつかなくて。友達から教えてもらって、初めて分かったくらいなんだよ。記憶に残ってるのは、休み時間になると、なぜか廊下で立っていたことくらい。何をするでもない、遠くを見ていたんだよね。坊主が伸びた感じの髪型で一切シャレっけなんてなくて、皆がやるように、学ランの丈の長短を変えたりとかは一切しない。本当地味な男だった」

と話すような高校時代と今とでは隔世の感がある。

ちなみに田中はと言うと、早稲田大学のアナウンス研究会に入るのが夢で出願したものの、受験日を間違えて浪人。翌年、日芸を受験し、2次の実技試験で太田と遭遇している。「週刊文春」2008年11月20日号で田中自身が語ったところによると、

〈みんなが大講堂に集まって説明を受けてた時に、試験官に向かって、「引っ込めぇ!」と奇声を発してたのが、太田なんです。試験の真面目な席で、異常な行動というしかない。本当ならその場で連れ出されて失格ですよね〉

密約がある以上、連れ出されてもいい、あるいは、そんなことはあるまいと太田は高を括っていたのだろうか。もっとも、田中も冷静だったとは言い難い。

〈目だったほうがいいという浅はかな考えだったというか、野球のユニホームで受験に行ったもんだから。「こいつとオレは絶対落ちる」と確信してました。それがなんとか合格して学校行ったら、太田がいたんですよ。それで、「あんた受かったんだ」って声かけたのが、最初です〉(同)

田中が野球のユニフォームだったか否かはともかく、前年に受験日を間違えなければ、いやいや、そもそも太田の裏口が奏功していなければ爆笑問題が生まれることはなかった――。

太田を溺愛した父

太田の父を三郎氏という。その父が少年時代だから日本が大東亜戦争に突き進もうかという頃合いに、春風亭柳好の弟子になろうとしたり、東京農工大在学中には太宰治に自作の小説を読んでもらったこともあるという。

1969年に内装会社「三光社」を板橋に設立し、程なく南青山に移転。高級焼き肉店「叙々苑」の内装と共に、有名なあのロゴも書を嗜む三郎氏が担った。

三光社は三郎・光の会社ということになるのだろう。

元新劇女優だという三郎氏の妻がやきもちでも焼きそうなほどだが、実際、三郎氏は一人っ子の太田を溺愛していた。その集大成が「日芸裏口入学」である。

日大の芸術学部と言えば、「お坊ちゃんが遊びに行く大学」と揶揄する向きもあるが、医学部を除いてパッとしない他と違い、看板学部と言えよう。OB・OGの名を少し挙げただけでも、深作欣二、森田芳光、市川森一、宍戸錠、篠山紀信、林真理子、三谷幸喜、ホンマタカシ、宮藤官九郎、今をときめく中園ミホ……彼らを欠いては芸能・文化が停滞した、あるいは、するのではないかという才能が輩出している。

8つある学科のうち、最難関は映画学科。太田は映画監督に憧れ、長じてそれを実現するのだが、第1志望は日芸の映画学科だった。

太田の自伝には、

〈俺は中学から高校へ進む時点で、いずれ日芸に行きたいと思っていたんです。というのも、日本で演劇や映画を教えてくれる大学というのはココぐらいしか思いあたらなかったから〉(『爆笑問題太田光自伝』)

とある。とはいえ、気合を入れて受験勉強に取り組んだとは言い難く、

〈高3の時には、日芸がダメなら専門学校の横浜映画学校に行ければいいやって思ってましたから〉(同)

実力ではとても受からないと考えた三郎氏は、知る人ぞ知る裏口入学ネットワークの門を叩いた。息子の受験を翌年に控えた83年後半のことである。その頃、大学の裏口入学案件というものは、各私立大から独立したこのネットワークに集約されていた。そしてそこから各大学に働きかけ、進学を斡旋する形だったのだ。

日本を代表する指定暴力団の、有力親分の愛人芸者が産んだ娘がいて、そんなちょっとややこしい事情を抱えた人物と三郎氏はひょんなところから知遇を得た。そのコネを通じこのネットワークの元締めに辿り着いている。組織の力は極めて強く、「最も確実に入学できる道」だったのだ。

とはいえ太田の場合、それが極めて難産だったことは、日大関係者が、当時の“謀議”などを回想する通りである。

(2)へつづく

「週刊新潮」2018年8月16・23日号掲載

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