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滝川英治が「俳優引退」を決意 脊髄損傷から2年半、思い描く夢

滝川英治が「俳優引退」を決意 脊髄損傷から2年半、思い描く夢

ドラマ撮影中に自転車から落ち、脊髄損傷を負った俳優・滝川英治さん。懸命にリハビリに励み、パラスポーツ番組のMCで仕事復帰を果たした。大切な家族との別れなど、多くの困難を乗り越えてきた彼が今、新たに目指す未来へ、大きな決断をして一歩ずつ進み始めた。

【写真】マッチョ時代と、事故後たくさんの管に繋がれる滝川英治

「実は、俳優を引退しようと思っています」

落ち着いた声が、部屋に響いた─。

俳優・滝川英治さん(40)は、自宅の医療用ベッドの上で、静かに微笑んでいた。

「そろそろ潮時かな……と。もう1度、最高の舞台に立ち、そして幕を引きたいと思っています」

その表情は明るく、悲愴さは感じられない。しかし、この結論に達するまでに、滝川さんは多くの苦難を何度も乗り越えてきている。

大きく人生の方向を変えた出来事

2年前の夏まで、滝川さんはドラマや映画、舞台で活躍する俳優だった。身長186cm、体重79kgという恵まれた体格と抜群の運動神経で、ハードなアクションもこなす。端正なルックスと明るいキャラクターで、特に、漫画やアニメを原作とする「2・5次元舞台」では確固たるポジションを築いた。ミュージカル『テニスの王子様』、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』、舞台『弱虫ペダル』など、数々の人気作品で存在感を放っていた。

順風満帆な俳優人生を歩いていたさなかの2017年9月、突然の悲劇が滝川さんを襲う。連続ドラマの撮影中、ロードバイクでの転倒事故によって、脊髄損傷という大ケガを負ってしまったのだ。この日から、滝川さんの人生は、大きく方向を変えることとなった。

◆◆◆

大阪に生まれ、スポーツ万能の野球少年として育った滝川さんは、大学生のときに街で芸能事務所のスカウトを受けて芸能界入りする。それまで華やかな世界にまったく興味がなく、アルバイト感覚で始めた芸能の仕事だった。が、ほどなくして「リポビタンD」のCM出演をつかみとるなど、俳優としての道は順調に拓けていった。そして、舞台作品やテレビドラマなどへの出演を通して、どっぷりとその魅力に浸かっていく。

「舞台上での自分のパフォーマンスによって、見ている人が声を上げて笑ったり、堪えきれずに泣いたりする。他人の感情を揺さぶり、感動を呼び起こせる。こんな職業は、俳優のほかにないですよね。まるで魔法みたいで」

演じるおもしろさに目覚めた滝川さんにとって、転機となった作品が、2・5次元舞台の先駆けといえるミュージカル『テニスの王子様』シリーズだ。主人公チームの部長・手塚国光役を務め、同シリーズの初期人気を支えるひとりとなった。

制作元であるネルケプランニングの荒木田由紀さんは、オーディションのときから滝川さんの立ち居振る舞いに注目していた。

「当時は歌やダンスが飛びぬけて上手なわけではありませんでしたが、堂々として存在感があったことを覚えています。それは舞台に立つ役者として、とても大事な資質だと思います。そしてスタッフもキャストも手探りで舞台を作り上げる中、『部長として俺が引っ張る』という意識が芽生えていく姿を目の当たりにしました。ダンスも得意な人から教わりながら、ひとつひとつ上達していく印象でした。滝川さんは、やるべきことに対して、まじめにきっちり取り組んでいきますね」

仕事現場での滝川さんのプロ意識やストイックさについては、彼を知るさまざまな人が異口同音に語っている。

舞台『弱虫ペダル』シリーズなどで共演した俳優・鈴木拡樹さん(34)は、稽古中も本番中も常に「筋トレ」に励む姿が忘れられないという。

「体力的にハードな舞台だったのに、稽古中や出演シーン以外は、ずっと筋トレをしているんです。それこそ演出家からダメ出しされている瞬間でさえ、無意識のうちに身体を動かしていることも(笑)。舞台のときは、出番の前に衣裳や髪型のチェックを自分で行うことがありますが、英治さんはそれらに加えて、ボディチェックも欠かしませんでした」

