芸能ニュースなどの芸能情報から掲示板で雑談!

芸能速報チャンネル ごしっぷる

【堀井 憲一郎】『大病院占拠』『Get Ready!』…今年の医療ドラマに起きた「意外な異変」に気づいていますか?

【堀井 憲一郎】『大病院占拠』『Get Ready!』…今年の医療ドラマに起きた「意外な異変」に気づいていますか?

変わった医療モノドラマ

1月から3月のドラマでは、病院モノがいままでと少し違っていた。

「医者が人を救う」というストレートなドラマが主流ではなかった。

一つはTBS日曜劇場『GetReady!』であり、またもうひとつは土曜の日テレドラマ『大病院占拠』である。

どちらも医療従事者の不正な行為を暴こうとするドラマであった。

〔PHOTO〕iStock

ほかにも、恋愛ドラマ風味の『星降る夜に』のヒロインは産婦人科医であり、その病院を舞台にいくつかの物語が展開した。ヒロインは過去に医療過誤で訴えられ、裁判になったことがあった。そのことがドラマ終盤に大きな影を落とす。

不正ではなく、あきらかに患者側の一方的な思い込み要素の強い医療裁判であったのだが、でも医療の裏側に光を当てたドラマであった。

『リエゾン〜こどものこころ診療所〜』が唯一医療ドラマらしい内容であった。「こどものこころ」を診療する児童精神科を舞台に、新米医師の奮闘を描く定番の展開である。

ただ、『リエゾン』でもまた、医師と患者の境界線がやや曖昧である、といういままでとは少し違う視点を提供していた。

院長(山崎育三郎)もヒロインの研修医(松本穂香)も、どちらもかって小児精神科にかかっていたことがあり、ともに発達障害があったことが明かされる。

治す人と治される人という単純な構造でとらえられていない医療ドラマであった。

「暴力性」への注目

このクールの医療ドラマでとくに着目されていたのは、「暴力性」ではないだろうか。

『大病院占拠』では、テロリストもどきの「鬼」たちが、タイトル通り大病院を占拠して、人質を取る。大病院への暴力を軸にドラマが始まった。

犯人グループ(鬼たち)は、医者やその経営者たちに対する不信感から、そういう行為に出ている。

彼らは病院や医師らの不正を告発しようとしていた。

そしてドラマの意図したことではないかもしれないが、「医療はもともと暴力性を秘めている」ということを明らかにしたように見える。

患者は、基本、医師のいうことを聞く立場にある。受け身である。

それは医師への信頼がもとになっている。

もし、医師側に何かしらの問題があった場合でもそれを忌避することがむずかしい。

力の行使でいえば、ほとんどの場合は医師が患者に施すばかりである。

患者側のとらえかたによっては、それが暴力に感じられる場合もある。

ドラマ『大病院占拠』を見ていると、そこが明瞭になっていく気がした。

大病院を占拠した「鬼」たちは、病院や医師の不正を暴いていく。

それは、弱い者の立場に立っての行為である。

銃で武装して大病院を占拠するという暴挙は、それはつまり、それぐらいやらないと大病院やその関係者たちの悪が暴けない、ということを示していた。

同時に、医療はもともと暴力性を秘めており、一つ間違えば、リアルな暴力になるということも訴えていた。

彼らはいわば復讐者であったのだが、それは「暴力性に無自覚な医師たちを糾弾する」という形をとっていた。

医師側の意識は、おそらく、患者の身体に暴力を加えているつもりはないだろう。当然である。

医師が戦っている相手は(暴力的措置を奮う相手は)、「病魔」であって、患者の身体を救うために、その敵に対処しているだけ、ということになる。

そうでないと医療行為にならない。

ただ敵=病魔は、患者の本体に巣くっている。

医師と病魔の主戦場は患者の身体であり、すべての戦争と同じように、ただその現場にいるだけでも強く暴力に巻き込まれることになる。

いたしかたのないところだ。

そのことは、いちいち言語化されるわけではない。

患者が医者を信頼しているかぎりは、問題とされない。

ただ、その信頼が損なわれた場合、いろんなことがむずかしくなる。

『大病院占拠』というドラマは、襲撃側が暴力を強く駆使していたため、かえって「医療行為そのものの暴力性」を照射してしまったようにおもう。

インパクトの強いドラマであった。

奇妙な天才医師

『GetReady』は、違法な天才医師のドラマであった。

主人公は、法外な治療費を要求するも、どんな状態の患者も生き延びさせる腕を持っている。漫画『ブラックジャック』主人公のような存在だ。

手塚治虫の漫画でも、最初登場したときはかなりワルで、アウトローそのものな存在であったが、やがてお話が長くなっていくと、優しい名医であるように描かれ、アウトローな医師設定はだいたいそういう展開になってしまう。

