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ビートたけしと共演NG扱い THE MANZAIにハチミツ二郎がかけた思い

ビートたけしと共演NG扱い THE MANZAIにハチミツ二郎がかけた思い

本来、芸人とは日常生活の埒外に棲息する人間たちである。舞台の上に立つ彼らの目は醒めている。客席の機微を肌で感じながら、ネタを調節して笑いを取っていく。彼らには?笑われているのではない、芸で笑わせているのだ?という強い矜持がある――これはノンフィクション作家・田崎健太がベテラン芸人に取材し、その人生を描き出した『全身芸人』(太田出版)の書き出しだ。

芸人は躯ひとつで観客と日々対峙し、笑いでねじふせる、逞しい人間たちである。そして笑いは刹那でもある。笑いは時代にぴったりと寄り添い、世間を席巻した笑いもあっという間に風化し、使い捨てにされる。

特にテレビは残酷である。そんな中、彼らは何を考え、どう生き残ろうとしているのか。

ハチミツ二郎は芸人が認める、芸人の中の芸人、若き?全身芸人?だ。テレビ、舞台、プロレス、ビートたけし、立川談志――田崎とハチミツ二郎が、長州力のいきつけの居酒屋で酒を酌み交わしながら語り尽くした、究極の「芸人論」。

「お前、それ言っちゃ駄目だろ!」

田崎ぼくは今年、『真説・佐山サトルタイガーマスクと呼ばれた男』と『全身芸人』という本を上梓しました。プロレスラーと芸人というのは、己の肉体で、多くの観客と対峙するという共通点があります。ハチミツ二郎さんは、芸人であり、レスラーとしてリングに上がり、メキシコでルチャ・リブレのライセンスも取得しています。

二郎少し前ですけれど、長州力さんと東京に戻る新幹線のグリーン車で一緒になったことがあるんです。ぼくは嫁と二人。それまで長州さんとは面識がありませんでした。トイレに行くときに挨拶して席に戻ると、嫁が「長州さんがさっき来て、一緒に飲みませんかと言われた」と。それで長州さんの席に行き、二人で60本ぐらい缶ビールと酎ハイを飲んで、車内販売のワゴンが空になってしまった。途中からウィスキーの小瓶と氷をもらって、それも全部飲みましたね。

田崎長州さんはお笑い、芸人が大好きですものね。

二郎長州さんは酒を飲みながら、さきイカとか柿ピーとかを小袋から鷲掴みにして、1袋を2口ぐらいで食べちゃうんです。つまみも(車内販売の)ワゴンからなくなりましたね。そのとき長州さんから言われたんです。俺たちは一緒の仕事だと。それでぼくが「長州さんって、プロレス界で一番演技力がありますものね」って返したら、「お前、それ言っちゃダメだろ!」って、バーンと背中を叩かれた(笑)。

田崎『真説・長州力』を書くとき長州さんに何十時間も話をしましたけれど、よくテレビを観ているんですよ。そして芸人の動向に詳しい。ハチミツ二郎さんは好きなタイプの芸人だったんですね。

二郎名古屋あたりで、グリーン車をのぞきに来るおっさんがいたんです。そのとき、車両には、ぼくと嫁と長州さんともう一人しか乗っていなかった。しばらくするとそのおっさんは手帳とボールペンを持って戻ってきた。ああ長州さんにサインを頼んでくるんだろうなと。断るだろうなっていうのは雰囲気で分かったんですけれど、その断り方に度肝を抜かれたんです。

田崎なんと言ったんですか?

二郎「長州さんですね?」って言われて「違います」と答えたんです。どこからどうみてもあの大きな体は長州力じゃないですか。なのに違うって。さすが長州力だと。

田崎それ、長州さんのいつもの手です。「長州さんですよね」と話しかけられると、「違います」ってすたすたと歩いて行く(笑)。

二郎俺もそれからサインを断りたいときは、「違います」って断るようになりました。

田崎そこから長州さんとの付き合いが始まったんですか?

