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高樹澪、10年間苦められた病を手術で克服。女優業復帰、再婚…心に響いた母の言葉「もう無理はしなくていいよ」
1980年代に艶やかなロングヘアとエクボが印象的な美貌で人気を集め、多くの映画、テレビに出演し、歌手としても活躍してきた高樹澪さん。
1997年から顔面の痙攣に悩まされ、2004年に芸能活動を休業することに。2006年、片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)と判明。頭部を開き、接触している血管と顔面神経を剥離させるという5時間に及ぶ手術を経て克服。
2009年、芸能界に復帰。『ビブリア古書堂の事件手帖』(フジテレビ系)、映画『誘惑は嵐の夜に』(いまおかしんじ監督)、舞台『桂由美物語』などに出演。2023年6月23日(金)に映画『アトのセカイ』(天野裕充監督)が公開される。
デビュー当時(事務所提供)
◆女優休業中はたくさんのアルバイトを経験
2004年、芸能活動を休止した高樹さんは、携帯電話を解約、家も引っ越し、ネックレスなどの貴金属もすべて処分。さまざまなアルバイトをしていたという。
「私は転んでもタダでは起きないというか。せっかく大切な仕事を辞めたんだから。どうせならやりたくてもできなかった仕事をこの機会に経験してみようと思い、それぞれの仕事の期間は短いんですけど、ラーメン屋さんの厨房、交通警備員、パチンコ屋さん、アロマ関係とか、結構いろいろやりました。
ラーメン屋さんは、抱えきれないような大きなズンドウ(鍋)を運ぶのなんて無理じゃないですか。熱湯が入っているし、これは無理だなあと思ってすぐに辞めてしまいました。
パチンコ屋さんは、『目押し』ができるようになったら辞めようと思っていたんですね。目押しというのは、スロットでダーッと回っているのをお客さんに言われたら数字を揃えるんです。
できない人もいるんですけど、そのお店ではお客さんに言われたら、1回だけは揃えてあげていいことになっていたんです。それで2カ月くらいしたらできるようになったんですけど、1回やってみたら、なんとなく興味が薄れてしまって、その後すぐに辞めてしまいました(笑)」
−マスクなどをしていても高樹さんだとすぐにバレるのでは?−
「声があまり変わらないのでわかられますよね(笑)。でもおもしろいんです。私は、観察することがすごく好きで、電車に乗るのも好きですし、そういう日常的なところでわかられた後のそういう方たちの反応に元気をもらえたりもします。
アロマは勉強したいと思っていて、『アロマの勉強ができる』と書いてあったので行ったんですけど。実際にはアロマの奥深さに『私には無理だ』と思って辞めてしまいました(笑)」
2006年、成功率は70パーセントで30パーセントは命の危険もあるという難しい手術を受けた高樹さん。心配された後遺症もまったくなく、手術後もアルバイトをしたりしていたが、からだが回復するにつれ、女優業への思いが募っていったという。
「顔の痙攣が止まらなくて女優業は無理だと思っていたのに、それがなくなったら変わりますよね。看護師さんや周りの人も『高樹澪さんという人をもう一度ちゃんとテレビの画面で見たいので、戻ったら?』って言ってくれて。
でも、実際には、この業界が甘いものではないことを知っていますし、戻れるかなあって…。社長に『辞めます』と一方的に告げてから5年が経っていましたけど、事務所のホームページを見ると、私の写真とプロフィルがまだ残っていたんですよね。
それで社長に連絡したら、とりあえず会って話をしましょうということになって。温かく迎えてくれて、何とかもう一度、再デビューじゃないですけど、そういうような道をつけることはできないのか相談してくださって。それでまた女優としてお仕事をすることができるようになったんです」
◆バラエティ番組で闘病を明かすことに
2009年、バラエティ番組で闘病のことが明かされ、衝撃を与えた。
