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チームプレイに切り替える リーガルVはドクターXより長続き?

チームプレイに切り替える リーガルVはドクターXより長続き?

いよいよ始まった米倉涼子(43)の新ドラマ「リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜」(テレビ朝日系)。放送前から前シリーズの「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」を弁護士版にしただけ、との声もあったが、どっこいこの2つは似ているようで全然違うというのはコラムニストの林操氏。どこがどう違うのか、ご覧あれ。

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もう米倉にもオスカーにも、続ける気はない──そういう「『ドクターX』これで最後」説が流れて幾星霜、あの話もようやくホントになったのかねと思わされるのが、今シーズンテレ朝系で始まった「リーガルV」であります。

主演が米倉涼子、企画が所属事務所のオスカー・プロモーションの社長、放送枠がテレ朝の木9という座組み・枠組みからして「V」は「X」と同じ。タイトルも「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」に対して「リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜」で、「カタカナ4文字+アルファベット1文字+職業+氏名」という文法が共通してる。

チームプレイに切り替える リーガルVはドクターXより長続き? 米倉涼子

ゆえに、放送スタート前は「リーV」、医者が元弁護士に、医療モノが法律モノに差し替わるだけという印象が強かったんだけれど、この読み、第1話を見てみたら、半分アタりで半分ハズれでした。

米倉涼子が超有能で自信満々、派手好みでカネ好き、口は悪いが、強い者にオモネらない正義の人で、冴えわたる専門技術で悪を叩くという基本の構図は「ドクX」そのまま。1話完結ベースながらシリーズ通しての敵役もいて、それが医療なり法律なりのギョーカイの大物だという点も同様。エリート系なのに技量じゃ米倉に劣り、いつもからんでくる同業者の男がいて、演じるのが勝村政信であるところもまた然り。

というあたりは、大方の予想どおりだけに、「ドクX」とは違う新商品を期待してた人は落胆し、「ドクX」の続編が見たかった人は一安心するでしょう。

だがしかし一方で「リーV」、実は「ドクX」から大きく変わったところもいくつかあって、それがなかなか味になっていたり、「ドクX」からの改善になっていたりもするから、油断できない。

脱・米倉個人プレイに期待

個人的に今回、こりゃうまくやったなと一番感心したのは、「ドクX」における米倉涼子の個人プレイ体制を、「リーV」では米倉をリーダーとするチームプレイ体制に切り替えたこと。

失敗しないフリーランスの外科医・大門未知子ってのは、皮膚移植を受けたことのない女ブラックジャックであり、銃の代わりにメスを持つ女ゴルゴ13であって、つまりは絶対最強のマンガの主人公。たまのスペシャルで出くわすくらいならともかく、3カ月近く毎週、アクロバティックな個人芸による勝利(と、それに驚く周囲の面々の阿呆ヅラ)を見せつけられるのは、21世紀の大の大人にはけっこうキツかった。

その点、「リーV」の元弁護士・小鳥遊翔子は、暴力団がらみの不祥事で資格を剥奪され、大手の法律事務所をクビになったという、脛に傷持つ身。表立っての弁護士活動は自分自身ではできないから、他の弁護士と必ず組まなきゃならない。

自分で新たに立ち上げる事務所には、元法学部教授の高橋英樹(74)を看板の所長として、能力も度胸も足りない若手の林遣都(27)を手足のイソ弁に引っ張り込むし、高橋の教え子で米倉にやり込められた過去を持つヤメ検の勝村政信(55)もなぜだか巻き込んで、まず弁護士が3人。

その下で働くパラリーガル(あの小室圭クンで認知度バク上げしましたな)にも、銀行員あがりの安達祐実(37)、警備員あがりの荒川良々(44)、夜は現役ホストの三浦翔平(30)の3人(全員、前科あり)を雇い入れてる。

実際のところ第1話は、痴漢冤罪の刑事訴訟でも不当解雇の民事訴訟でも、事務所の総力で勝つというより、米倉が独りで勝ってみせる「ドクX」パターンだったんだけれど、これは誰がリーダーであるかを事務所の面々、そして視聴者に思い知らせるための初回限定のはずで、今後も続くとは思えない。

