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若いころから生理不順…慣れで身体のSOS気付かなかった女優の闘病記

若いころから生理不順…慣れで身体のSOS気付かなかった女優の闘病記

若いころから生理不順で、生理痛も重かったという西丸さん。その“慣れ”から、自分の身体がSOSを出していることに気がつかなかった。それでも、「なってしまったものは仕方がない。治る可能性を信じています」と治療への思いは前向きだ。

【写真】病気になっても全力で楽しむと、金髪ヘアをバリカンで丸刈りにする西丸さん

「子宮を取ったら生理もなくなるし、ラクになるかも」

「去年、人生で初めて受けた健康診断をきっかけに子宮体がんが見つかりました」

そう話すのは、俳優の西丸優子さん。検診を受けたのは、昨年9月のことだった。

「私はそれまで、重い病気にかかったこともなかったし、きっかけもなくて、健康診断を受けたことがなかったんですね。そのことを友達に話したところ、『絶対、受けたほうがいい!』と強くすすめられまして。“1回くらい受けてみようかなぁ”と気軽な気持ちで自治体の健康診断を受けました」

西丸さんは学生時代から生理不順で、不正出血が起こることもあったという。自身は、“いつものこと”程度の感覚だったが、婦人科検診の問診でそのことを伝えたところ、子宮頸がん検診に加えて子宮体がん検診も受けることをすすめられた。

「子宮頸がん検診は無料で、子宮体がん検診は数百円ほど費用がかかるのですが、いい機会だと思って、両方の検査を受けることにしました」

検査結果は“要精密検査”で、西丸さんは大学病院で検査を受けることに。

「内診を受けた時点では“子宮内膜異形増殖症”ではないかと、子宮がんの可能性は低いといわれていました。でも、その後の検査結果で子宮体がんの可能性が高いことがわかり、11月に1泊2日の入院をして子宮内膜全面掻爬をし、12月5日にステージ1Aの子宮体がんであることがわかりました」

西丸さんは、子宮体がんの疑いがあると言われた時点から、子宮を全摘出する覚悟を決めていたそうだ。

「この年齢になって、出産をする予定もなかったし、治療のためには仕方ないのかなって。周りはすごく心配してくれたのですが、私自身は“子宮を取ったら生理もなくなるし、ラクになるかも”くらいの気持ちで、わりとポジティブにとらえていましたね」

だが、子宮体がんが見つかり、子宮のほかに卵巣も全摘出をすすめられたときにはショックを受けたという。

「卵巣を取ってしまうと女性ホルモンが一切、出なくなってしまうと聞いて、“まだ40代なのに老けてしまうのかな……”“女性らしさが失われてしまうのかな……”と不安になりました。でも、病気を治すためには仕方ないのかなと思い、“悪い部分は取っちゃって、早く元気になりたい!”と気持ちを切り替えました」

西丸さんは12月25日に入院して翌日に子宮と卵巣を摘出する手術を受け、大みそかに退院した。実は西丸さんは、12月初旬まで半年間、不正出血が続いていたそうだ。

「出血量は日に日に増して、夜用のナプキンでも対処しきれないほどでした。実は私、12月あたりまで映像作品のお仕事をしていたんです。撮影の日は生理用のショーツを2枚はき、大人用の尿漏れパッドをつけていました。それでも出血が漏れるのが心配で、カットがかかるたびにトイレに駆け込んでいました」

当時の作品を見た西丸さんは、真っ青な顔色をしている自分に驚いたという。

「ヘモグロビン値が5g/dl以下だと輸血が必要になるらしいのですが、そのころの私のヘモグロビン値は5.2g/dlでギリギリだったんです。そりゃあ、顔色も悪くなりますよねぇ(笑)」

「抗がん剤治療で髪が抜ける前に金髪にするわ」

手術後、すぐに仕事に復帰するつもりでいた西丸さんだが、病理検査の結果、“脈管侵襲ありで中リスク”であることが判明。医師からは抗がん剤治療をすすめられた。

「入院した時点で、“手術を受けたらできるだけ早く仕事に復帰するぞ!”とスッキリした気分になっていたんです。それだけに、抗がん剤治療の話が出たときには戸惑いました。ただ、抗がん剤治療は絶対に受けないといけないわけではなかったんですね。『先生だったらどうしますか?』と聞いたところ、『妻が同じ状況なら、絶対に受けてほしいです』とのことだったので、1週間ほど考える時間をもらうことにしました」

