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当初「許されていた」鈴木杏樹の不倫 なぜ許されなくなった?

「週刊文春」2月13日号が報じた、女優の鈴木杏樹(50)と俳優・喜多村緑郎(51)の不倫。鈴木は2013年に夫と死別していたが、喜多村には2013年に結婚した元宝塚歌劇団宙組トップスター・貴城けい(45)という妻がいた。

【画像】鈴木杏樹は「生殖コスト」を無視?

当初は「鈴木杏樹は50代の大人同士の恋愛」「あの年齢でまだ恋ができるなんてうらやましい」という意見も聞こえていた。「週刊文春」1月30日号で報じられた俳優・東出昌大(32)と9歳下の女優・唐田えりか(22)との不倫と比べると、批判の声は驚くほど少なかった。しかし、2月6日に鈴木杏樹が発表した謝罪文によって世間の風向きが変わる。

当初「許されていた」鈴木杏樹の不倫 なぜ許されなくなった?
夫で駿河台日本大学病院勤務の外科医だった山形基夫さん(享年56)の通夜で、喪主をつとめた鈴木杏樹(2013年2月13日)©時事通信社

〈今年に入って、お相手から独り身になるつもりでいるというお話があり、お付き合いを意識するようになりました。

しかし、まだお別れが成立していない現状、今回の軽率な行動を真摯に反省し、今後皆様にご迷惑をお掛けすることのないよう慎みます〉

この謝罪コメントに対して、芸能界からも批判が相次いでいる。

「すべてを台無しにしてしまった」(山路徹「ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜」TBS系・2月7日放送)

「貴城さんが傷つく」(田中みな実「サンデー・ジャポン」TBS系・2月9日放送)

「私が妻だったらって考えると許せない」(西川史子「サンデー・ジャポン」TBS系・2月9日放送)

なぜ鈴木杏樹の不倫は当初「許され」、どうして「許されなくなった」のか。脳科学者・中野信子氏に聞いた。

謝罪文が招いた共同体の「サンクション(制裁行動)」

杏樹さんの不倫に対して、世間の反応はかなり穏やかでした。芸能人の不倫に対して過剰に責めたてる最近の風潮を考えるとかなりめずらしいケースです。しかし2月6日に発表された杏樹さんの謝罪文でその空気は一変しました。杏樹さんへのバッシングが急加速してしまったように見えます。その理由は、謝罪文が共同体の「サンクション(制裁行動)」のスイッチを入れてしまったからです。

「ずるをしている」人に制裁をくわえようとする感情

サンクションとは、たとえば税務署が脱税に厳しく目を光らせ、発覚した際には重い罰を与えるように、「ずるをしている」誰かに対して制裁をくわえ、共同体から追放しようとする行動です。共同体を維持するためにはとても重要な行動で、古来から人間の基本的な感情としてインプットされているものです。

どうしてサンクションが生まれるのか。それを考えるために、まずは共同体がどのようにして維持されているかについてお話ししましょう。

社会的生物である人間は、生きていくために共同体を作って暮らしてきました。ルールを決めて役割を分担し、それぞれがコストを負担して利益を生み出して、それを仲間で分け合って生活しています。たとえば国であれば税金を納める代わりに社会保障や、道路や水道といった整ったインフラが利用できるようになり、会社であれば労働の対価として給料が受け取れるわけです。

しかし、なかにはルールを破って、コストの負担をせずにリターンを得る「ただ乗り」しようとする人がいます。そういう人は社会学の用語で「フリーライダー」と呼ばれます。フリーライダーが増えすぎると、まじめにコストを支払うメンバーがどんどん損をする社会になってしまう。仲間のなかにルールを守っているふりをしながら隠れて得をしている人がいるなら、罰を与えて追放するサンクションを実行しなければなりません。

「生殖コスト」が非常に高い現代日本で東出の不倫は…

東出さんは、まさにこのフリーライダーの極みのような存在でした。東出さんの不倫があそこまでバッシングを受けたのは、子供を産んで育てるという「生殖コスト」が非常に高い現代日本で、「イクメン」のイメージありきで仕事をしていたからです。

