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差別描写を見られず「不適切にもほどがある」若い世代の脱落者多数か

差別描写を見られず「不適切にもほどがある」若い世代の脱落者多数か (全2枚)

「今クールのドラマで何がオススメですか?やっぱり『ふてほど』が面白いですよね!」

「『ふてほど』観てます?面白いですよね〜」

同業者のライターや友人知人から幾度もこの問いをされては、都度「面白いですよね。危うさはありますけど」と答えてきた。すると、ほとんどの人(主に40〜50代以上の男性だが、女性も少なからずいた)がポカンとするので、自分の気になる箇所を話すと、「そういう見方もあるんですね」と多くの人がテンションを下げて言う。KYが楽しさに水を差したといった顔をされるのは、少々しんどい。

これは、宮藤官九郎脚本×磯山晶プロデューサー×阿部サダヲ主演の『不適切にもほどがある!』(TBS系)、通称『ふてほど』の話だ。

舞台は1986年。中学校の体育教師で野球部顧問の小川市郎(阿部)は17歳の娘・純子(河合優実)と暮らすシングルファザーだが、ある日偶然乗ったバスがタイムマシンだったことから、2024年にタイムスリップしてしまう。そして、馴染みの喫茶店のトイレに貼られたキョンキョン(小泉今日子)のポスターを通じて昭和に戻れることを知り、令和と昭和を行き来するようになる。

第1話から、モヤモヤする表現が

クドカンならではのたっぷりのコネタや、ミステリー要素含めた考察が盛り上がる物語性などは、もちろん面白い。聖子ちゃんカットやスケバン、セーラーズ、部活顧問によるうさぎとびや「水飲んだらケツバット」、坊主の強要、ミヤコ蝶々のCM、電話機のレースのカバー、深夜のお色気番組、メタルテープなどなど、昭和の良くも悪くも懐かしい光景もたっぷり登場する。尾崎豊の『15の夜』が元ネタの『米寿の夜』や、ちあきなおみの『四つのお願い』が元ネタの『よっつのわがまま』など、遊び心たっぷりのミュージカルも昭和世代は楽しめるものになっている。

一方で、モヤモヤするところもある。

第1話では、市郎がミニスカートの女子高生を目にして口にする「痴漢してくださいって言ってるようなもんだぜ。触られても文句言えねえよ」。これは性被害を受けた人に対する典型的なセカンドレイプ発言だ。同僚教師が女性教師に言う「デカすぎパイ先生は、初体験はいつ?」などは、明確に不適切発言として注意喚起のお断りテロップがあったが、前述の発言にもテロップをつけてほしかった。

同じく第1話での、企業でのパワハラ騒動も引っかかった。磯村勇斗演じる、令和の会社員・秋津が後輩社員・加賀(木下晴香)に「期待してるから頑張ってね」と声をかけたことが彼女にとって精神的負担になり、「パワハラ」とされたことに、市郎が「頑張れって言われて会社休んじゃう部下が同情されてさ、頑張れって言った彼が攻められるって何か間違ってないかい?」と疑問を呈するのは良い。

しかし、加賀は女性であることで秋津から優しい言葉ばかりをかけられ、他の男性社員のように叱ってもらえないことが苦しかったのだと明かすオチに違和感が(そもそも上司が部下の性別によって対応を変えていることが問題なのでは)。

ミュージカルでは「それは言ってくれないとわからない」「話し合えて良かった」「話し合いましょう」と歌い上げているだけに、世代間の分断を生む意図は当然なく、対話の必要性を説いているのだろう。しかし、「ほらね、本当は叱ってあげたほうが良いんだよ」などと、反コンプラ勢を助長させるリスクがありそうだ。

「みんな自分の娘だと思えばいい」はセクハラの解決策なのか

第3話では、令和で市郎が恋に落ちた女性・渚(仲里依紗)の勤めるテレビ業界が舞台となり、セクハラについて、何が良くて何が悪いかわからない、ガイドラインが欲しいというくだりがあり、市郎がたどり着くのは「みんな自分の娘だと思えばいい」という結論だった。逆に家族だから許されるという思い込みやプライバシーの侵害など別の問題も発生するわけだが、その結論で本当に良いのか。

制作側も、それが「正解」だと思っているわけではなく、まだコンプラ意識の低い昭和世代の市郎が現時点で出せる結論の限界点として描いているのかもしれない。しかし、コンプラ意識の低い一部の視聴者は、「これだけ守れば大丈夫」と勘違いしてしまわないだろうか。実際、自分の身近なレベルでも、「『みんな自分の娘だと思えばいい。娘に言わないことは言わない』っていうのはすごく納得。わかりやすい」という声が、主に40〜50代の男性からあがっていた(もちろん、その年代の男性でも意識が高い人はいる)。

それでも単純な対立構造や勝ち負け、分断などを描かないクドカンが、加えて『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)や『木更津キャッツアイ』(2002年)をはじめ、『タイガー&ドラゴン』(2005年)、『ごめんね青春!』(2014年)、『俺の家の話』(2021年)など、さらに近々では『離婚しようよ』(2023年)に至るまで信頼感抜群の磯山Pとのタッグが、まさか「昭和は良かった、令和は息苦しい」なんて反コンプラ勢の溜飲を下げるための単純な構図を描くわけがないと確信していた。

ところが、毎回ちょっとずつ引っかかっていた違和感が、第4話でさらに大きくなる。

差別や人権に対する意識の低さが露呈した第4話

不適切発言を連発する市郎の自由さが目に留まり、市郎が局のカウンセラーとなったこと自体もモヤッとくるところがあったが、さらにこの回では、とあるドラマのベッドシーンでインティマシー・コーディネーター(以下、IC)のケイティ池田(トリンドル玲奈)が登場する。