二郎いや、そのときだけです(笑)。「六本木の居酒屋にいるので、いつでも来てください」って言われたんですが、どこの店か分からないじゃないですか。『真説・長州力』を読むと、田崎さんはいつもこの店で長州さんに話を聞いている。だから、今日の対談場所をここにしてもらったんです。

芸人とプロレスラーの「共通点」

田崎二郎さんも「プロレスラーと芸人は似ている」と思うことはありますか?

二郎昔のレスラーと今のレスラーって違うじゃないですか。芸人も同じで、昔の芸人と今の芸人は違う。見事なもので、昔の芸人と昔のレスラー、今の芸人と今のレスラーは似ている。

田崎破天荒が許された時代を生きてきた人間と、そうでない人間の差ですね。

二郎昔はどっちも飲む、打つ、買うをやっていた。でも今はそんな人はいない。レスラーは炭水化物を取らず、揚げ物を食べるときは衣を剥がして食べる。ぼくらの若いとき、芸人はいかに飲むかだったけど、今は平気で「ぼくは飲みません」って言える。

田崎二郎さん、いま幾つでしたっけ。

二郎44歳です。

田崎昔気質、オールドスクールな芸人と今の芸人の境目はどの辺りになりますか?

二郎自分たちぐらいが境目だというのは、もう10年以上前に次長課長と話していましたね。次長課長は年は一つ下。キャリア的にはほぼ同じ。

次長課長や俺らのときは、飯を食い終わっていても、先輩(芸人)から電話が来たら、行きました。彼女と一緒にいても、先輩から誘われたら、女の子を帰してそこに行きました。ところが、俺らの下ぐらいから「もう飯食いました」とか「今、彼女と一緒にいるんです」って断るようになった。ぼくらは?間?だからその違いが良く分かるんです。俺らは(先輩の誘いを)断らないけど、(後輩からは)断られる(笑)。

田崎物書きの世界も似たようなところがあるかもしれません。そもそも酒を飲まない人も増えました。

二郎新日本(プロレス)の真壁刀義さんと親しくさせてもらっているんですが、あの人は若い頃に先輩から死ぬほど殴られていたわけじゃないですか。でも、俺たちがやられていたときは『教育』、今はなんで『体罰』になるんだって。

もう一つ?境目?を感じるのは、後輩に奢るか奢らないか。俺は(ビート)たけしさんのところにいました。たけしさんは、後輩や弟子の分はもちろん、店に居合わせた知らない人の分も全部払って帰る。でも、俺のちょっと上から後輩がいても払わない人がいる。『全身芸人』の中で、月亭可朝さんが、取材前はお金に渋いことを言っていたのに、気を許してからは焼肉を気前よく奢ってくれたという話がありますよね。あれは昔の芸人さんという感じがした。

月亭可朝(写真/関根虎洸)

田崎お金があるのかないのか分からないのに、気前がいい。

二郎古い芸人ってそこが一番魅力だと思うんです。浅草系の人で、この人、確実にここ数年テレビで観ていない、営業があるとも思えない、っていう人から「食え食え」って言われると、俺も心配になる。お金を借りてきてくれたのかなとか、奥さんが公務員で金があるのかな、なんて思ってしまう(笑)。

品川庄司とのライバル関係

田崎二郎さんは岡山生まれ。高校卒業後に芸人を志して上京。

二郎プロレスラーか芸人になろうと思っていたんです。ただ、当時、プロレスは身長180cm以下は考えられなかった。それで芸人になろうと。

田崎吉本総合芸能学院(NSC)東京校の一期生で、品川庄司と同期。芸人を志す人間ばかりですから、競争も激しかったんでしょうね?

二郎(首を振って)ぼくは殴り合いというか、喧嘩の毎日だろうと思っていたんです。で、そういうつもりで来ていたのは、500人のうち俺と品川(祐)だけ。勝手な勘違いでした(笑)。

田崎品川庄司の二人は当時から面白かったんですか?