そもそも女性にとって出産は命を危険にさらすものです。そのうえ経済合理性だけを考慮すれば、いまの日本で子供を産んで育てることには相当な覚悟が必要です。出産のために仕事を辞めたり、育児休業や時短勤務で仕事をセーブするなど、なんらかの犠牲を払わなければならない人がほとんどでしょう。場合によってはベビーシッター代も必要になりますし、子供が大きくなってからも学費がかかります。「いじめ」に遭わないかどうか、子供が危険な目に遭わないかかどうかなど、精神的な負担を感じる親御さんもいるでしょう。

多くの人は、そうした非常に高い「生殖コスト」を支払って結婚・出産をしている。子供がいない夫婦であっても、家庭を維持するための面倒ごとを背負って、子供がいる家庭よりも多くの税金を払うというコストを引き受けています。恋愛やセックスを楽しむには、それ相応のコストを支払う必要があるのです。

東出は性的快楽や恋愛のスリルに溺れるフリーライダーだった

しかし東出さんは「イクメン」としてあたかも対価を支払っていますよという顔をしながら、実際には家事育児を杏さんにまかせ、9歳年下の当時未成年だった唐田さんと不倫をしていたのでした。重い家事・育児コストを払っている女性たちにしてみれば、東出さんはいわば同志だと信じていたのに、裏では杏さんの努力やお子さんの思いを犠牲にして性的快楽や恋愛のスリルに溺れるフリーライダーだったわけです。

こんな行動が許されてしまっては信頼によって成立しているものが崩壊してしまいかねない、この人を許さないことが正義の行動だ、と多くの人の心に火がついてしまった。それで東出さんへの厳しいサンクションが巻き起こったのです。

夫と死別した杏樹の不倫は許される?

では、杏樹さんの場合はどうでしょう。

杏樹さんも不倫をした時点でフリーライダーだとみなされて不思議はありません。しかし彼女の場合、2013年にご主人と死別されています。この時点で社会的にはつらく厳しい立場にいる。スタート地点がマイナスにある状態です。だから厳しいサンクションを避けられたのです。

奧様が高次脳機能障害を患っていたとされる小室哲哉さんの不倫疑惑が、当初バッシングを受けづらかったのもこれと同じ理由でしょう。不倫をして得をしていても、それを相殺できるような悪条件がある場合はサンクションの対象になりづらいのです。むしろ人々は「恵まれない人が少しでも恩恵を得るのを許してあげた」といい気分になることもあります。

サンクションのスイッチが入るかどうかは、不倫による利得の大きさが、共同体の中に明文化されない形で存在する「許容範囲」を超えるかどうかにかかってきます。杏樹さんの場合は、当初このラインを超えていないように見えました。ですが、あの謝罪コメントによって、得ようとしていた利得の大きさが「見える化」されてしまったのです。

「未亡人のささやかな幸せ」ではなく「略奪不倫」だった

コメントにあった〈今年に入って、お相手から独り身になるつもりでいるというお話があり、お付き合いを意識するようになりました〉という部分に多くの人が反応していましたが、この一文で杏樹さんが貴城さんを犠牲にして、喜多村さんという伴侶を得ようとしていたことがわかってしまいました。「悲しい未亡人のささやかな幸せ」だと思っていたのに、実際のところは「略奪不倫」だった。その帰結として、杏樹さんはフリーライダーとして認識され、いままさに集団的サンクションが起こりつつある局面であるといえます。

不倫報道に対するサンクションは、不倫をしている人がどれほどの利益を得ているように見えたかがカギとなります。また、そもそも協力行動を取っていない、協力構造の中にいる人ではないと認識されていれば、その人はフリーライダーではあり得ませんから、この場合もサンクションを受ける対象にはなりません。いわゆる「突き抜けている人」と認識されている北野武さん、そもそも不倫をしそうな雰囲気を漂わせ、妖しい魅力で視聴者を虜にする斉藤由貴さんなどに対しては、世間は比較的寛容だったのでないでしょうか。

杏樹さんがもし謝罪文を出すのであれば、自分の利得の少なさと貴城さんが払う犠牲への配慮はより重くお考えになったほうが良かったのではないかな、と思います。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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