弁護士役はもちろんパラリーガル役にまで芸達者を揃えた(ただし、今のところ三浦は除く)からには、彼らが米倉ともっと深く絡んで事件に取り組んでいかなきゃギャラの無駄づかいだし、何より、弁護士3人にパラリーガル3人に自称管理人で事務所の実権を握る米倉を足せばホラ、「七人の侍」の一丁上がり。「リーV」が明確な意図の下にチームものとして企画されたことは明々白々でしょ。

だもの、第2話以降、個人的に期待してるんですよ、米倉と事務所の面々ががっぷり四つに組んで、子供じみた個人プレイじゃなく、大人らしいチームプレイで快刀乱麻の勧善懲悪……という展開を。

ワタシも含め、いろんな人が「ドクX」の単純さをケナすときに引き合いに出してきた「水戸黄門」だって、よく見りゃ光圀の個人プレイではまったくなく、単身じゃなく、助・格に弥七、お新にお銀、うっかり八兵衛まで含めたチームプレイだし、最近の例を引くなら、いい大人が集まって展開する子供じみたチームプレイで成功したのが「三匹のおっさん」だった。

とかく絵空事ジミてしまいがちなのが勧善懲悪モノ、そこに少しでも地に足のついた安定感・現実感を醸し出すのには一匹狼の個人ワザより、たとえ3匹の子豚なり7匹の子山羊なりでも連携ワザの方が有効なわけで、これがうまく機能していくなら「リーガルV」、「ドクターX」より長いシリーズになることも夢じゃない。

引き継いじゃった「安っぽさ」

あれ?ちょと褒めすぎました?いや、「リーV」にだっていろいろ穴はあるのよ。たとえば、テレ朝伝統の「土ワイ」直結な2時間ドラマ的安っぽさは「ドクX」からきっちり受け継がれちゃってます。

まず、クレジットによれば法律監修が3人に法律指導が1人、ちゃんとついてるのにソッチ方面の設定や用語がユル目。裁判のシーンの冒頭に出るテロップの「第2回公判期日」は「第2回公判」だけで充分だし、痴漢冤罪で検察側に控訴を取り下げさせて法律のプロたちが喜ぶなら「無罪」より「無実」と言うべきだろう。

主人公の米倉は鉄道オタクって設定で、鉄ちゃんとしての知識と経験が初回の法廷でも勝利の鍵になるくらいだから、鉄道監修も1人、クレジットされているんだけれど、この分野でも疑問あり。依頼者との接見に自信の持てないイソ弁の林が、同行を渋る米倉をエサで釣るための駅弁として「上越線高崎駅のだるま弁当」を挙げるんだけど、それを言うなら「高崎線高崎駅のだるま弁当」ではないかと(高崎では上越線より先に高崎線が開業してます)。

他にも、1部上場の大手化学メーカーの開発部長が安いノートPC使ってたり、娘が未就学児だったりするのはおかしいし、そのメーカーの最近のスキャンダルを弁護士が「経理不祥事」と呼ぶのもおかしい。平成も末期の1部上場の大手企業なら「会計不祥事」じゃないと、黒い袖カバーを腕にはめた社長の奥さん(専務)が算盤で帳簿つけてる昭和の町工場になっちゃうよ。

こういう「土ワイ」めいた粗さは脚本にもあって、見ていて「ドクX」のときと同じように特に頭が痛くなるのは、設定や状況の説明を安易にセリフで片付けられすぎるとき。「こちらのエース弁護士としてご活躍のはずですよね?」とか、「確かに京極教授は、法律学教授経験者に対する認定制度で弁護士資格を持ってはいますよ」とか、「先月も一審で敗訴して依頼人の母親まで死なせる結果になってしまって」とか、それ役者に無理なセリフ回しを強要しなくても、映像なり字幕なりでスマートに処理できる情報でしょ。

もひとつ、演出、というより役者の見せ方にも、大ヒット連ドラの続編ならぬ安っぽさがつきまとう。敵役の大手法律事務所で稼ぎ頭の弁護士であるはずの向井理(36)が、かなり頻繁に(速水)もこみち(34)そっくりに映るわ、腹を立ててる勝村政信が阿部祐二(60:今は「スッキリ」や「ワイドナショー」のリポーター)に見えるのは、いちいち興冷めです。

とはいえ、このあたりはもう、つけても仕方のないイチャモン。テレ朝・木9の米倉・オスカーものを楽しもうと思うなら、細部に宿っているのは神でないと信じきれる強くて鈍い心、あるいは高度な鈍感力が欠かせません。

