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耳の変調を「痛みのない中耳炎だ」と誤診され

加賀百万石バストの異名を持つ人気グラビアアイドル、藤乃あおい(24歳)が体調の異変を感じたのは昨年の10月頃だった。

撮影/沢渡朔写真集『Aoi藤乃あおい写真集』より

「急に右耳が聞こえにくくなったんです。蓋をしているみたいに音が塞がった感じになって。そのうち治るだろうと思っていましたがずっと治らず、周りから『病院に行きな』と言われ耳鼻科に行きました。そこで『痛みのない中耳炎です』と診断されて、薬を処方して貰いました。でもきちんと内服していたのですが効かなくて。11月に入ってからは、口の開きづらさや痛み、下旬頃には頭から顎にかけてのひどい痛みに右の頬の痺れ、麻痺感も出てきて、11月最終日に近くの脳神経外科でCTを撮ってもらいました。ですがそこで『何もない』と言われ、口腔外科に回されたんです。そして次の日の口腔外科でも『何もない』と診断されました」。

新人ながらグラビア・オブ・ザ・イヤー2021を受賞し、活動は順調だったが…。

病院から「もう一度来てください」と呼び出しの電話

「どうすればいいのか頭を抱えていたら、その日の夕方にCTを撮った脳神経外科から連絡があり『昨日撮ったCTの事で先生から話があるので来週の同じ曜日にもう一度来てください』と。次の週、再び病院へ行ったところ『よく見たら左側にはない何かが右側にある』と説明されました。

ただ、場所的に脳神経外科の専門の場所ではないらしく、『これが何なのかがわからない』と。その日にMRIを撮ってもらい、また来週、次は耳鼻科の方に行くように指示されました。日に日にひどくなる痛みに耐えながら、一週間後再び病院に行くと、『副咽頭間隙腫瘍(ふくいんとうかんげきしゅよう)の疑いがあります』と言われました」

悪性の副咽頭間隙腫瘍(ふくいんとうかんげきしゅよう)

副咽頭間隙とは顔の奥の部分、頭部の中心部にあたり、人間の身体をコントロールしている重要な神経が集中している部位だ。この場所に腫瘍ができることはごく稀で、腫瘍の症例の0.5パーセント程度とされる。さらに副咽頭間隙腫瘍の9割は良性だという。

撮影/沢渡朔写真集『Aoi藤乃あおい写真集』より

「『良性だと思うけど、とても珍しい症例なのでこの病院では判断が難しい』と言われ、大きい病院の紹介状を頂き、また改めて違う日にその大きな病院で見ていただいたところ『悪性の可能性が高い』と言われてしまったんです」

医者も驚くスピードでの病の進行

運が悪いことにもう年末になっていた。できる限りの検査をしたが、結果は年明け。そこから治療方針を決めようということになった。

「がんの告知は辛かったですが、地獄のような状態の原因がわかって、安堵感も強かったです」

「でもその年末年始が地獄でした。気を失いそうなくらいの痛みがずっと続くし、痛みに耐えられずメチャクチャに泣いてしまうこともありました。石川の実家に帰省はしたんですが外出なんてとても無理。横になると痛みがひどくなるので、ベッドに額を付けて突っ伏して座った姿勢しかとれません。

睡眠もその姿勢で10分とか30分程度、たまに長くても2時間ぐらいしか眠れませんでした。口は指1本分くらいしか開かない。痛みとマヒで口は動かず話せませんし、食べ物も舌が半分痺れているので、上手く食べられません。流動食や柔らかい物を時間をかけて流し込むことしかできませんでした」

喉の奥のピンポン玉大の腫瘍で呼吸困難の恐れも

年明け1月5日、病院に行き年末にした検査の結果などを伝えられたが、その検査では良性か悪性かハッキリせず、「出来るだけ早く検査をしたい」との事で、急遽、次の日の1月6日に入院、その日のうちに生体検査の手術を受けることに。

