発達障害の認知度が年々高まっている。従来は子供の問題だと思われてきたが、実は一定数の割合で「大人にも発達障害の人がいる」という事実が知られるようになった。それによって「自分もそうかもしれない」と疑う人が増え、職場では混乱も起きているという。あなたの同僚や部下にもいるかもしれない、「大人の発達障害」の最前線を追った。
◆ADHDと診断されてホッとした

「ADHDと診断されたとき、ホッとして涙が出ました。今まで『自分はなんてダメな人間なんや』と思うこともありましたが、ズボラなのには理由があったんだって」

そう話すのは、東大卒芸人として知られる藤本淳史氏だ。同じくADHDの疑いがあった恋人の診察に同行した際、発達障害のチェックリストを見て愕然としたという。

「遅刻や忘れ物が多い、優先順位がつけられない。『これ、僕のことや』と思いました。

子供の頃から忘れ物は多いし、遅刻も日常茶飯事。頑張って早起きしても、『歯を磨く』『顔を洗う』などの優先順位がわからなくなって、頭がボーッとしてしまうんです。

片付けも苦手で、部屋の清掃代行を頼んだら、汚すぎて20万円も請求されました」

◆「頭がいい人」という印象とのギャップに苦しめられる

藤本氏は東大卒のうえに全人口の上位2％のIQを持っていなければ入れない「MENSA」の会員でもある。その「頭がいい人」という印象とのギャップが、かえって自分を苦しめたという。

「東大卒のイメージからか、ミスをしたとしても『サボってる』という言い方をされるのが本当につらかった。ただ、芸人の世界ではポンコツもキャラクターとして受け入れてもらえます。

遅刻しても周りが『こいつは東大卒やから』と笑いに変えてくれるし、『僕のことイジってるけど、たぶんキミもADHDやで』なんてジョークも通じる。環境の大切さを痛感しています。ちなみに、1年ごとの更新費を払い忘れて、今は元MENSA会員になっています（笑）」

◆特性を認めることで心に余裕が生まれる

現在はADHDだと判明したことによって、心境に変化が生まれたという。

「ADHDは、決して負の側面ばかりではありません。過集中や、マルチタスクが苦手という特性があったからこそ、東大にも入れたんだと思う」

◆発達障害との上手な向き合い方

また、自身の失敗も認められるようになったという。

「失敗はつきものなんだと自認することで心に余裕が生まれ、最近は人を頼れるようになりました。もちろん、ADHDをミスの言い訳にするつもりはありません。

しかし、自分を俯瞰して、目の前の自分を子供だと思い込むんです。子供って、ちゃんと見てないと何をするかわからないじゃないですか。だから『自分で自分の保護者になる感覚』でいると、失敗も許せるし、対策も取れるようになるんですよ」

ただ悲観するのではなく、自分なりの向き合い方を見つけることが何より大切なのだ。

【お笑い芸人・藤本淳史氏】
吉本興業所属。お笑いコンビ「田畑藤本」を解散し、現在はピン芸人。吉本興業初の東大卒芸人として、クイズ番組などで活躍中

取材・文／週刊SPA！編集部撮影／菊竹規モデル／黒木俊穂

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