「テレビの反響は大きかったです。私が出た途端に5パーセント視聴率が上がりましたって言われて。ちょうどLINEブログをやっていたんですけど、それまでは閲覧数が1日300件くらいだったのが、いきなり15万件に跳ね上がって。テレビってすごいなあって思いました(笑)。
それで1週間ぐらいずっとアクセス1位だったんですね。病気に関するものが多かったんですけど、事務所にもいろいろ問い合わせがあって、だいたいのバラエティ番組には出させていただきました」
2016年には、映画『誘惑は嵐の夜に』に主演。この映画は、雷が落ちたことが原因で、専業主婦の母と恋に悩む娘の心とからだが入れ替わってしまったことから巻き起こる騒動を描いたもの。高樹さんは、入れ替わった娘のからだを使って二度目の青春を謳歌しようとする母・佐和子役を演じた。
「入れ替わった娘のからだを使って好きな人と関係を持ってしまって(笑)。『娘はこんな男と?』って。それはそれで、結構身につまされる話ですよね(笑)。
あの映画は、韓国に送り出そうとしていたらしいんですけど、結局、韓国の人は、あんな年寄りのおばさんはいらないみたいな感じだったみたいで(笑)。
でも、私はあのとき、自分のからだを見ているときに、『ああ、年をとっている人のからだっておもしろいんだなあ。意外といいじゃない』って思ったんですよ。若い人のからだはそれはそれでいいけど、年齢を重ねた人間のからだって、それなりに良いなあと思いました」
◆舞台本番で本当の結婚式を挙げることに
私生活では、2013年に元IT企業の取締役の男性と再婚。婚姻届を提出したが、挙式は行っていなかった。2016年、高樹さんが出演していた舞台『桂由美物語』(日本橋三井ホール)の中で、シビルウエディング(人前結婚式)という本当の結婚式を挙げることに。
「舞台公演が4日間で6公演あったんですけど、毎回1組、合計6組のカップルを招待して、実際に舞台で結婚式を挙げるということになったので、(桂由美)先生に『結婚式を挙げてないんです』って言ったら、『いいわよ』と言っていただきました(笑)」
−実際にされていかがでした?−
「感動しました。人前結婚式、お客さんが700人くらいいらっしゃったんですけど、すごいなあって思いました。一番冷静だったのが主人だったんです。あのとき(元読売新聞コメンテーターの)橋本五郎さんが司式者(進行役)をやってくださったんですけど、主人がリハーサルのときに一瞬ちょっと緊張した顔をしたんです。
それで『あっ、そうだ。この人素人さんだしなぁ〜』って思って、もう一度主人を見たら、すごく冷静に『そこ、ちょっと最初と違います』なんてみんなに言っているんです(笑)。芸能界とはまったく関係ない一般の人なんですけど、変わった人です、本当に(笑)」
−とても良いご関係のようですね−
「それは、本当に。うまいんですよ、いろんなことが。酔っ払ってグデングデンになって帰ってきて玄関で倒れていても、私はそのまま放っておくんです。
そうするとしばらくして遠くから『ゆかちゃん(本名)、ゆかちゃん、倒れちゃいました』なんて言っているから怒るより先につい笑ってしまうんです(笑)。今は本当に出会えて良かったと思っています」
−長年苦しんだ病気の後遺症もなく、ご結婚生活も楽しそうで−
「そうですね。前の結婚生活が12年間ぐらいあって、ちょうど終わった頃に出会っているので、すごいタイミングだなと思います。
でも、53歳になっていましたし、なかなか結婚しにくいですよね。とくに一度離婚も経験していますし。そういうときに主人も何を思ったのか、急に、後ろからご先祖さまに囁かれたらしくて、『結婚してみる?』って。つい言ってしまったようです(笑)。
それがちょうど10年前です。よく『生きているだけで丸儲け』と言われていますが、このときがそんな感じのまさかのサプライズでした(笑)」
2023SEIGI
※映画『アトのセカイ』
2023年6月23日(金)より池袋シネマ・ロサにて1週間限定ロードショー(ほか全国順次公開)
配給:グランピクス