ロードレースを舞台とした作品で、ボディラインのわかる衣裳であるがゆえに、観客に最上の姿を見せたいという気持ちの表れだろう。

「人に見られるという意識がしっかりあるので、とても舞台向きだと思います」と前出の荒木田さんも言う。

「30の壁」と焦り

端正な顔立ちや堂々とした体躯から、無口で威厳のあるキャプテンや頼れるリーダー的な役柄を演じることも多かったが、自身は生まれ育った大阪のエッセンスを色濃く持ち、「人を楽しませたい、喜ばせたい」という気持ちがとてつもなく強い。その気持ちは、子どものころから一貫して変わっていない。それをかなえられるいちばんの道が、「俳優」だったのだ。まさに天職といえるだろう。

その姿勢は、プライベートでも同じ。20年近い付き合いになる、友人の難波一信さん(39)は、その素顔をこう明かしてくれた。

「英治さんはとにかく周囲を笑わせることが大好きで、ひたすらおもしろい話をして場を盛り上げてくれる。だから、仲間の集まりでは圧倒的な人気者でしたね」

お金と体力に余裕のある20代のころは、なじみの店で何日もぶっ続けで飲み明かしたこともあったという。サービス精神の旺盛さは、いついかなるときも揺るがなかった。

周囲からは自己を貫き、充実したプライベートとともに、着実に俳優としての道を邁進しているように映った滝川さん。しかし、内心では大きな鬱屈を抱えていた。

そのモヤモヤした気持ちは、「30の壁」から続いていたという。

多くの俳優にとって、30歳近くになると訪れる、それまでとの状況の変化。滝川さんも長年続いたCM契約が終了したり、出演依頼が減ったりし、徐々に焦りを感じるようになっていく。これまでの俳優業で得た蓄えを切り崩しながら、事務所を移籍し、スポーツトレーナーの資格を取るなど、必死に模索し続ける時期が続く。俳優を辞める人や、結婚していく友人を見ていて、俳優という安定しない職業を続けていく未来が見えなくなっていた。

だがこのころ、友人の難波さんは、陰で努力する姿を見ていた。

「あれだけ飲みに出ていた滝川さんが、仕事での身体作りのために、潔くお酒を飲まなくなりました。ある意味がんこで、弱みを見せたくないという美学がある。仕事の悩みを口にしないし、黙々と努力して解決しようとするんです」

突然起きた、不慮の事故

たゆまぬ努力や、新たに所属した事務所の尽力のおかげで、数年かけて再び仕事は上向き始めた。2017年は主演舞台から幕を開け、出演予定の作品が次々と並んでいた。「30の壁」を越えた─本人も周囲もそうとらえていた矢先、突然の事故が起こったのだった。

2017年9月15日、ドラマ『弱虫ペダルSeason2』(BSスカパー!)の撮影に臨んだ滝川さんは、山中の下り坂をロードバイクで走っている最中、転倒して道路にたたきつけられてしまう。直後、駆け寄ったスタッフに、とっさに、

「僕の足はありますか?」

と尋ねずにいられないほど、一瞬にして全身の感覚が失われていた。

すぐにドクターヘリで病院に緊急搬送され、手術により一命をとりとめたものの身体に受けたダメージは大きく、「脊髄損傷」の診断が下った。

首から下はほぼ動かせず、感覚のない状態。体幹がきかないため、姿勢を保つことも難しい。1度、体勢が崩れてしまえば、介助なしには立て直せない。しびれや痛み、呼吸しづらさ、体温調節の難しさ、自律神経の乱れなど、現在も続くさまざまな身体症状を抱えることとなった。

「どうして……」

困難な呼吸の中で、絶望の淵に沈みそうになった夜も、何度もあった。一時期は、のどを切開して人工呼吸器をつけることで、俳優の商売道具である「声」を失った。

アクションもこなせる人気俳優から、車いすでの制約の多い生活へ─。あまりに過酷な境遇の変化も、しかし、滝川さんから不屈の闘志と生来の明るさを完全に奪うことはなかった。

