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法を超えた補償を行うーー東山紀之氏がそう宣言してから約半年。旧ジャニーズが着々と再始動を進める一方で、その陰には憤る人たちがいる。前代未聞の大型性被害補償の知られざる実態に迫る。

「東山社長の会見は、結局ウソだったんです」

新年度を迎え、かつてのジャニーズ事務所が再始動しようとしている。

４月からの民放新ドラマにはSMILE-UP.社（以下、SMILE社）のタレントが競うように出演し、４月10日には東京ドームで「SnowMan」など人気グループが出演するイベントも予定されている。

しかし、その陰で肝心の問題が解決していない。故ジャニー喜多川氏（享年87）による性加害の補償だ。

２月29日、SMILE社は公式サイトで次の発表を行った。

〈弊社への在籍および被害のいずれの事実も確認できないとの結論に至った方々に対しましては、弊社から補償を行わない旨の通知を開始しており、本日までに43名の方に連絡を行いました〉

この「43名に補償せず」のニュースは大きく報じられ、「騒ぎに便乗する奴がいる」という指摘や、SMILE社側に同情的な声が上がった。

しかし今回、「補償せず」と通知された人たちから直接話を聞くことができた。そこで語られたのは痛切な叫びだった。

「東山社長の会見は、結局ウソだったんです」

そう憤るＡさん（60代）は、中学生の時にジャニー氏から性被害を受けたという。それから50年以上の月日が過ぎた'23年９月、SMILE社の東山紀之社長が会見で「法を超えた補償を行う」と述べるのを聞いて、やっと被害が認められる瞬間が来たと感じ、被害を申告。しかし、最終的にSMILE社側から送られてきたのは、無味乾燥な一通のメールだけだった。

面談で受けた「衝撃の質問」

〈ご申告内容について、SMILE−UP.社が有する関係資料等と突き合わせながら可能な限りの検証を行いましたが、同社の業務に関連して故ジャニー喜多川による性加害を受けた事実を確認することができませんでした。

そのため、大変残念ながら、SMILE−UP.社の補償業務においては、これ以上の対応は不可能との判断に至りました〉

Ａさんが嘆く。

「なぜ私の話を信用してもらえないのか、通知には理由が書かれていないのです。面談であんなに詳しく説明したのに……」

ＡさんがSMILE社の面談に出席したのは２月上旬。場所は弁護士のほとんどが元検事という都内の法律事務所だった。担当は20〜30代の若い弁護士３人で、被害者をケアするカウンセラーなどはいなかった。

弁護士は開口一番こう尋ねたという。

「性被害を受けた時、あなたは射精しましたか」

まるで責められているよう

突然の質問にＡさんは驚いた。

「まるで私が射精したことを責められているように感じました」

さらに、弁護士から「合宿所の間取りを紙に書いて」「食堂はどこにあった？」と矢継ぎ早に聞かれ、「引っかけ」と思える質問もされたという。

「『合宿所の居間のテーブルはどこにありましたか？』と聞かれたのですが、そもそもテーブルはなかったはずです。『ここにありました』と答えた人を嘘つきと認定する質問だったのかもしれない」

警察の取り調べのようだと感じたが、Ａさんは冷静に詳細を説明した。

地方のイベントでジャニー氏に声を掛けられてジャニーズの合宿所に入ったＡさんは、そこで信じがたい光景を目にした。夜中、ジャニー氏が少年たちの布団に入ってもぞもぞと動き、性行為をしていたのだ。その相手には後にスターになった少年もいたという。

つづく後編記事『まるで犯罪者扱いではないか…！旧ジャニーズに「補償しない」と言われた男性の怒り』では、Aさんが「合宿所」で受けた被害の詳細と、「ニセオーディション」で性被害を受けたという別の男性の証言を紹介する。

取材・文／西脇亨輔（弁護士・元テレビ朝日法務部長）

にしわき・きょうすけ／'70年、千葉県生まれ。東大法学部在学中に司法試験に合格し、'95年、アナウンサーとしてテレビ朝日に入社。'07年に法務部へ異動し、'23年７月に法務部長に就任。同年11月にテレビ朝日を退社し、「西脇亨輔法律事務所」を開業

『週刊現代』4月6・13日合併号より

「部屋から逃げるとジャニー氏が鬼の形相」で…！旧ジャニーズに「補償しない」と言われた男性の怒り

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