二郎今と一緒です。俺と品川は、もう口も利かないぐらいに意識していたいんですけれど、そのときから人生は決まっていたというか……。

俺は授業でドッカン、ドッカン受けるんですよ。みんなプロ志望の奴ら相手です。でも品川庄司はウケない。その後、生徒の中から選抜メンバーを選んで客前でやるんですけれど、ぼくたちは選ばれず、品川庄司は大将として起用される。実際に、彼らは客前では受けるんです。俺は普段の授業ではすごく受けるけど、試験まで辿り着かないから、俺の相方はやめていくんですよ。それで、ぼくは吉本をクビにされたんです。

田崎その後、二郎さんはインディーズでの活動を経て、先ほど話が出たように、たけしさんのオフィス北野に所属しますね。2000年代は『エンタの神様』(日本テレビ系)『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)というお笑い番組が大人気となりました。その中で、二郎さんの東京ダイナマイトは、波に乗りきれなかったという印象があります。

二郎『エンタの神様』で、番組側から「ボケとツッコミを替えろ」って言われて、それで5本収録したことがあったんです。普段は(相方の)松田(大輔)がボケで俺がツッコミなんですが、視聴者に分かりやすくするためか、その役割を替えろと言われた。しかし、結局それはオンエアされなかった。最後の最後で、「やっぱり駄目だな」って元に戻したんです。

そして満を持してオンエアーの日、(2004年アテネ)オリンピックで、俺らのネタの間にヤワラ(谷亮子)ちゃんが金メダルを獲った。当然、視聴者は(試合を中継している)NHKに行きますよね。そうしたら翌週、俺らのオンエアーなくなりました。ヤワラちゃんの金(が原因)でも、視聴率が低かったら駄目なんです。そこまで視聴率を追求するのはあっぱれですよ。いまだに大喜利とか、ヤワラちゃんをネタにするときは悪く言ってます(笑)。

ビートたけしと「共演NG」?

田崎2008年、二郎さんはオフィス北野を退社。慕っていた、たけしさんの元を離れたのはどうしてですか?

二郎今までどこでも話していなかったんですが……。今年、オフィス北野があんなことになりましたよね。昔から、現場(芸人)とフロントの仲が悪かった。ああなるのは分かっていたんです。ただ、(問題が弾けるのは)たけしさんが亡くなった後のことだと思っていましたが。(つまみ)枝豆さんから、「(オフィス北野は)いつか駄目になる。お前たちはネタが出来る。俺とタカ坊(ガダルカナル・タカ)で殿と話をつけるから、抜けろ」と。

田崎つまり、二郎さんたちは漫才、コントの腕があるから、その力があるうちに他の事務所に行けと、枝豆さんとガダルカナル・タカさんが気を遣ってくれた。

二郎そうです。枝豆さんが、いち早く脱藩させてくれた。

田崎辞めるときに、殿こと、たけしさんと挨拶されたんですか?

二郎枝豆さんと話をしてから、1ヵ月ぐらいして会ったんですよ。ガダルカナル・タカさんに付き合ってもらって挨拶に行きました。そしたら楽屋に入るなり、たけさんが「遅いよ」って。俺らは挨拶に行くのが遅かったのかと思ったら、違った。「辞めるのが遅いよ」って。「俺の事務所は、俺のところにいなきゃいけない奴の事務所なんだ。お前らはネタが出来るんだから、出た方がいいよ」って。

田崎たけしさんからアドバイスはありましたか?