容体が落ち着いて後、滝川さんは専門施設でリハビリを開始する。残された身体機能を維持するために、毎日何時間も行われるさまざまな訓練。中には、ときにうめき声を上げずにいられないほどの苦痛を伴うものもある。

だが、滝川さんはその姿を余すところなく記録してもらうべく、自ら希望して密着ドキュメンタリーの撮影を依頼した。後に『滝川英治ドキュメンタリー「それでも、前へ」』(BSスカパー!)と題して無料放送されたそれは、心配していたファンはもちろん、さまざまな障害のある人々にも大きな勇気と感動を与えることとなる。

友人の難波さんは、前向きにリハビリに励む滝川さんの姿に驚かされたと語る。

「どんなメンタルをしていたらあのように気丈にふるまえるのか不思議なほど、弱音を耳にしたことはありません。もしも僕が彼の立場だったら、とても同じようにはできないでしょうね……」

もどかしい不自由な生活

俳優の鈴木さんは、見舞いに訪れた病室での滝川さんの姿を、以前と変わっていないと感じたという。

「さまざまな葛藤の中で苦しみ、きっと変わったことや悩んだこともあっただろうと思うんです。でも、滝川さんは生粋のエンターテイナーで、他人に対する心遣いやもてなしたいという気持ちがとても強い人。だから、あえて僕には『変わらないように見せてくれた』んじゃないかと思います」

前述の荒木田さんも、事故後すぐに見舞いに行ったときは、悟ったような落ち着きを見せていた滝川さんが、しばらく後に見舞ったときは昔のように戻ったと感じたという。滝川さんのリクエストで差し入れた舞台のDVDを荒木田さんそっちのけで、その場で見ようとする姿に、「一見ワガママを言っているふうで、実は『俺ってこういうやつだったでしょ?』というサービス精神を発揮しているのでは」と感じたそうだ。

当時、滝川さんの病室に見舞いに訪れる友人や知人は、「深刻な表情でやってきて、面会した後は、晴ればれとした笑顔に変わって帰っていく」のが通例だったと所属事務所の片山依利社長は言う。エンターテイメント精神は、入院しているときでさえ遺憾なく発揮された。その変わらぬ明るい表情に、訪れた人の誰もが心に何かしらの刺激を受けたのだろう。

しかし笑顔の裏で、本人は突然の環境の変化に苦しんでいた。「プライドが高く、他人に頼るのが苦手な性格」と自覚する滝川さんにとって、顔にかゆみを覚えても自分で掻くことができず、いちいちセンサーに空気を吹きかけてナースを呼ばなければいけないような状況は、もどかしく苦しいものだった。「すみません」が口癖になり、考えも後ろ向きになってしまう。

自分で自分を追い込みかけたとき、持ち前の強さが顔を出した。謝りそうになったら「ありがとう」と言い換え、感謝の気持ちを伝えることにしたのだ。すると、外出先でたまたま居合わせた人が水筒を取って飲ませてくれたり、車道の車が車いすが渡り切るまで待っていてくれたりとたくさんの親切に出会うたび、素直に感謝できるようになったという。

「他人に頼るまいと必死だった以前の自分なら、気づけなかった温かさがある。なんでも当たり前にできる生活を失ったからこそ、気づくことの連続です」

今も滝川さんの部屋には、口にくわえた筆で紙に書いた「感謝」という2文字が大事に飾られている。

2017年12月8日、思いどおりに身体が動かせない困難な状況の中で、滝川さんはあえてブログで、自らの今の思いを明かす道を選んだ。家族など近しい周囲の人々の中には、滝川さんの心身にかかる負担を心配して反対する声も多かった。それでも滝川さんは、「事故や障害による現実を自らつまびらかにすることで、応援してくれる人々と本当に手を取り合って前へ進むことができる」と確信していた。

事故直後の日々の思いがつづられたそれらの記事は、滝川さんにとって外部とつながる手段であり、画面の向こうのたくさんの人たちに思いを伝え、思いを受け取る場所となっていく。

