5月4日にネットフリックスで配信された『サンクチュアリ─聖域─』が大きな反響を呼んでいる。荒くれ者の新人力士・猿桜（一ノ瀬ワタル）が、しがらみの多い相撲界でのし上がろうとする姿を描いた話題のドラマだ。GW中の配信開始とあって、土俵での迫力あるシーンに惹かれて“一気見”してしまった視聴者も多かったのではないか。

ストーリーだけでなく、騒動で表舞台から消えていたピエール瀧や、近年は海外作品を主戦場にしていた忽那汐里が出演するなど、豪華な出演者にも注目が集まっている。（以下、ネタバレを含みます。ご注意ください）

相撲がテーマとあって、稽古シーンの登場人物は巨漢ばかり。そんな男くさい画面に華を添えるのが、部屋の女将さんである花役を演じる女優の小雪だ。映画評論家の秋本鉄次氏が語る。

「相撲部屋という上下関係の厳しい男社会のなかで、小雪演じる女将さんの花はどんな時も柔和な表情を崩さず、弟子たちの“良きお母さん”という母性を感じさせました。一方、着物姿で断髪式を見守るシーンでは凜とした美しい佇まいを見せていた。まさに部屋の女将にピッタリのキャスティングだったと思います。

また、久しぶりの出演となった忽那汐里が、海外経験のある自己主張の強い新聞記者という役を演じていますが、彼女も作品の良いアクセントになっている。相撲界の古いしきたりなどを“時代遅れ”とズバッと指摘することで、いいリズムを生み出しているように感じました」

小雪が急に電話をかけた

作中では八百長や先輩力士による暴力、理事長の椅子をめぐる攻防など現実の相撲界で起きた騒動などを連想させるようなシーンが散りばめられているが、多くの視聴者を驚かせたのは物語終盤で小雪がある人物に電話をかけるシーンだ。映画やドラマに詳しいライター・小政りょう氏が語る。

「角界のプリンス・龍貴（佳久創）が所属する『龍谷部屋』の龍谷親方（岸谷五朗）は、『貴』という四股名と鋭い目つきなど貴乃花親方を連想させます。驚いたのが、花が主人公を助けるため親方に電話をして助けを請うシーン。昔、男女関係があったが引き裂かれ、花が身を退いた過去が明かされ、『宮沢りえと貴乃花みたい』と話題になった。かなり唐突なシーンだったので、宮沢さんとの婚約解消のゴシップをモデルにしたのではないかという意見も出ているようです」

力士を演じる役者たちの肉体改造や稽古など、役作りだけで1年近い時間を費やしたという超大作。迫力ある土俵のシーンとともに、往年の相撲ファンは物語の端々に隠された“オマージュ”を楽しむのも一興かもしれない。

※週刊ポスト2023年5月26日号

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