レミオロメン「３月９日」、リリースから１９年卒業ソング定着、藤巻亮太「この時期に歌うのは特別」

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レミオロメン「３月９日」、リリースから１９年卒業ソング定着、藤巻亮太「この時期に歌うのは特別」

2023-03-05 11:09

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レミオロメン「３月９日」、リリースから１９年卒業ソング定着、藤巻亮太「この時期に歌うのは特別」

ロックバンド・レミオロメンの代表曲「３月９日」。卒業式や合唱コンクールで歌われ、学生を中心に幅広い世代から親しまれる。発売から１９年たった今も、この時期になると音楽チャートの上位に顔を見せる。同バンドのボーカルで、シンガー・ソングライターの藤巻亮太（４３）が楽曲の秘話を激白。ヒット曲「粉雪」の制作裏話、昨年１０周年のソロ活動への思いなども語った。（加茂伸太郎）

「３月９日」（２００４年）はメジャーデビュー２作目のシングル。この時期になると、音楽チャートが上昇するのは毎年の風物詩だ。当該週のビルボード総合チャートは２０年が最高位１５位、２１年が３３位、２２年が１９位を記録。発売から１９年が過ぎたが、幅広い世代に愛されている。

藤巻は「今年もこの季節が来たんだなと。自分自身、この時期に歌うのは特別なものがあります。この音楽を残しなさい―という法律があるわけじゃない。『３月９日』を聴きたい、歌いたい、演奏したいという方がいなければ残っていかない。一人でもそういう方がいること自体が尊いですし、ミュージシャンとしてこの上ない喜びです」と感激した。

今年の渋谷トレンドリサーチ「卒業式の定番ソング」の３位、Ｓｉｍｅｊｉランキング「Ｚ世代が選ぶ！好きな卒業ソング」の３位。卒業ソングとして定着したが、実は、友人の結婚式のために制作されたものだ。

「保育園から一緒の幼なじみの結婚式のために、彼のことを思い浮かべて書きました。自然と出てきたので苦労はなかったです。結婚式の日が３月９日。『サンキューの日に結婚するんだ！』と言っていて。いい日だな、だったらタイトルも『３月９日』にしようと。デビュー前だったので、それぐらいの（軽い）気持ちで付けました」

楽曲が注目されたのは、発売から１年半以上が過ぎた０５年１０月。フジテレビ系「１リットルの涙」（沢尻エリカ主演）の挿入歌として、主人公の通う学校の合唱課題曲に使用されてから。

「元々使われる予定ではなかったんです。プロデューサーが『粉雪』を気に入ってくださり、ドラマの中で情熱を持ってかけてくださって。（その縁で）プロデューサーといろいろな話をする中で、合唱の歌として使うことになりました」

合唱曲、さらに曲名が卒業シーズンと重なり、自然と卒業ソングとして根付いていった。「何年かして、そういう呼び方をしてもらっていると知った時は驚きましたね。音楽の良いところは、聴いた方が人生に投影してその方の物語にできるところ。作り手の思いはあるけど、（作品を）発表した時点から聴き手のものだと思うんです。この曲は、自分の手から離れたような感覚があります」

学生に限らず、この春、人生の節目を迎える多くの人たちがいる。「結婚（による人生）の『門出』を歌った歌ですが、卒業も新たな人生の『門出』。この曲と共に節目を越えたい―と、皆さんが人生に投影されるのはうれしいです。１９年前の歌ですが、今の藤巻が今の気持ちで歌えている（自負はある）。毎年、自分自身も成長させてもらっています。今年もこの季節が来たんだ、これからも頑張っていこうと思いを新たにしています」

「３月９日」と並ぶ代表曲が「粉雪」（０５年）。８６万枚（オリコン調べ）のヒットを記録し、０９年に、この曲でＮＨＫ紅白歌合戦に初出場した。曲名は軽くて細かな雪を指すが、そのイメージとは対照的に力強いメロディーのサビが印象的なナンバーだ。