西丸さんは、医師でもある父親にすぐに相談した。

「父に『そういう状況なら、絶対に抗がん剤治療はしたほうがいい』と言われたこともあり、治療を受けることにしました。“こうなったら覚悟を決めて楽しむしかない!”と気分を上げて、病院から帰って3時間後には友達に“抗がん剤治療で髪が抜ける前に金髪にするわ”ってLINEを送ってました(笑)」

そして抗がん剤治療が始まるまでの約1か月間、好きなことを存分に楽しんだ。

「手術で悪いところは取ってしまったし、術後の経過も良好でしたし、大量の出血から解放されたおかげで、すごく元気だったんです。会いたい人に会って、行きたいところに行って、という感じで、遊びまくっていました」

抗がん剤治療は3月上旬から始まった。3週に1度、全6回の投与だ。

「具合が悪くて買い物にも出かけられなくなると思って、食べ物や飲み物をたくさん買い込んでいたんです。でも、全然元気で病院の帰りに寄り道ができるほどでした」

しかし、初回の投与をして3日目から皮膚のかゆみや喘息といったアレルギー症状に悩まされるようになった。その後も抗がん剤治療を受けるたびに、さまざまな副作用が出るようになったという。

「先日、5クール目の投与を終えましたが、かゆみがつらくて。ずっと続くので寝られないし、冷やしたり薬を塗ったりして対処していました。他にも、骨が痛くなったり、吐き気やしびれがあったりもしますが、調子が悪いときにはとことん自分を甘やかしてます。寝たいときに寝て、食べたいものを食べて、とにかくゴロゴロと(笑)」

抗がん剤投与から2週間ほどたつと症状はおさまり、時にはジムでトレーニングをすることもあった。

「抗がん剤治療時の禁止事項を先生に尋ねたところ、特にないと言われて。ただ、免疫力が下がるので、人混みにはできるだけ出かけず、手洗いやうがいなど感染対策をしっかりやってくださいとのことでした。無理しない程度なら運動もしていいと言われたので筋トレも少ししています」

西丸さんはインスタグラムに治療の経過などをのせており、ウィッグにスカーフを合わせたファッションや、そり上げた頭に似合うメイクの披露など、今を楽しんでいることが伝わってくる。

顔のうぶ毛も抜けたため、肌がツヤツヤに

「抗がん剤治療でまゆ毛も抜けると知り、アートメイクをしたんです。だからまゆ毛はなんとかなっているものの、まつげはなくなってしまいました。今日の取材で初めてつけまつげをつけてみたのですが(笑)、便利ですねぇ」

抗がん剤治療はつらいこともあるが、西丸さんは、常にメリットを探している様子。

「顔のうぶ毛も抜けてしまったので、肌がツヤツヤになったんです。友達に会うたびに“肌ツヤがいいね”と驚かれます(笑)」

自分の置かれた状況を楽しみ、周囲からは“鬼メンタル”と呼ばれているという西丸さん。子宮体がんを患ったことで、あらためて見えてきたものがあるという。

「まわりの人たちに温かく支えてもらっていることを実感していて、感謝しかありません。仕事をして、ごはんを食べて、友達と会ってという日常を過ごせていたことが、すごく幸せなことだったんだなぁって。それに私は役者なので、経験値を積んで自分の引き出しを増やすことが大切だと思っているんです」

子宮体がんに罹患したことは役者としての糧にしていきたいとも語る。

「とにかく今を起点として前向きに!楽しみながらこれからも“鬼メンタル”で治療に取り組んでいきたいです」


取材・文/熊谷あづさ

1980年、長野県生まれ。ドラマ『マザー&ラヴァー』、『鬼嫁日記』、『結婚できない男』、『サラリーマン金太郎』、『グ・ラ・メ!〜総理の料理番〜』、映画『千年の恋ひかる源氏物語』、『TELLME』、『ガールズドライブ』、『乱歩の幻影』(2024年7月公開予定)などに出演するほか、舞台やCMなど多方面で活躍中。

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