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「松本人志側は非常に苦しく、厳しい戦いになる」...《性加害疑惑》の松本人志裁判、詳しい弁護士が「松本側の弱点」を解説

「松本人志側は非常に苦しく、厳しい戦いになる」...《性加害疑惑》の松本人志裁判、詳しい弁護士が「松本側の弱点」を解説 (全3枚)

飲み会の席で出席した女性に性加害をしたとされる報道に揺れる「ダウンタウン」の松本人志。事実無根だと訴える松本は記事を報じた「週刊文春」に対し、損害賠償を求める裁判を起こした。3月28日、東京地裁で第一回口頭弁論が開かれたが――。初回から平行線をたどる松本側と週刊文春側。

今後の裁判の行方について、前半記事『「そんなアホな!」「性暴力被害者の住所も氏名も明かしてくれ、なんて言った人は初めてです」...性加害疑惑の松本人志裁判で弁護士も呆れた「驚きの言い分」』に引き続き、谷川聖治弁護士が解説する。

文春の主張を崩さない限り勝ち目はない

飲み会の席で、出席した女性に性加害をしたと「週刊文春」にて報じられた「ダウンタウン」の松本人志。名誉棄損されたと、同誌に対して損害賠償を請求する訴えを起こし、3月28日に東京地裁で第一回口頭弁論が行われた。

今後の裁判で双方はどのような主張を展開していくのだろうか。芸能人の訴訟や名誉棄損裁判に詳しい弁護士法人ALG&Associatesの谷川聖治弁護士が解説する。

「週刊文春の記事などを見ている限り、真実もしくは真実と信じるに値するといえるまでの資料、証拠は結構そろえているとみています。それからすると、文春は松本氏側からの主張を覆すだけの準備がかなりできているはずです。ですから松本氏側にはA子さん、B子さんの供述が嘘であるという、立証責任まではあるわけではないですが、文春が主張している真実もしくは真実と信用に足る証拠や資料を崩していかないと勝負にならない」

そのため松本側の主張は非常に苦しく、厳しい戦いになるという。

「まず、文春側に勝つためには崩さないといけない2つの壁があります。

第一に『スピードワゴンの小沢一敬らによる性接待のアテンドや、暴力的な性強要があった事実はない』ということを明らかにすること。

二つ目はA子さん、B子さんの供述が真実かどうかを明らかにすること。もし、真実でなければ『なぜ記事になるような発言が引き出されたのか』をかなり説得的に引き出さなければなりません」(谷川弁護士、以下「」も)

このとき、証言とともに注視されるのが証拠の存在だ。

「証拠を出す、ということは非常に難しいです。特に『ないことを証明する』のは、『悪魔の証明』と言われるほどです。また、仮に性行為自体があったのであれば、強要はしておらず「同意していた」とか「全く嫌がらなかった」などと言う話は内心の問題にもなってきます。確かに松本側からはニコニコとして嫌がってないように見えたとしても、内心は酷く傷つき、嫌悪感を持っていたことは十分あり得ることです。そうした主観的な部分を見分けるのは非常に難しい。そのため、現状では文春側のほうが有利になってくるのではないかと思われます」

だが、松本側にも逆転できる可能性がないわけはないという。

松本は5億円を手に入れられるのか

「もし行為はなく、『被害者がウソの供述をした』ということが証明されれば当然、松本氏側に有利になる。ただ、先ほども述べたとおり『ないことの証明』は非常に難しい。そのため、松本氏側ができることと言えば、A子さん、B子さん以外の人の経験やさまざまな証言を照らし合わせ、2人の発言の矛盾点を指摘しなければならない。

文春がそんな杜撰な裏取りはしていないと思いますが、例えば当該の飲み会があった日を調べたら2人は実は違うところにいたとか、証言と行動の辻褄が合わなかった、などと言うことです。そのため、接触した人物、行動、日付というのは文春の主張を崩すうえでは非常に重要なポイントなってくるのです」

もし仮に、そうした松本側の主張が認められ、勝訴となれば損害賠償の金額はいくらになるのか。弁護士費用5000万円を除いた5億円などという莫大な金額が松本の懐に入るのだろうか。