「サビから作ったと思われがちですが、最後にできたのがサビなんです。『３月９日』が自然にできたのと違い、スタジオに何日もこもりました」

故郷の山梨・山中湖のスタジオで制作に取りかかった。仮歌は１日で完成したが、楽曲を聴いたプロデューサーの小林武史氏（６３）から「サビだけ違うんじゃないか。もう少し粘ってみたら」と打診され、再制作することに。そこからが生みの苦しみだった。

「初めにでき上がったものも気に入っていたんですが、メロディーが少し叙情的で。最後は降りてきたというか、エモーショナルな部分から。デビュー３年目、（７枚目のシングルで）大事なタイミングでした。バンドを軌道に乗せたいという切なる思い、バンドを知ってもらいたいという一心で。その情熱があったからできたんだと思います」

小林氏からは「これで行こう」とＯＫが出た。メンバーも納得した形で、自信を持って世の中に発表できた。「妥協せず粘って作り続けることの大事さを学びましたし、ひとりのミュージシャンとして貴重な経験になりました。小林さんの『頑張ってみたら』という、ひと言が大きかったです。１８年近くたっても、雪が降る時期になると思い出していただける。ありがたいことです」

１２年にバンド活動を休止し、ソロ活動を始動。昨年ソロ１０周年を迎えた。「レミオロメンとして積んできたものと勝手が違い、初めは戸惑いました。２０代の頃に『粉雪』がヒットし、３０代でバンドのようには通用しなくなった。一般社会に出ると、２０代で下積み、３０代で仕事を任され、できることも増えるけど、自分では（逆に）３０代がその時期」。おごることなく冷静に受け止め、４０代に向けた英気を養った。

「（音楽活動で）悩めることが『幸せ』と、ポジティブに感じられるのはソロ活動のおかげ。歌えることの喜びや楽しさ、音楽ができることのありがたさを、この１０年で刻めました。ネガティブなニュースがあふれ、不安や迷いを感じる時もあるけど、希望を信じて作っていきたい。どれだけマイナーなコードを使うバラードでも、希望の光が宿るように作りたいです」

２つの曲が与えた影響はとてつもなく大きい。「音楽の持つすごさを、自分自身が体験、体感させてもらった曲です。聴いてくださった方々が（それぞれに）この曲の物語を作って、大事にしてくださっている。『粉雪』は情熱を傾けて作るんだと姿勢を正してくれる曲。『３月９日』は自分の思いを大事に、ピュアに作っていこうという曲です。違う作り方をした両極の２曲がブレない軸として存在する。それが励みになるし、新しい曲を作るモチベーションにもなっています」

バンドとソロ。それぞれの経験を糧に、再び大輪を花を咲かせるつもりだ。

〇…最新アルバム「Ｓｕｎｓｈｉｎｅ」を引っさげ、藤巻は全国ツアー（７か所９公演）を開催中。ギター、ベース、ドラムのバンド形式で各地を回る。「エレキを弾いてソリッドな音が鳴っているのは格別なものがある。『Ｓｕｎｓｈｉｎｅ』（太陽の光）の文字通り、雲の向こうでも感じられるような前向きな（収録）曲が作れた。ビートやグルーブの中で歌うのが楽しいので、それを表現したい。ポジティブな思いを響かせていけたら」と意気込んだ。

〇…藤巻は１８年から地元・山梨で野外音楽フェス「Ｍｔ．ＦＵＪＩＭＡＫＩ」を主催する。新型コロナの影響で２０年は中止、２１年は都内からの無観客生配信を経験。「あまりに大きな力には逆らえませんから。多くの人が抗（あらが）えない中、（２０年、２１年の）２年があったからこそ、昨年１０月に再び地元で開催することができた。お客さんの前で歌えることの幸せ、一緒の場所に集まることの奇跡をかみ締められた時間でした。励みになったし、情熱を持ってやっていきたいです」と目を輝かせた。

◆藤巻亮太（ふじまき・りょうた）１９８０年１月１２日、山梨・笛吹市出身。４３歳。２０００年レミオロメン結成。０３年メジャーデビュー。１２年シングル「光をあつめて」でソロ活動開始、初アルバム「オオカミ青年」発表。２月２６日に新曲「朝焼けの向こう」を配信リリースした。