どん底を支えてくれた恋人

そして、事故から2年あまりが経過した2019年12月に、初めてのエッセイ『歩―僕の足はありますか?』(小社刊)を上梓。ブログで発表したことも含め、生い立ちから芸能生活、衝撃的な事故、家族との軋轢、葛藤、リハビリなど事故後の生活について、率直に語っている。この著書は、障害を受け容れ、前を向く著者の姿勢が、読んだ人を勇気づけると各方面で大きな話題となった。

しかし、その中では触れていないことがあった。忘れられない、あるひとりの女性についてである。

滝川さんには、かつて結婚を意識した恋人がいた。多忙で不規則になりがちな生活をサポートし、疲れを癒してくれる存在だったという。

常々、俳優という職業の不安定さを感じていた滝川さんは、それまで結婚願望をまったく抱いていなかった。だが、家庭的な恋人との心休まる日々を経て、ドラマの撮影が終わったら両親へ紹介しようと決意をする。事故が起きたのは、その矢先、クランクアップ目前のことだった。

大ケガを負って身動きもままならない中、家族や事務所の関係者に加えて恋人が毎日のように見舞いに訪れ、献身的に世話をしてくれた。ともすれば絶望しそうな状況で、恋人の存在がどれほどの癒しになったかは、想像に難くない。が、時がたつにつれ、滝川さんの思いに変化が生じていく。

「事故からしばらく経過して、ようやく自分の身体の現実を自覚できるようになってきました。それまでは、ひたすら『彼女と一緒に幸せになりたい』と思っていた。でも、だんだんと『彼女に幸せになってほしい』と願うようになっていたんです」

年若い彼女にはまだ経験していないことがたくさんある。これから、もっと広い世界に飛び出し、たくさんの経験をしてほしいと思い始めていた。恋人の自由を奪っているかのような自己嫌悪にとらわれ、徐々に衝突することがふえ、会話も減っていったという。

リハビリを行う病院に入院中、障害のある人たちと「一緒に歩こう」「頑張ろう」と励まし合うことが、滝川さんが前を向く力になった。同時に、「誰かと一緒に歩く」ことがどれだけ大変でつらく、切ないことかも知ったという。だからこそ、恋人と一緒に歩く道は選べなかった。誰よりも大切だからこそ、ともに歩く未来をあきらめざるをえなかった。こうして、事故の後初めての春を迎えるころ、恋人との交際にピリオドを打ったのだった。

このころ、滝川さんは友人の難波さんに「俺、こんな(状態)だからさ……」と言い、しばらく落ち込んでいたという。

「本を執筆中は、〈俳優・滝川英治〉として、プライベートを明かすことに迷いがありました。でも、今、俳優としてひと区切りをつけようと思ったとき、直接は言えないけれど、もう1度彼女に、心から『ありがとう』と伝えたいと思ったんです」

晴ればれとした表情で、滝川さんは恋人への感謝の思いを語った。

最大の理解者である父と、愛犬の死

大事な人との別れを乗り越え、懸命にリハビリを続けて前へ進もうともがく日々の中、またしても滝川さんを試練が襲う。

リハビリ病院を退院して、ようやくひとり暮らしを始めて環境を整えているさなか、実父が心筋梗塞により急逝したのだ。

事故後も遠く離れた実家から見舞いに来てくれ、何かを決断しようとするたびに「英治のやりたいようにやれ」と言ってくれていた父。ひとり暮らしを決めたときも、周囲の大反対の中で賛成してくれたうえで「2度と大阪に戻ってくるな」とあえて告げてきた、大きな存在だった。

最大の理解者を失ったことは滝川さんに計り知れない衝撃を与え、それは血尿や過呼吸となって身体に現れた。折りしも、『滝川英治ドキュメンタリー「それでも、前へ」』が放送される前日のことだった。予定どおり放送するか延期するか、判断を求められた中で、「それでも、前へ」というタイトルが、父の言葉に重なって見えた。