二郎「とにかく寄席に出ろ」と。そのときは、『レッドカーペット』も『エンタ(の神様)』もショートネタブーム。そしてひな壇芸人。でもたけしさんは、短いネタはやるな、ひな壇やるなって。「寄席芸人がまた勝っていく時代になるから」と。

田崎つまり、寄席に出て、客の前である一定以上の時間をこなすことが、芸人としての地力となる。それをやれとおっしゃった。

二郎ええ。それで別れ際、ぼくらが楽屋から出ようとしたら、たけしさんが「おい!」って呼ぶんです。「頑張れよ」って言われるのかなと思ったら、「また一緒に番組やろうぜ」って。

Photobygettyimages

田崎ぼくは二郎さんの出ている番組を全て観ているわけではないですが、その後、たけしさんと共演しているのは記憶にないんですが……。

二郎テレビでは一度も共演していないです。ある(放送)作家の人に聞いたら、たけしさんとぼくたちは「共演NG」だと。ダイナマイトとたけしは駄目だ、ということになっているらしいです。

田崎つまり……東京ダイナマイトはオフィス北野を辞めた。たけしさんと何かあったのだろうから、共演させない方がいいという判断をしている。

二郎忖度ですよ。たけしさんの機嫌を損ねたくないから。噂レベルの話であっても、危なそうな人間を起用するのはやめよう、人畜無害な奴を使おう。それが今のテレビです。

『全身芸人』で、毒蝮三太夫さんは「素人ウケを狙う芸はせこい」という(立川)談志師匠の言葉を意識していると書いてあったじゃないですか。俺も若手のときに、談志師匠に「お前は勲章を欲しがるな」と言われたことがあったんです。でも、それを守れなかった。

ぼくらはM-1で優勝できなかったけれど、「THEMANZAI」だけはどうしても獲りたかった。どんだけ周りが忖度して、共演NG扱いされても、THEMANZAIで勝ち上がれば(大会最高顧問の)たけしさんと一緒に出られる。だから優勝して、たけしさんからトロフィーを受け取って、その場でたけしさんにプレゼントするつもりでした。

田崎THEMANZAIでは、2013年大会の決勝大会に進出したのが最高成績。

二郎東京予選で1位を獲って決勝進出しました。そのときも本番前、俺らはずっとたけしさんの楽屋にいるんですよ。もしかすると業界的には、(アントニオ)猪木と前田(日明)が一緒にいる、みたいな(笑)。

田崎UWFから出戻った前田日明さんは、猪木さんとの対戦を望んだけれど実現しなかった。そして、試合中に長州さんの顔面を蹴り上げたことで、新日本プロレスから解雇されたという一件ですね。

二郎俺はプロレスの見過ぎかもしれないけど、なんでもプロレスで考えちゃうんですよね。オフィス北野を辞めたときも、長州さんみたいに戻れるんじゃないかっていう気持ちだったし。

田崎長州さんは二度、新日本プロレスに出戻っていますからね(笑)。今も新日本と関係はないのに、新日本のジムで練習していますし。

爆笑問題・太田の忘れられない言葉

田崎二郎さんの姿をテレビであまり観ないのは、たけしさんの「ひな壇芸人になるな」という教えに従っているからですか?

二郎昔、爆笑問題の太田(光)さんのライブに出させてもらったことがあるんです。太田さんがいるとみんな萎縮しちゃう。誰も控室に遊びに行かないです。それでも喫煙室で会っちゃう。みんなは挨拶だけして逃げちゃうんですけど、太田さんは俺にだけ話しかけてくるんですよ。それで、「どうやったらテレビに出られるか教えてあげようか?」って言ってきたんです。

田崎二郎さんから訊ねたのではないですよね?

