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みぞおちに肘打ちに粘着LINE…野口健氏の元マネが「縁切り覚悟」の告白

みぞおちに肘打ちに粘着LINE…野口健氏の元マネが「縁切り覚悟」の告白

2007年、八ヶ岳でCM撮影。小林氏の手元にある野口氏とのツーショット写真は、ほぼこのころに撮られたものだ

《一瞬息が詰まり、鈍痛が走った。
参加者全員が、いま起きたことをうまく理解できずにいた。「いま野口さんが小林さんを肘打ちしたよね?」と皆が目を合わせて確認していた。

登山イベントで、関係者と談笑していたマネージャーのみぞおちを、思い切り肘打ちする「野口さん」。’99年、七大陸最高峰への登頂を当時世界最年少の25歳で達成し、富士山やエベレストの清掃活動などでも知られる登山家・野口健氏(48)の裏の顔だ。》

「彼は本来きわめて魅力的な人物で、『自分が支えなければならない』とまわりに思わせる才能があります。だからこそ、スポンサーはあとを絶たず、僕も彼から離れたくても離れられなかったのです」

現在は、ベンチャー企業勤務の会社員となった小林元喜氏(43)が振り返る。2003年からの18年間のうち計10年間、小林氏は野口氏のマネージャーを務めていた。

冒頭の“肘打ち”エピソードは、小林氏が上梓する『さよなら、野口健』(集英社インターナショナル)の一節だ。小林氏は、過去に3度も野口氏の事務所に入退社を繰り返している。本の出版は、文字どおり野口氏への“さよなら”を意味しているのだ。

「“暴露本”として受け止める方もいるかもしれません。ただ、“暴露”の先にある人間の美しさやどうしようもなさ、つまり人間の存在のおもしろさに辿り着きたいという思いは常にありました」

本書が第19回開高健ノンフィクション賞の最終候補作になったのは、小林氏の試みが成功している証しだろう。だが、そこに綴られているのは、テレビでの陽気でおしゃべりな野口氏とは別の人格だ。

原稿を書いていてパソコンがフリーズすると、ピッケルでモニターを破壊する。「赤ちゃんがいると講演に集中できない」と、未就学児童の講演会への入場をいっさい禁止する。ブランドアンバサダーを務める高級外車を傷つけた小林氏に激高し、「スポンサーに顔向けできん」と、保険が適用できるにもかかわらず自腹で修理費用を払わせようとするーー。

「取り沙汰されていた政治家への転身から完全に身を引いた2010年ごろから、野口さんはすごく神経質になっていったのです。当時は、スポンサー契約は順調に集まっていて、さまざまな賞をもらったりと絶好調でした。しかし野口さんは、『こんな状態がずっと続くわけがない』と、独り言を呟くようになったのです」

事務所スタッフへの対応も厳しくなった。

「野口さんの機嫌を損ねたスタッフは担当から外され、電話やメールも無視されるようになりました。『野口健事務所は24時間営業だ』と言って、昼間の小さなミスに対し、深夜にLINEで長文の叱責が来るのです。理路整然と、執拗に矛盾を突いてくるような文章で、まさに正論ではあるのですが、見ていてつらくなるものでした」

野口氏にとって明かされたくない内容が満載の『さよなら、野口健』だが、読むと妙なことに気づく。

第一章は、野口氏の生い立ちから2007年の植村直己冒険賞受賞までが綴られたものだが、野口氏本人が取材に応えているのだ。暗部を暴かれる当人が登場する“この類”の本は、前代未聞だろう。

「もともと僕は小説家志望で、野口さんは関係が良好なときは『知り合いの小説家を紹介してやろうか』などと、ずっと気にかけてくれていました。本書も、当初は野口さんの純粋な評伝を書くつもりで、執筆のきっかけも、じつは野口さんが作ってくれたのです」

執筆にあたり、小林氏は野口氏のほか、同級生や親族、メディア関係者など40人以上に取材をおこなった。そのなかで、野口氏のことを「登山家としては3.5流」と公言する山岳ジャーナリスト・服部文祥氏に出会った。

「私はそれまで野口さんのタレント性に惹かれていて、登山家の側面にはまったく知識がありませんでした。そこで服部さんに話を聞くと、環境保護活動などは評価したうえで、『登山の実力は、市民ランナーレベル』と言うので驚いてしまったのです。これまで知らなかった野口さんの姿が見えてきて、真実の“野口健”に徹底的に向き合ってみようと思ったのです」

野口氏を丸裸にするためには、小林氏自身もすべてをさらけ出さなくてはならない。事務所を退職して生活が困窮し、野口氏からもらった高級腕時計を売却したことや、精神科に入院したことも隠さず書いた。

「書き終えた今、あらためて読み直すとこの本は、愛憎劇ともいえる野口さんと私の18年間をつづったある種のラブレターであると感じています。

先日、刊行前に野口さんに本を手渡しました。読み終えた野口さんは『僕よりも、僕のことを知っている人がいた。こりゃ、壮絶で凄まじい究極のラブレターだな』と、いろいろな意味で驚愕していました」

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