たとえ大手事務所の美人秘書か何かの菜々緒(29)が相変わらず、身ぶり口ぶりの一々でアナタの注意をストーリーの流れから彼女自身(の資質に対する疑問)へとそらしてくれるとしても、責任は彼女ではなくキャスティング担当者にあることと思い出し、意識を筋立てに戻しましょう(今、このくだりを書くために資料を確認したら、菜々緒の役どころは秘書でも受付嬢でもなく、弁護士だったとのこと。訂正のうえ、唖然とします)。

元弁護士の米倉涼子43歳が外科医時代と変わらず、ボディーラインを強調するファッションに身を包み続けていることに納得がいかないアナタには、吉報さえあります。同じような問題意識は制作側、そして米倉自身も共有しているようで、「リーV」の第1話には米倉が25歳だと偽ってキャバクラの面接に臨み、あっけなく、かつ、すげなく追い返されるというギャグが、ちゃんときちんと盛り込まれてました。

軽め・明るめ、コメディー強化

そう、今度は延々、悪口を連ねてきながらも、この「リーガルV」を「ドクX」のように早々と「見ずにすませる」認定できない理由は、チームプレイ体制への変更の他にもあって、それは「ドクX」よりさらにコメディー色が強いこと。

米倉が女優として現在ただいまのポジションまで上り詰めるきっかけになったのは、同じテレ朝・木9の「黒革の手帖」(もう14年も前か……)。そこから「けものみち」「わるいやつら」「交渉人」と、同じ枠で出世を続けるにおいては、作品はもちろんのこと、彼女の芝居もシリアス系でした。

他局の他の枠では、たとえばTBSがリメイクした「奥さまは魔女」(やっぱり14年前)では、作品はコメディにして米倉はコメディエンヌだったけれど、これは見事な失敗。直後に主演した「黒革」が大当たりしたせいもあってか、特にテレ朝のドラマでは作品も芝居も軽い・明るい系より重い・暗い系に偏りがちになっていたわけです。

その流れが変わったのは、6年前に始まった「ドクターX」。権威・権力に必ず勝たなきゃいけない孤高の外科医という筋立て・役柄には重さ・暗さが不可欠ながら、そのままストレートにつくってストレートに演じりゃ「おんな白い巨塔」になっちゃうからか、ご存知のとおりコメディー要素がかなり盛り込まれて、米倉の芝居でも軽さ・明るさが広く世に受け入れられた。

この軽さ・明るさがさらに一歩進んだのが「リーガルV」で、作品としては、まず舞台を医療から法律に変え、テーマを生死という絶対的なものから正義という相対的なものに軽量化。キャスティングを見ても、米倉の味方サイドの重鎮が岸部一徳(71)から高橋英樹に、敵サイドの重鎮が伊東四朗(81)・西田敏行(70)から小日向文世(64)という具合に、軽め・明るめ方向へと軸足が動いてる。

初回でも、どれだけ笑えるかはともかく、ギャグは大ネタ小ネタともにテンコ盛りで、米国産の名作「アリーmyLove」が記憶の底から浮かび上がってくるほど……というのは、すみません、嘘だけれど、少なくとも制作陣の頭の中には「リーガルハイ」がなかったらおかしいと思えるレベルではある。

声に出して読みたいタイトルごっこをしてみるなら、「りいがるはい」と「りいがるぶい」の差は極小。法律監修方面からは最初に商標の類似リスクが指摘されなかったのかね?

「ドクターX」-「白い巨塔」+「リーガルハイ」=「リーガルV」
……こんな計算が簡単に成り立つと考えるほどお人好しじゃないけれど、成り立ってくれるのならありがたいと思うくらい、ここんところの連ドラにはガッカリし続けてる身ではあり。少なくとも今期においては「リーV」、期待せざるをえません。同じ法律モノと言えば同じ法律モノである特定外来種の「SUITS/スーツ」(フジ系・月9)、アッチの方は、第1話を見終えてすぐ、連ドラ予約を解除しちゃったからなぁ。

いや、「リーV」への期待は今シーズンに限りません。これが当たってシリーズになるのなら、その分、このさき「ドクX」の新作を目にする確率が下がるからね。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999〜2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2018年10月19日掲載

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