二郎もちろん何も聞いていないんですよ(笑)。そう言われれば、俺は「はい」って言うじゃないですか。そうしたら、「つまらないことばかり言ってりゃ出れるんだよ」って。

田崎太田さんらしい(笑)。

Photobygettyimages

二郎俺たちは劇場に出ているから、目の前の客を笑わせる、面白いことしか言っちゃいけないという感覚。でも(テレビの)観覧客というのは、本当につまんないことを言っていればいいんですよ。

昔、(フジテレビ系の)『ごきげんよう』に出たとき、(タレントの)LiLiCoさんと一緒だったんです。こちちのトークは弾んで、向こうは何も面白いことを言っていない。でも、彼女の方が拍手も笑いも多かったんです。要するに表情とか言い方なんですよね。それで観覧客はわーっとなる。

俺たちはそっちには行かない、いや、行けないですよ。ハルク・ホーガンになるつもりだったのに、気がついたらカール・ゴッチになっている(笑)。

田崎強いけど地味で、玄人受けするレスラー。

二郎さっきの談志さんの言葉じゃないですけれど、俺たちは同業者から「こいつ、強い」って思われないとやりたくないんですよ。例を出したら悪いんですが、勝俣(州和)さんや出川(哲郎)さんは、明るくて元気が良くて、絶対にスタジオを沸かせられます。でも、あの人たちがなんば花月やルミネTHEよしもとで?トリ?を取れるかと言ったら、また違う話なんですよ。

「カネを出す客」の覚悟に応えたい

田崎ぼくは中田カウス・ボタンが好きで、何度も劇場に見に行っているんですが、二人は必ず?トリ?。ときに前に出てきた芸人が滑り倒すときがありますよね。最後に出てくるカウス・ボタンは、その場の空気を読んで、盛り上がっているときは高めのテンションで始めて、冷え込んでいるときは、ゆっくりと上げていく。これが板の上に立ち続けている芸人の凄さだなと感心してます。

二郎俺らも劇場には?トリ?で出ているんですけれど、トリっていうのは、本来はギャラを「総取り」するから?トリ?なんです。でも吉本の場合は関係ない。テレビに出ていたときに比べて、確実に年収は下がりました。

田崎東京ダイナマイトも、その日の客席を感じてネタを微調整していくんですか?

二郎そうですね。加えて前の芸人が歌のネタをやっていたら、こちらは別のをやるとか。

田崎かつての新日本プロレスでは、「前座のレスラーは大技を使ってはいけない」という不文律がありました。漫才の世界では逆なんですね。トリに出て来る芸人からは、お金を払ってくれる客に満足して帰ってもらう義務を背負っている、という凄みを感じます。

二郎お金ってすごく分かりやすい。500円でも1000円でも、お金を払ってくれる客に対してはネタが出来る。でも、スーパーの広場とかで見に来ている人にはネタは出来ないですね。

テレビの怖さは、どこにあるか

田崎ぼくらの世界でも本を買ってくれる読者と、ウェブでタダの記事だけ見ている人間とは、反応が違う。

二郎ウェブの方が文句を言う奴は多いじゃないですか。だから、俺はお金って大切だと思うんですよ。

今の時代、数百円で本は買えない。家庭を持っている中年サラリーマンの人なんか、20代の独身よりもお小遣いが少なかったりする。その小遣いの中から本を買ってくれるんですよ。『全身芸人』はこの対談の前に頂きましたけど、『真説・長州力』も『真説・佐山サトル』も予約注文で買いました。『全身芸人』も自分で買おうと思っていたので、田崎さんは1冊売り損ねましたね(笑)。

田崎当然のことながら、二郎さんは劇場に足を運んでくれる客が大切だと。

二郎吉本の劇場もそうなんですけれど、(単独)お笑いライブをやっていますよね。普通のお笑いライブは3500円。でも俺たちは5000円。一番前の席は1万円取っている。それでも一番前はだいたい(発売開始から)1分で売り切れる。その金額を払うって、相当な覚悟だと思う。覚悟のある人が1列目、2列目に座ってくれて、その思いが劇場全体に波及していく。

田崎敢えて聞きますが、テレビに出ている方が楽じゃないですか。それでお金も儲かる。

二郎俺がなんでカール・ゴッチになっちゃったかというと、テレビって面白いことをもっと面白く伝えることが出来るんです。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)のゼネラルプロデューサーの加地(倫三)さんなんかは編集の天才で、現場で起こったことよりも、効果音とか写真とかテロップで面白くして、視聴者を笑わせる。スタジオで滑ったなと思っても、他のシーンをくっつけてなんとかしてしまう。それはまだいいんです。でもテレビって、面白かったことを面白くなくして伝える人もいる。

田崎素材を台無しにしてしまうという意味ですか?