【インティマシー・コーディネーターとは】

映画やドラマの制作現場における性的な描写や激しい露出を伴う場面で、俳優の身体的・精神的安全を守りながら、監督のビジョンを最大限実現できるよう調整する専門の職業。

「上は鎖骨まで、下はくるぶしまで(しか見せるな)」というマネージャーの極端な要望を遵守するケイティに市郎は“体当たり演技”してこそ女優だとヒートアップしていくが、そこでケイティが俳優の好きにさせてみたいと進言。なんとなくいい話のようになっているが、はたしてそうか。そもそもICは、撮影前に俳優の要望と監督の要望を細かく調整する。同シーンでの描写はICという職業に対する誤解を生みかねない。

また、ICは『エルピスー希望、あるいは災いー』(カンテレ制作・フジテレビ/2022年)において、地上波のプライムタイム連続ドラマで初めて取り入れられたばかり。ICを雑に描き、いじるのは、日本社会や日本のテレビ業界の現状に照らし合わせると、あまりに時期尚早な気がする。

一方、昭和では市郎が教鞭をとる中学校で井上(のちにタイムマシンの開発者となる市郎の教え子の少年)とキヨシ(井上の息子で、令和から昭和にタイプスリップしている少年)が互いの素性を知らずに仲良くなり、ある時、キヨシは井上に告白される。そのことをキヨシが自分と同じく令和からタイムスリップしている母・サカエに話すと、彼女は大きく動揺する。サカエの元夫である井上と息子のキヨシが時を超えてキスしようとしたと言うのだから、タイムパラドックスの問題もあり慌てるのも無理はない。しかし、看過できないのは、サカエが電話で中学生の井上に対してヒステリックに言い放った、次のセリフだ。

『風と木の詩』(日本におけるBL漫画の元祖)に登場するジルベールの影響で「俺は男しか愛せない」と言う中学生のイノウエに対し、「(モテない男に限って)ホモソーシャルとホモセクシャルを混同して、同性愛に救いを求めるの(中略)女にモテなくて男に走ってるの」。

ここで、「クドカンだから大丈夫」「クドカン×磯山Pだから、あえてのはずだ」と信じ続けてきたモノが、揺らいできてしまった。これがフェミニストで、社会学者の言葉とは……。いくら学者であっても、自分事となると理性を失い、感情むき出しになってしまう人間の愚かさでも描こうというのか。意図はわからない。しかし、これまで本作に違和感が全然なかった人すらも、このセリフには引っかかった人が多いようだ。

「なぜダメなのか」が一切描かれていない

『ふてほど』では、様々な差別やハラスメントが登場するが、それがなぜダメなのか、なぜそれが問われるようになったのかという理由や道筋が一切描かれていない。その上、昭和世代の市郎が令和の人間たちに気づきを与えるというオチになりがちだ。

昔は良かったものが、今突然ダメになったわけじゃない。昔は嫌な思いをしても言えない、声をあげられない、つらくとも笑ってその場に合わせていた人が、嫌だと言っていいのだと気づいて、ようやく声をあげられるようになってきた。そして、その声を理解する人、理解したいと思う人が増えただけだ。

おそらく作り手には、コンプライアンスのせいで何が良いかわからなくなってしまい、理由も考えずに何でもダメとするテレビ業界に警鐘を鳴らす意図があるのだろう。だが、一部の層にはおそらくあまり伝わっておらず、「面白過ぎ」「笑った」「やっぱり昭和最高」といった昭和礼賛の声がSNS上で散見される。

若い世代に脱落者が多い理由

これまで一歩一歩長い時間をかけて、ようやくここまできた差別やハラスメント、多様性への理解が、クドカンから「〇〇だけすればOK」とお墨付きをもらった気分になることで逆行してしまわないか、と考えるのは杞憂だろうか。

すべての立場の人に配慮した言動は難しい。かくいう自分(50歳)も令和のコンプライアンスにようやく体験入門した程度の自覚があるからこそ、おそらく間違えることが多いし、ずっと不安を感じつつ、考え続ける必要があると思っている。さまざまな人の思いに真摯に向き合い続けなければならないコンプライアンスと、斜にかまえて茶化すコネタ・サブカルは相性が悪い気がしてならない。

先日、ある媒体が主催するドラマ座談会に参加し、そこで、『ふてほど』は40〜50代以上が盛り上がっている一方、20〜30代の若い世代で脱落者が多いという話になった。昭和あるあるのコネタが理解できないからかと思ったが、話を聞いていくと、「差別やハラスメントの描写を見ていられない」という理由が多かった。

若い世代は古い価値観の人たちが年齢を重ねてようやく恐る恐る食べはじめた人権意識というアダムとイブの林檎を幼少期から口にしていて、その経験値の違いがこのドラマへの反応の違いなのかもしれない。

差別描写を見られず「不適切にもほどがある」若い世代の脱落者多数か /img/cmn/btn_share_x.svg /img/cmn/btn_share_fb.svg リンクをコピーする みんなの感想は? 外部サイト 「濡れ場で女優を守る仕事」ではない!ドラマ『エルピス』でインティマシー・コーディネーターが果たした重要な役割 『こっち向いてよ向井くん』は男性こそ見るべき“男らしさ問題棚卸しドラマ”だった バカリズムはなぜ「女性の友情」をフラットに描けるのか?『ブラッシュアップライフ』で明確になったその作家性

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