「現実は非常に難しい。まず、名誉棄損裁判には2つの種類があります。一つは『自分自身の名誉感情』、もう一つが『社会的名誉』です。自分の名誉を毀損され、傷ついた場合の慰謝料は非常に安く、高額な認定でも100万程度がせいぜいです。一方で、社会的名誉は、その人の社会的な名誉が低下されたことで数百万ほどになることは考えられます」

例えば芸能人や著名人で、性加害報道が出たことで「事実ではない」と主張していてもスポンサーがおり、仕事を切られてしまった状況があるとしよう。事実はなくとも報じられたことで仕事を失えば、それは明確に損害となる。

「法的にはどこまでを損害と認めるかについては『相当因果関係』といって、原因から結果が『社会通年上相当』とされる範囲内のものを損害と認定していくことになります。」

常識や見解に照らし合わせてみた時に、誤った報道によりどれほど収入が減ったのか、それによって損害の金額が決まってくる。

最高裁まで続く可能性も

「もし報じられたときにスポンサーが下りるなど実損害が生じてしまい、その後、供述に虚偽があったことが発覚するとします。芸能人の性的なスキャンダルの場合、報じられた後はその人のイメージやブランド価値は著しく下がり、社会的名誉も仕事も失う。そうなるとこれは社会通年上相当とされ、損害となる可能性も考えられます」

松本についてはそれが認められないこともあるという。なぜなら、松本は所属している吉本興業から契約を切られた形ではなく、自ら休業を決めたからだ。その場合、報酬が減った、という主張は通用しないとみられる。

「報道が出た瞬間、決まっていた仕事から干されたり、スポンサーが撤退した、というレベルのことがあれば、それは損害にあたるでしょう。ですが、松本氏は自分から休業を申し出た。そのため、松本氏の損害が文春の報道と相当因果関係があるかはかなり判断が難しい。たとえ、休業が文春の記事が出されたことに起因するものであっても、それ以上の請求をすることは難しくなる。

文春の記事が全部虚偽であり、自分から活動を休業せずとも5億5000万円の減収があったことを立証することができれば5億5000万円の支払いが認められる余地が無いわけではないが、基本的には難しいのではないか」

両者は現在のところ一歩も引かない構えだ。いったいどれくらい裁判は長引くのだろうか。

「少なくとも1年じゃ済まないですよね。2年、3年かかってもおかしくはない。もし途中で和解をしなかった場合、判決が出て、控訴してということも想定されますので、最高裁まで争う可能性もゼロではない」

そうなると実質、松本は「引退状態」になるだろう。

一日も早くお笑いがしたい

「唯一、和解があるとしたら何らかの事態で、A子さんB子さんの証言が明確に虚偽であることが認められた時でしょう。それ以外、和解の道はないと思います。松本氏側から、裁判を取り下げることも考えにくい。

もし、取り下げるとしたら、先ほどとは全く逆に『逃れられない証拠』が出てきたときでしょう。証言も証拠も、今後の裁判で提出されたものによって結果は左右されていきますが、現状をみたときに『これ』という明確なものを双方だすことは非常に難しい」

前出の谷川弁護士いわく、現在は「裁判のスタートラインにもついてない状況」、そのため裁判は少しずつしか進んでいかないと想定している。

「とはいえ、実は松本氏はかなりきつい現状だと思います。文春に対して、かなりクリティカルなものを出さないといけない。例えばA子さん、B子さんが当該の飲み会の後、周囲に飲み会を自慢していたり、喜んで誇張していたとし、そうした証言が出てくるとする。

そうなると『本当に性被害あったのか』と、証言の信憑性が揺らぐ。もし私が松本氏側の弁護士だったら、まずはそういった証言を集めていくでしょう。ただ、それらであっても、文春の主張を覆す、決定的なものにはならないですが、そうしたところからコツコツと崩し、性加害をした事実はない、と反証していかなければ松本氏に勝ち目はないでしょう。

なぜなら、文春側は、A子さん、B子さんの供述が仮に真実ではなかったとしても、真実と信じるに値する相当な調査を尽くしたことさえ立証すればいいのですから」

松本は裁判前にXでこう投稿している。

〈世間に真実が伝わり、一日も早く、お笑いがしたいです〉

真実はどこにあるのか。その答えが出るのは当分先のことになりそうだ。

・・・・・

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