「喉の奥を切る手術で、麻酔が切れると痛くてモノが食べられないので、4日間ぐらい入院しました。結果は約3週間後に出ると言われました。次の週は薬の調節や術後の経過などで病院へ。その間、自分で喉の具合を毎日鏡で見ていたのですけど、生検をした所から腫瘍が突き破って出てきている状態でした。すごく早いペースで大きくなっていて、腫瘍が喉を塞ぐ状態になってきました。3週間でピンポン玉ぐらいの大きさになってしまい、呼吸さえ不自由になるほどになりました」

生体検査で入院した際の食事。味は全く感じず、これだけ流動食の状態でも流し込むのが困難だった。

1月27日、生検の結果が出た。悪性だった。病名は副咽頭間隙腫瘍の中の『横紋筋肉腫』。横紋筋肉腫とは筋肉などの軟らかい組織(軟部組織)から発生する軟部肉腫の1つで、将来、骨格筋(横紋筋)になるはずの細胞から発生した悪性腫瘍。基本的に横紋筋肉腫は、小児に多く見られる悪性腫瘍で「成人では年間に全国で10人程度しかいない」と言われた。

ベッドの上で刺繍やイラストの模写にハマっている。「何も考えず無心になれるから」だという

「腫瘍が大きくなる速さや、痛み、辛さは強く実感していたので、悪性と診断される覚悟はしていましたが、どこかで良性の可能性も祈っていたので、やはりすごくショックでした。そして、喉の具合を見た担当医があまりの進行の速さに驚き、『すぐにでも治療をしないと、窒息死してしまう可能性がある』と言われ、一刻も早く抗がん剤治療を始めることを勧められたんです」

「時間がありすぎて、せっかくだから少し勉強してみようかと思って。小学生のドリルからなのは内緒です（笑）」

医師は「成人での症例が極端に稀なので、正直、この治療法をすれば確実に治る、とはっきりした事は言えません。ですが、小児の横紋筋肉腫に関しては、ある種類の抗がん剤がとてもよく効くというデータがあります。まずはそれを試しましょう」と治療方針を説明した。

ガン宣告より辛かった出来事とは

「でも正直、頭では分かってはいても素直に抗がん剤治療を受けようという気持ちにはなれませんでした。『将来、妊娠できなくなる可能性があります』という説明を受けたからです」

抗がん剤は通常、数種類の掛け合わせを試してゆく。どれが効くかは個人差が大きく副作用も人によって異なる

抗がん剤は卵巣機能の低下を招くケースが多く、その薬と患者の組み合わせによっては妊孕性(にんようせい・妊娠のしやすさのこと)が極度に低下したり失われてしまうことがままある。そのため若い女性患者のなかには、抗がん剤を使わずあえて外科手術をしたり卵子凍結などで将来に妊娠の希望を残す治療法を選択する人も多い。

「元気なころの写真は見ると悲しくなることもあるけど、がんばろうっていう勇気をもらえてありがたいのもあって複雑です」

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「私の場合、外科手術をやるには頭部、顔面を真っ二つに割らなければならないほどの大手術になってしまう部位だそうですし、腫瘍の大きさからしても現実的には難しいと。卵子凍結も、採取する為の準備期間に時間がかかってしまうらしく、私の病気の進行の速さを考えるとその時間はないといわれて......。

もちろん、抗がん剤治療を受けることにはしたんですけど、でも、帰ってからもずっとその事が頭から離れなくて、自分の子供を産めないかもしれないという辛さと、親に孫を見せることが出来ないかもしれないという申し訳なさ、今は相手もいないし、考えてなかった事だけど、将来もしそのような相手が出来たとしてもこの事を伝えたらそもそも結婚することすら出来ないってことなのかなとか、いろいろな気持ちでぐちゃぐちゃになっちゃって、耐えられなくなり、お母さんの前で泣いてしまって」

「抗がん剤を入れ始めてから3日目くらいが私は一番辛いですね。手を動かすのも一苦労の倦怠感と吐き気に苦しみます」

「あんたが何より大切やねんから」

「そしたらお母さんが『気持ちはわかるけど、あんたが助からないと、そもそも何も出来んやろ。あおいが助かってくれることが一番やねんから。孫もそりゃ可愛いけど、ママからしたらあんたが子供で何より大切やねんから。孫の顔見せてあげれんかもしれないとか、今はそんな事考えんといて。後のことは後でどうとでもなるから。』って抱きしめながら言ってくれて、その言葉に余計涙が出ちゃって。

