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「コオロギを食べたら腕と足、身体中にじんましんが出て…」現役アイドル・撲我さくら(23)が身をもって知った“昆虫食ブームの落とし穴”《独占告白》
「息苦しくなって、咳も出てきました。夜になると、腕と足を中心に身体中に蕁麻疹が出ていました。それでピンときたんです。過去に、背ワタを取っていないエビを食べた時に似てるって」
【画像】コオロギを食べて全身じんましんが出たという撲我さくらさん
コオロギを口にしたばかりに謎の体調不良に襲われた。アイドルグループの一員の身に何が起こったのか――。
世界に広がる“昆虫食”の静かなブーム
爆発的な世界人口の増加に、環境変化による農作物の収穫量や水産物の漁獲量の乱高下。SDGsが叫ばれる当今、次代の重要な食糧として“昆虫食”が注目をあつめている。低コストで育てられるわりに高い栄養価があるとされ、来る食糧危機にうってつけの食材だと、ヨーロッパを中心に静かなブームが起こっている。
元来、日本にはイナゴや蜂の子など、特定の地方で昆虫を口にする食文化があった。だが、ここに来て一大コオロギブームが勃発している。火付け役は、徳島県立小松島西高校が行った「コオロギ給食」。食用コオロギを用いたレシピを生徒自身が作成し、乾燥コオロギの粉末を校内調理した給食に混ぜて“選択制”で提供したというものである。
コオロギの粉末Ⓒ時事通信/グラリス
河野デジタル大臣は「アレルギー事例は上がってきていない」と言っていたが…
以来、食品メーカーも商機を逃すまいと、さまざまな新商品の開発に明け暮れている。そしてコオロギ食は、ついに国会の論題にまで上げられるようになった。
3月30日に開かれた衆院消費者問題特別委員会では、立憲民主党の山田勝彦議員が食用コオロギの安全性について質問に立ち、安全表示の義務付けなどを求める一幕があった。消費者及び食品安全担当でもある河野太郎デジタル大臣は、山田議員の質問に対し政府を代表しこう答えた。
「コオロギを含む食品によりアレルギーなどの健康に関する影響が生じたという具体的な事例はまだ上がってきていないようでございます。具体的な事例がないものですから、特に現行の表示ルール以上の義務付けを行う必要はないと承知しています」
健康被害もなく、安くて簡単に栄養が摂取できるいいことづくめの夢の食材コオロギ。今晩のおかずが決まった――と早合点する前に紹介したいのが、都内を中心に活動しているアイドルグループ「SatanicPunish」のメンバーである撲我さくらさん。コオロギを食べ、アレルギーを発症したという気の毒ながら貴重な体験の持ち主だ。
罰ゲームでコオロギを食べたアイドル・撲我さくらさん
2021年5月15日、当時彼女は大阪を拠点に活動するアイドルグループに在籍していた。メンバーたちとYouTubeの撮影でレッスン前にクイズ企画を行っていた。最後までクイズに答えられなかったメンバーが、罰ゲームとして、一般向けに市販されている食用コオロギ商品を食べるという内容だったという。撲我さくらさんが当時を振り返る。
「罰ゲームで食べるコオロギをスタッフさんが持ってくると『うわ〜』と全員で悲鳴を上げてドン引きでした。パッケージの中に20匹くらいのコオロギが敷き詰められていて、大きい物もあれば小さい物もある。見た目はどこからどう見てもそのまんまコオロギで、色も茶色が強くて、匂いは無臭でしたが、正直、かなり気持ち悪かったです……(笑)」
クイズ競争に敗れた撲我さくらさんの出番が回ってくる。元々大の虫嫌いだというが、動画の撮れ高のためにと、パッケージからなるべく小ぶりのコオロギを探し出し、恐る恐る口に運んだ。
「まず足の部分だけ食べてみました。その後、勇気を振り絞ってパクっと胴の部分も食べました。油で揚げてカラカラに乾燥させた食感で、イメージ通りでした。草のような味で少し苦味がありましたが、想像よりもイケました!高タンパクという前情報もあったので、動画が終わった後もノリで10匹くらいパクパク食べてしまったんです」