「何があっても進め、英治。

這ってでも進め、英治。

振り返らず進め、英治」

それは、滝川さんにとって、父からの最後のメッセージとして映った。進むべき道を示している……そう受け取った滝川さんは、予定どおりの放送を要望した。

悲しい別れは、もうひとつあった。目に入れても痛くないほど可愛がっていた愛犬のパールが亡くなったのだ。東京でずっとともに暮らし、事故後は大阪の実家から見舞いに連れてきてもらうのを、なにより楽しみにしてきた。それだけに、老いた母に世話をまかせ、最期を看取ってもらう状況になったことを悔やんだ。常に前を向こうとしている滝川さんだが、「なぜ、こんな身体になってしまったのだろう」と自分を責めた。

事故後、休業を余儀なくされていた滝川さんの復帰第1弾の仕事となったのが、2019年1月にスタートした『PARASPORTSNEWSアスリートプライド』(BSスカパー!)のMCだ。経験豊富なアナウンサーとともに一線で活躍するパラアスリートをゲストに迎え、パラスポーツの情報と魅力を伝える、エンターテイメントニュース番組である。

MC出演のオファーがあったのは、くしくも父親が逝去した翌日。「この仕事は天国の父からの贈り物だ」と感じて、所属事務所の社長と泣いたという。出演を受諾し、パラスポーツをイチから勉強し始めた。

『アスリートプライド』のプロデューサーの笠井昌章さんは、パラスポーツの魅力を伝えられるMCとして、滝川さんに白羽の矢を立てた。過去に滝川さんの出演したテレビ番組でそのスポーツマンぶりを知っており、ドキュメンタリーでの前向きな姿勢を目の当たりにして、「うってつけの人材」と感じたからだ。実際に収録が始まり、その印象は確信へと変わった。

「バラエティー番組の出演経験もあり、積極的に前へ出る意欲を感じます。予想以上にサービス精神が旺盛で、ときにはしゃぎすぎる場面もありますね(笑)。パラスポーツやパラアスリートについて明るく楽しく伝えることが大事だと考えているので、滝川さんのポジションが重要ですし、これからものびのびと発言してもらいたい」

番組は好評で、当初の30分から45分に時間を拡大して放送されることになった。「今後は滝川さんのコーナーも作りたいし、体調と相談しつつスタジオを飛び出してスポーツ現場での取材もしてほしい」と、笠井さんはますます期待を寄せる。

〈人間・滝川〉の生きざま

とはいえ、ともすれば「無理しがちな性格」であることは、滝川さん自身も制作スタッフも共通した認識だ。収録後、自分の想定した結果を出せなかったと悔やんだ滝川さんは、40度の高熱にうなされたこともあった。また、スタジオから伝えるだけでなく、実際にパラスポーツを幅広く体験したうえで伝えたい気持ちはあるものの、身体の状態を考慮するとその種目は限られたものにならざるをえない。「せめて上半身が動けば、たくさんのパラスポーツを体験できるんだけどな……」と滝川さんももどかしさを訴える。「でも、それを言ってもしかたないな」と笑顔で意識を切り替えた。

番組スタートから1年あまりが経過し、求める・求められることがそれぞれ大きくなっているのは、たがいの信頼関係が順調に構築されているからだろう。それを物語るエピソードを、笠井さんは語ってくれた。最近の収録で、突然、滝川さんの上体がふらつき、姿勢が崩れたことがあった。初期のころなら編集でカットするところだが、そのときの滝川さんのトーク内容がよく、ぜひ放送したいと思えるものだった。

「それも〈人間・滝川〉の生きざまを伝えるもの。そこを編集する必要はないから、そのまま使わせてほしいと話しました。本人もすぐ『いいですよ』と答えてくれました。必要な場面だと滝川さんも感じたから、そういう判断になったんだと思います」

特別視するわけでなく、ごく自然にプロとしての仕事をまっとうする。笠井さんは、そんな滝川さんの姿勢を、「人間の生き方のプライドを持っている」と評する。

先述の鈴木さんも、自身のイベントのMCを滝川さんに依頼した経験から、番組を楽しみにしているという。

「イベントで場を仕切って、話す姿に、英治さんの〈もてなしの心〉を強く感じました。見ている人を明るく、楽しい気持ちにさせてくれるんです。MCは、そんな滝川さんの最大の魅力を存分に生かせるフィールドではないでしょうか」