でも確かに自分が助からないとそもそも元も子もない事なんだな。って。その後からは病気と闘うことに対しての色々な覚悟が出来ました。でも出来たはずなんですけど、何というか、すみません、やっぱり思い出すと勝手に涙が……」

自分でバッサリ、ショートカットに

1月31日、彼女は抗がん剤治療を始めた。2つの療法を組み合わせて治療していくことになった。1つ目はVAC療法と言われる3種類の抗がん剤を使う療法で、1週間に1本、点滴や注射で抗がん剤を体内に入れ、それを3週間繰り返す。これで1クール。2つ目はVI療法と言われる2種類の抗がん剤を使う療法で、毎日1本点滴で抗がん剤を体内に入れるのを5日間続ける。2日あけて1本入れて、1週間後にまた1本。これで1クールだ。予定では全14クール、約1年がかりの長い闘いが待っている。

抗がん剤治療を始めて1週間ほどで髪が抜け始めた。「聞いてはいましたが、こうもバサッと抜けるとびっくりしますね」

「今年は楽しみにしていた大きなお仕事をいくつもいただいていたので、本当に残念でしたが、今はまず、しっかり病気と闘って治すことだなと。気持ちを切り替えるためにも髪をバッサリ切りました」

腰まであったトレードマークの黒髪を自分で切ったという。

「薬の影響でやっぱりどうしても抜けちゃうんです。お風呂入った時に思った以上に抜けちゃって、もう自分で切ろう!ってなったんです(笑)。サッパリしましたね。何年ぶりのショートカットだろ？と、ちょっと楽しくなったくらい」。

「入院2週目で自分でカットしました。もっとショックかと思いましたが、案外うまくできたのとすごいラクになったので良かった」

不安はもちろんある。だが藤乃はしっかりと前を向いている。

「ガンが急激に小さくなり、手術でもう取れる、などといった、凄いハッピーな奇跡が起こらない限りは、約一年がかりの治療計画です。でも、病状が安定してきたら通院治療も可能になるそうです。そうなったら早くイベントとか配信とかでまた皆さんに会いたいなぁと思ってます。ただ、体重が前に比べて減っちゃったし、ほんの少しですがバストサイズも落ちちゃったかな（笑）」。

「薬が効いてるのか、口の中のボールはほとんど消えて今はこういう食事です。味覚も戻りつつあっておいしくいただいてます」

「必ずまた撮影の現場に戻ってきます」撮影/沢渡朔写真集『Aoi藤乃あおい写真集』より

「今回、この病気の話の発表を、多くの方々がそれぞれいろんな気持ちで読んでくださってると思います。この病気は本当に稀らしく、医師からあまり症例がないと言われて本当に不安でした。もし同じ病気の人がいたら、そしてこの記事をたまたま見つけてくれて読んでくれたら、初期症状がどんな感じだったのか、どんな治療をしているのかなど、少しでも参考になればいいなと思います。

そして、ひとりじゃないよって事が伝えられたら、と。まだ始まったばかりの抗がん剤治療だけど、検査のたびに腫瘍が確実に小さくなっている、とお医者さんから言われています。長い闘いになるとは思うけど、ゆっくり焦らず治していきます。ファンの皆さん、関係者の皆さん、今しばらく待っていてくれると本当に嬉しいです」。

「最初は窓の外を見て泣いてましたけど最近は『絶対”あっち側”に戻るんだ』って気持ちになってきました」

ふじの・あおい1998年9月29日生まれ。石川県出身。T158センチB100（Iカップ）W62H85。スカウトされて2020年7月にデビュー。同年11月に発売されたイメージビデオは同ジャンルの年間売り上げ1位（DMM調べ）。翌’21年のグラビア・オブ・ザ・イヤーのグランプリを受賞。

「眉毛とかまつ毛も抜けちゃうらしいんです。残念！私、まつ毛には自信あったんですよ（笑）」

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