昨年のＮＨＫ大河ドラマ「鎌倉殿の１３人」などドラマや映画に多数出演していた撮影馬の「バンカー」（セン馬）が死亡したことが２６日に分かった。２０歳だった。

バンカーを管理する山梨県北杜市の乗馬クラブ「ラングラーランチ」代表の田中光法さんによると、死亡したのは今月２３日。昨年１１月から体調を崩し、下痢も続き「やせ細ってしまって。とにかく食欲がなくなっていた」という。血液検査の結果は問題なく、獣医３人にも診てもらったが原因は不明。「ありとあらゆる力を尽くした」が回復には至らなかった。

今月１５日に馬房の中で立てなくなり、その後一時持ち直したものの、最後は引き馬の最中に前脚から転倒。田中さんは「これ以上苦しめることは、本当の愛情ではない」と考え、バンカーはスタッフや会員らに見守られる中息を引き取った。「ものすごく穏やかな表情で逝きました」と振り返った。

大河の常連として知られ、主演俳優のパートナーを３度務めた。“大河初主演”となったのは２０１４年の「軍師官兵衛」。岡田准一はバンカーに惚れこみ、その後映画「関ヶ原」（１７年）や「燃えよ剣」（２０年）でも指名した。大河「麒麟がくる」（２０年）で長谷川博己と、「鎌倉殿の１３人」では小栗旬とコンビを結成。主演だけでなく「おんな城主直虎」（１７年）では菅田将暉が、「西郷どん」（１８年）では渡辺謙が騎乗。「青天を衝け」（２１年）でも草ナギ剛が乗るなど、大河だけで１０本以上出演し、映画などを含めると出演作品は５０本以上にのぼる。

亡くなった後には、縁のあった俳優から“お悔やみ”の声が届いた。「その役者さんが『小栗君にもラインしておきました』と。大河出演者の方はうちのクラブで練習をするので、みんな馬仲間になって、仲がいいんです」。ＮＨＫの歴代の担当者やプロデューサーからも連絡があったという。

昨年１０月に撮影したＮＨＫドラマ「大奥」で、主演の女優・冨永愛を乗せたのがバンカーの最後の仕事となった。冒頭で海岸を走るシーンが話題となり、「バンカーくんだ」とネットで沸騰。「『大奥にバンカーくんを取られちゃったから「どうする家康」に出てこないのか』とか。『バンカーくんが大奥に取られた』と。それくらいみなさん知ってくださっていてビックリしました」と田中さん。実は現在の「どうする家康」にもさり気なく出演しており、お市役の北川景子が騎乗した姿が放送された。来年の大河「光る君へ」の出演も予定されていたが、かなわなかった。

ネット上でもファンから悲しみの声が相次ぎ、「バンカーくん」がトレンド入りした。田中さんは「競馬界で有名なＧ１馬が名前を覚えられることはあっても、普通の乗馬用の馬でこれまで名前が知られる馬っていないと思うんです。ありがたいなと。なんて幸せな馬なんだろうとつくづく思いました」と誇らしげに語った。元気だったバンカーが２年前に撮影に臨んだ北野武監督の映画「首」の公開も待たれる。

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