二郎スタジオですごく盛り上がっているのに、オンエアーではナレーションで済ませて、どうでもいい会話を使う。そういう番組の編集をする人とは、ぼくらは感覚が違うんです。もし、それが正解ならば、街ブラ(番組)は芸人がやらなくても、安住(紳一郎)アナのような人がやったほうがいい。おばちゃんの好感度も高いだろうし。

田崎街をぶらぶら歩いて、当たり障りのないコメントで繋いでいくタレントで十分。

二郎ここ10年、15年のテレビの流れというのは、喧嘩をするかもしれない、問題を起こすかもしれない若手とぶつかって作っていこう、という感じじゃない。完全にこっち(制作サイド)のやりたいことをやってくれる芸人を使う傾向がある。

「面白至上主義」の道を選んで

田崎ぼくが「全身芸人」に惹かれたのは、テレビの中に縮こまって、コメンテーターやひな壇芸人を演じて小金を稼ぐことに汲々としている芸人へのアンチテーゼでした。月亭可朝さんのように、〈一夫多妻制の確立と、風呂屋の男湯と女湯の仕切を外すこと〉という公約を掲げて選挙に出て、全てのレギュラー番組を降板し、そしてそれをシャレとして後悔しない。それが一般人には真似出来ない芸人の「粋」であり、格好良さだと思うんです。

二郎ここに20代のビートたけし、20代の立川談志、20代のとんねるずがいても、今のテレビは使わない。

俺みたいな?面白史上主義??面白潔癖症?の人間からすると、太田さんから言われた「つまんないこと言ったらテレビに出れるよ」というのが、頭から消えないんです。もしかして太田さんは言ったことさえ、覚えていないかもしれない。そんなに(笑いを)突き詰めなくてもいいという意味だったのかもしれないんですけど。

田崎自分の選択した道が正しいという手応えはありますか?

二郎今、軒並み単独ライブって客が入らないんです。でも、俺たちの今年のルミネTHE吉本での単独ライブは、全席即日完売したんです。

考えてみたら、今年1年間、テレビでは一回もネタをやっていない。テレビを拒否したから客が増えたという変な現象。2000人、3000人が入るわけじゃないですれど、最低500人、600人は付いてきてくれている。知り合いが新しく小屋(劇場)を作るって言うので、こけら落としの興行を頼まれたんです。売り出したら、90席2日分がやっぱり1分で売り切れました。

田崎お金を払う客がそこまで付いてきているのが凄い。

二郎でも世間の人はそんなこと知らなくて、街の人は俺を指差して「あー誰だっけ、テレビで観たことがある」とか「何だっけ、最近テレビに出ていない人」っていう、テレビ至上主義がまだまだまかり通っている。

「板の上に立ち続ける」ということ

田崎ぼくは以前、この「現代ビジネス」で日本のテレビドラマについて原稿を書いています。その中で、「今、(日本の)テレビドラマなんて観るのは馬鹿だけ。話が面白いかどうかとか、どうでもいいんだ。自分の好きなタレントが出ていたら、キャーと言って喜ぶ人、そういう人だけが観ている」というあるTVプロデューサーの言葉を取り上げました。

これは極論過ぎるかもしれないけれど、ぼくも同じようなことを感じてます。ドラマに限らず、テレビを観ているほとんどの人は、東京ダイナマイトの単独ライブに行くこともないだろうし、ぼくの『全身芸人』のようなノンフィクションに金を払って読むこともない。そうした人が毒のない、大して面白くない芸人の出ているテレビを時間つぶしでぼんやり観ているのではないか、と。