東京2020オリンピック/パラリンピックが数か月後に迫り、今後ますますパラスポーツへの注目は高まることだろう。

「障害のある人もそうでない人も、たがいに尊重して、ともに歩める共生社会を実現したい。そのきっかけとして、パラリンピックに関わり、パラスポーツを盛り上げる仕事をしたい」という夢を持つ滝川さん。近いうちに、彼が活躍する姿を見ることができるかもしれない。

「俳優は魔法使いのような職業」だと感じている滝川さんが、それを手放す重大な決断を下したきっかけは、思いがけないことだった。

2020年1月11日に、東京都内の書店にて著書の『歩―僕の足はありますか?』のお渡し会が開催された。当日は、滝川さんと約2年ぶりに直接コミュニケーションをとれる機会とあって、昔からのファンを中心にたくさんの人々が来場した。

俳優引退、そして新しい道へ

引退を決めたのは、まさにこの日のことだ。「あの瞬間まで、一切その気はなかった」という滝川さんだったが、のべ200人近いファンと顔を合わせて言葉を交わしたことで、心の奥底で感じていたわだかまりを吹っ切ることができたのだという。

「事故以来、たくさんの方から『復帰をいつまでも待っています』と温かい言葉と思いをかけてもらいました。そのたびに僕も『いつか絶対に復帰します!』と答えていました。でも、内心モヤモヤした迷いがあったことも事実です」

リハビリを続けているとはいえ、自身の状況がこの先どうなるかがなかなか見えない中で、「いつか」とあいまいな覚悟で保留し続けることは、人気俳優という過去の栄光にすがりついているだけではないのか?それでは本当の意味で前に進むことはできないのではないか……。人知れず、ひそかに悩み続けていたという。

「お渡し会でファンのみなさんの熱い思いを直接受け取って、ああ潮時だな……、と素直に思えた。ここでひと区切りつけようと決心がついたんです」

周囲からは「あえて俳優を辞めると言わなくても、そのままほかの活動をしたらよいのでは」という声も多かったが、きっぱりと線を引く。

「『俳優』という受け皿があることで、ある意味、甘えてしまう自分がいる。だから1度その肩書を取りはずして、切羽詰まった状態でがむしゃらに何ができるのかを探りたいんです。大学時代から20年近く芝居一筋でやってきて、逆に言えば、それ以外の景色を見ていない。自分でこの先をどうするかを考え動かないと、これ以上の〈人間・滝川英治〉としての成長はないと思いました」

退路を断つのが、常に前を向きたい滝川さんらしい。

「ただ、あともう1回だけ『俳優・滝川英治』を待ってくださっていた方に見せたいという気持ちがあります。ファンのみなさんと約束しました。絶対に戻ると。ラストランとしてどんな形になるかはわかりませんが、元気な姿をお見せして感謝を伝えたい」

もちろん、この夢と未来をかなえるには、相当な覚悟が必要とされる。それでも「今はすがすがしい気持ち」と、さわやかな笑顔を見せた。

ほかにも、滝川さんはいくつもの夢や計画を思い描いている。前述の『アスリートプライド』でのMCは、現在もっとも大きなやりがいのひとつだ。仕事のない日は、リハビリの合間に口に絵筆やタッチペンをくわえて、大好きな動物とパラスポーツを組み合わせたイラストを描いている。入院中から考えていたという絵本を出版する構想も進めている。共生社会を実現させるための講演会やイベント、誰もが楽しめるようなフェスを開きたいという大きな夢もある。根底に共通しているのは、「人を楽しませ、幸せにしたい」という、何があっても変わらぬ信念だ。

「今は『生きている』という強い実感があります。もし事故が起こらずケガを負っていなければ、今でも人生の方向性が見定まらず、モヤモヤし続けていたんじゃないかな」

多くの人を魅了してきた、その穏やかな笑顔で、滝川さんはこの先の未来を見つめている。きっとそれは、希望に満ちた明日に違いない。

取材・文/麻宮しま女性実用誌編集部を経て、フリーライター・エディターとして活動。実用企画から企業インタビューまで幅広く手がける。『歩─僕の足はありますか?』では構成を担当した。

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