このドラマの主人公は、困難な手術をいつもひとりでこなしている。

とても高度な医療機械を使っているようだが、看護師一人のアシストだけで困難な手術をやりとげている。

現実には、こんなことは不可能だろう、というのはシロウトにもわかる。

こんな医師がいればいいな、という存在でさえもない。

ドラマの基本的な構造は、助からなさそうな患者を天才医師が助けるというもので、そこの部分はパターンどおりである。

ただ、助からない状況も、それを助ける進展も、「物語性」が前面に出ている。早い話が、ありえなさそうなことの連続ばかりだ。

ドラマの主眼はここにはない、と繰り返し主張されているようだった。

助かってよかったね、という気分になるドラマでもなかった。

わがままな神

主人公の天才医師は、自分で納得しないと手術をしない。

そして、彼が引き受ければ患者は必ず助かる、引き受けなければまず助からないという二択になっている。

手術してもどうなるかわからない、という展開はない。彼が手術すれば必ず助かる。

つまり、彼は、人の生死の全権を握った存在であった。

言うなれば、わがままな神である。

優しさを秘めた圧倒的暴力存在ともいえる。

このドラマがふつうの医療ドラマに見えなかったのは、そういう主人公の異様さにあった。

主人公は、繰り返し「その患者は生き延びる価値はあるのか」と問う。

周りは価値はあると主張しても、彼が、いや、ない、と否定することもままあった。

第三者にもわかる明確な基準ではなかった。

まさに「神の気まぐれ」である。

「瀕死の患者を助けるかどうか」という判断において、公平性を持っていなかった。

だいたいは「役に立たない人間だから施術しない」と言ったところで、いろいろあって、結局、手術することが多かった。気まぐれで命を落とすというシーンはなかった。

医師は、すべての患者に同じ態度で接しているというのが、医療現場での原則である。

でもこのドラマではそうではなかった。価値ある人間しか天才医師に命を助けてもらえない。

では、ふつうの医師はそんなことはやっていないのか。

そういうポイントで視聴者を揺さぶったドラマだともいえる。

逆にいえば、「医師の判断は、そのまま暴力となりうる」ということを示した物語であった。

あまりTBS日曜9時のドラマらしくない作品であった。

「人殺し」と中傷される

『星降る夜に』は、恋愛ドラマである。

主人公は35歳の産婦人科医(吉高由里子)で、彼女の10歳下の遺品整理士(北村匠海)との「年の差恋愛」を描いたドラマだった。

ただ、主人公は産婦人科医として、かつて担当した妊婦を死なせてしまったことがあり、その遺族から訴えられたことが、ドラマ後半で描かれる。

もともと危険な状態であった妊婦を、事情を教えられずに引き受けたため、(本来は引き受けないこともできたのに)最後に担当した主人公が死なせてしまったことになる。少なくとも遺族にはそう受け取られて、訴えられてしまう。