二郎俺はやっぱり芸人というのは、コンプライアンスからはみ出してナンボのもんだと思います。今は本当に、お利口さんしかテレビに出られなくなっている。

田崎ヤジロベエのように旨くバランスを取っている毒蝮(三太夫)さんはともかく、可朝さんなんて、今のテレビには到底出られない。

全身芸人の一つのテーマは、芸人の「老い」でもありました。二郎さんはまだ44才。まだ老いや衰えを感じることはないとは思いますが、将来的には必ず老いと向き合わなくてはならない。その怖さってありますか?

二郎たけしさんは、「言葉が降ってこなくなった」って、俺の年で漫才を辞めているんです。今、テレビで第一線でやっている方で、44才のときに板の上に立っていた人はいないと思う。板の上に立つっていうのは、新しいネタを作って定期的に客の前に立つということ。(島田)紳助さんは40代で司会だけになり、ダウンタウンも40代になると、板の上では漫才していない。

田崎二郎さんもそういう立場になるつもりだったんですか?

二郎そのつもりだったんですけれど、上のメンバーがどかないので、ずっと板の上に立たなきゃいけないんです(笑)。今、俺は何をしているかというと、客前でネタをやって、家に帰って酒飲んで寝る。このままでいいんだったら、まだまだ50代になっても(レベルを)上げていける。

「客を掴む感覚」を知る

田崎衰えはないですか?

二郎ネタの上ではないですね。大喜利とかをやると、瞬時に降ってこないというのはありますけど(笑)。ナメているわけではないですけど、劇場に関してはイージーですね。

(オフィス北野から)吉本に入って、年間4、500回ほど劇場に出るようになったんです。浅草花月に出ていたときでした。あそこは、はとバス(ツアー)で来るおばちゃんばっかりなんです。客がどうこうというわけじゃなくて、そこである時、俺は気がついたんです。「もうスベらない」って。

田崎猪木さんや長州さんがよく言う、「客を掴む感覚」ですね。

二郎(プロレスラーの)鈴木みのるさんって、パンクラス(総合格闘技団体)からプロレスに来たばかりの頃に、格闘家なのかレスラーなのか、また格闘技の世界に戻るのかって、客が戸惑っていた時期があったんです。それがある時期から、みのるさんの試合が毎回、もの凄く盛り上がる。みのるさんに聞いてみたら、まさに「客を掴んだ」頃だったんです。

プロレスも芸人も、馬鹿じゃできない。客をつかまえる感覚がない奴に限って、自己満足度が高くなってしまう。『全身芸人』の中で、こまどり姉妹が「私たちは自分の歌に全く酔っていない」っておっしゃっていましたが、あれと同じです。

田崎こまどり姉妹の二人は、ステージの上から客がどんな反応をしているのか、どのような曲を喜んでいるのかをじっと観察しています。だから喜ばれるのだと。

こまどり姉妹(写真/関根虎洸)

二郎ウケていない奴ほど、自分のネタや試合を何回も観ちゃう。自己満足が顧客満足度を上回ってしまう。自分のやっていることに夢中になってしまう。

田崎さんの『全身芸人』を読むと、俺たちは先人の後を追いかけているんだ、と思いますね。そして、ヤバいと思うのは、あの本に出て来る先人たちのことをほとんど知らずに、テレビに出ている芸人が多いこと。

ただ、こうも思うことがあるんです。今のプロレスって、プロレスの好きな奴しか入ってこない。昔のプロレスって、プロレスは好きじゃないけど、儲かるからって入って来て、メイン(イベント)を張っちゃう長州さんや前田日明みたいな人もいる。それはぼくも認めるんです。プロレス好きですから、理解できる(笑)。

田崎話を聞いていると、二郎さんも「全身芸人」の系譜にいる芸人だとつくづく感じました。続篇を作るときは、ぜひ取材させてください。

二郎もちろん!

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