さくらさんの体に徐々に異変が…
動画の撮影後に行われていたレッスンで、撲我さくらさんは軽度の息苦しさを感じたという。体を動かしていたこともあり、あまり気にせずに過ごしていたが、コオロギを胃に放り込んで2、3時間が経っていた帰り道、徐々に体に異変が起こり始める。
「帰りの電車の中で、かなり息苦しくなり、咳も出てきました。さすがにこれは何かおかしいと思いました。風邪にしては症状が急すぎるし、まったく思い当たる節がなかった。家に着いて夜になると、腕と足を中心に身体中に蕁麻疹が出ていることに気付きました。それでピンときたんです。過去に、背ワタを取っていないエビを食べた時の症状に似ていると」
彼女はこの日、他に何も食べていなかった。唯一口にしたのはコオロギだけ。まさかと思い調べてみると、コオロギには甲殻類に近い成分が含まれているというネット記事を目にする。その後、母親がアレルギーに効く薬を購入、それを服用したことで症状は落ち着いたという。
「私自身が、甲殻類アレルギーを持っているということはエビの件もありましたし、以前から自覚していました。でも、コオロギがアレルゲンに該当するなんて思いもせず、薬を飲むという対応も遅れてしまって、苦しい時間が続いてしまいました。翌日もグループのライブがあったのですが、大事をとって欠席することになりました」
甲殻類のほか、軟体動物、イエダニにアレルギーがある人も要注意
コオロギと甲殻類アレルギーの関係性について、食品の安全性等を専門とする科学ジャーナリストの松永和紀氏が解説する。
「欧州食品安全機関(EFSA)は、コオロギには甲殻類のほか、軟体動物、イエダニに対してアレルギーを有する人にアレルギー反応を引き起こす可能性があるという見解を示しています。これらは、トロポミオシンというたんぱく質を持っていてアレルギーの原因となります。コオロギにも、構造が丸っきり同じというわけではないけれどよく似たトロポミオシンが含まれています」
コオロギブームには思わぬ落とし穴がありそうだ。エビやカニはもちろんのこと重篤なアレルギーを引き起こす可能性のある食品、たとえば卵や小麦、蕎麦などを使用した食品には食物アレルギー表示が義務付けられている。だが松永氏は、コオロギにアレルギー表示を義務付けるのは難しいと見ている。
目新しい食品に対しては、ある程度の警戒心を
「アレルギーを引き起こす可能性があるけれど、アレルギー表示の対象になっていない食品というのは無数にあります。発症数が多く、症状が深刻になりやすいものに関しては必然的に表示義務が生じます。
ところがコオロギに関しては、食べる人が少なく摂取量もわずかで、発症者数も非常に少ない。事業者に表示を義務付けたり推奨したりするにはそれなりの科学的根拠が必要ですし、表示を義務付ける場合には国が『分析法』を確立する必要があります。分析できなければ違反の監視ができず、表示を義務付けしても制度として実効性がありませんので」
目新しい食品に対しては、消費者自身がある程度の警戒心を持たねばならない。
「新規の食品というのは、もしかしたら自分にアレルギーがあるかもしれないと念頭に置いておく必要があるでしょう。例えば、昨今のナッツブームで健康にいいからとバンバン海外から輸入し、くるみやカシューナッツなどそれまで食べていなかった人たちが食べ始めました。その結果、ナッツアレルギーの発症例が増え、くるみには3月からアレルギー表示が義務付けられました」(同前)
アレルギー表示は後手に回らざるを得ない。なんの注意喚起もないからと、一時のブームに乗って珍しい食べ物を口にするのはよくよく考えてからにしたほうがよさそうだ。
「あの時のコオロギが最初で最後です。今後一生食べることはないですね」
撲我さくらさんはそう苦笑いした。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
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