訴えは退けられ、遺族側は敗訴するのだが、最後の担当医が殺したのだというおもいが消えず、彼女にまとわりつく。

SNSで「彼女は人殺しだ」と誹謗中傷したあげく、住まいや勤め先まで「人殺しだ」と貼り紙をする。

主人公がやれることはやろうと、難しいオペに手を出した結果、人殺しと呼ばれる羽目に陥っていったわけだ。

この患者はもう無理だと見放した人たちは何も訴えられることもなく、彼らのせいだともされない。命に誠実であろうとして引き受けた主人公が、非難の対象になる。

ドラマを見ている人たちにはそれがわかりやすく提示されており、遺族はまったくそのことを知らずにただ彼女を恨み続けていた。

遺族が、こいつのせいで死んだ、と強くおもいこんでいるなら、訴えられる側にできることは少ない。

「殺された側だから何をやってもいいだろうというおもいこみと暴力」が主人公を追い込んでいく。

度合いの差はあってもこういうことは頻繁に起こっているのだろうと想像させるドラマであった。

おそらく、医師および医療行為は、有無をいわせぬ暴力性を秘めていると、患者側は無意識でどこかでおもっているのだ。

無事に施療がすめばそれでいいのだが、おもってもない結果が出たとき、納得しない患者は医師の暴力に反発して、みずからも暴力を振るってしまう。

その姿が描かれていた。

ドラマ『星降る夜に』では、恨んでいた遺族(ムロツヨシが演じていた)が最後は納得して、ふつうの人に戻っていたのだが、それはドラマならではの収束のしかただったのだろう。

なぜか2023年の1月から3月のドラマには、「医療と暴力」というテーマが続いて示された珍しい時期であった。

【堀井 憲一郎】『大病院占拠』『Get Ready!』…今年の医療ドラマに起きた「意外な異変」に気づいていますか? 外部サイト 日テレが失速したのは、「あの番組の打ち切り」が原因かもしれない フジテレビに失望「あの番組」だけは終わらせてはいけなかった NHK女子アナ「頂上決戦」…和久田麻由子vs林田理沙の戦いを制した「真の勝者」 「ドラマの話題」をもっと詳しく

「らんまん」ディーン・フジオカの坂本龍馬役、大河ドラマ再登板の布石か 不倫ドラマの異例ヒットにテレビ大阪が感謝TVer累計1000万再生突破 「ハリー・ポッター」海外で配信ドラマ制作か、作者がプロデューサーに?

この芸能ニュースに関連する芸能人

  • +お気に入り登録

関連芸能ニュース

元なでしこ・丸山桂里奈「引退のグッズができて」引退理由にスタジオ悲鳴

元なでしこ・丸山桂里奈「引退のグッズができて」引退理由にスタジオ悲鳴

元なでしこジャパンでタレントの丸山桂里奈(41)が30日放送の日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」(火曜午後8時)に出演。「大人なのによく怒られちゃう有名人それでもめげずに頑張るぞSP」に登場し、引退までの経過を明かした。 「最初に引退するっていうきっかけになったのが、ツイッター(現X)で『今年が...
人の手料理に「文句を言うのは『違う』と思う」「まず感謝」 テニプリ声優の言葉に反響「本当に心に刺さる」

人の手料理に「文句を言うのは『違う』と思う」「まず感謝」 テニプリ声優の言葉に反響「本当に心に刺さる」

アニメ「テニスの王子様」跡部景吾役などで知られる人気声優・諏訪部順一さんが2024年4月30日、「家族や恋人や友人が作ってくれた食事に文句を言うのは『違う』と思う」とXで持論を述べた。 投稿は、「諏訪部さんのこういう考え方本当に素敵」などと反響を呼んでいる。 「『作ってくれた』というだけでまず感...
「踊る大捜査線」新作映画は2部作、最新映像で室井慎次の“今”が明らかに「無職です」

「踊る大捜査線」新作映画は2部作、最新映像で室井慎次の“今”が明らかに「無職です」

3月18日に再始動が発表された「踊る大捜査線」。映画『踊る大捜査線THEFINAL新たなる希望』(2012年)以来、12年ぶりに製作される新作映画は、二部作。各タイトルと公開日は、『室井慎次敗れざる者』が10月11日公開、『室井慎次生き続ける者』が11月15日公開に決定した。本日は、最新映像が解禁となった。 【...
「ガキ使」浜田雅功「俺と一緒で相方がいない」有名芸人が現る まさかのポンコツ逆噴射に番組騒然 浜田「話になれへん」

「ガキ使」浜田雅功「俺と一緒で相方がいない」有名芸人が現る まさかのポンコツ逆噴射に番組騒然 浜田「話になれへん」

28日放送の日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」では企画「脳をフル回転!なんやったっけ?部」が行われ、ガキ使チームVSドリームチームが対決した。 冒頭で浜田雅功がガキ使メンバーを集め、相手チームを「対戦相手、いまから出てくるけどガラクタ」と一刀両断。「問題児が約2名ほど、...

コメント(0)

名前
コメント
※必須
http://scoopire.net