監督:天野裕充
出演:土田卓弥石崎なつみ永嶋柊吾三浦和也川添野愛高樹澪
◆「無理をしなくていいよ」と言われ…
2023年3月には、映画『宮古島物語ふたたヴィラ』(上西雄大監督)が公開された。この映画は、宮古島を舞台に、そこに集う人々の絆と再生を描いたもの。高樹さんは地元でお店を営んでいるママを演じた。
−結構早口でしたし、方言が大変だったのでは−
「多分早口で言ったらごまかせると思ったんじゃないでしょうか(笑)。教えてくださる方に宮古島の方がいなくて、みんな沖縄本島か石垣島の方で、『方言がみんな違うんですよ』って言われていたので、東京寄りの方言ということになったんです。私は方言より歌のほうが難しかったです(笑)」
−宮古島ロケで家を留守にすることも多かったと思いますが、ご主人は何かおっしゃっていました?−
「いいえ。それは逆にいいみたいです。リラックスするみたいです。もともと1人でいたい方なので。本当にビチビチに仕事が忙しくなったらわからないですけど」
6月23日(金)には、映画『アトのセカイ』が公開される。この映画は、高校時代に仲良しだった5人が、高校卒業から10年後、恩師の死をきっかけにそのうちの4人が久しぶりに再会。それぞれの内に秘めていた思いが吹き出ししていく…という展開。謎のウイルスの蔓延などコロナ禍の現代とオーバーラップするところも。高樹さんは、主人公の親友の母親役を演じている。
−出演されることになったきっかけは?−
「前に旅番組で天野(裕充)監督とお会いしていて、そのときもちょっと不思議なことがあったんです。私はもともとUFOの話もよくしていたんですけど、撮影で太宰府天満宮の祝詞をあげるところに上がって行ったとき、収録用に付けていたマイクが聞こえなくなっちゃったんです。ワイヤレスマイクが切れちゃって。
それで、おりて来たら、またマイクがオンになったので、録音の方が『こういうことは僕初めてです。壊れているんだったらわかるんですけど、上に行った途端に聞こえなくなって、おりたら聞こえるなんて、こんなことはないです』って。実は太宰府天満宮って、菅原道真のお墓でもあるんですよね。
私が上がったときに、すごく暖かかったんです。まるで暖房がいっぱい入っている感じだと思ったときに音が消えていたんです。それで監督に『UFOもいっぱいくるぐらいだからそういう不思議なことはありますよ』という話をしたんですけど、そういうことが監督の印象に残っていたのかどうか(笑)。
今回、当時のことを思い起こした監督が、キャスティングしてくださったみたいです。そうしたら、たまたまプロデューサーも、前に別の旅番組でお仕事をさせていただいたことがある方だったんですけど」
−撮影はいかがでした?−
「私は1シーンでしたけど、すごく若い方ばかりで新鮮でした。20代、30代の方たちは私のことを知らないと思いますし、もしかしたら歌を知っているかなという感じで。ほとんど会話ができない世代の若い人たちばかりだったんですけど、すごく気を遣っていただいたりして、いい空気だなあって思いました」
−主人公の地元の親友のお母さん役でいい雰囲気でしたね−
「主人公が母親と疎遠になっていることを気にかけているんですけど、今の時代はそういう親子関係ってありがちなんだろうなって思いました」
−主人公の親子関係も、前カノとの関係も状況説明がなく、謎めいていましたね−
「そうですね。主役の男の子はミステリアスじゃなきゃいけなかったので、あまり説明はしないんだなという認識はありました」
−コロナ禍を連想させる謎のウイルスが蔓延するというシチュエーションもあって−
「そうですよね。現実と重なりますよね。とりあえず被害をあまり拡大させないためにという感じで。この『アトのセカイ』という作品は、日常のなかに潜んでいるミステリーだと思うんです。
今の時代はとくにそういうのが多いので、コロナに限らず、もしかするとコロナじゃないものも出てくるのかもしれないですよね。ちょっとした危機感をもって毎日を生きていきたいですね」
−映画公開の翌日にはライブも−
「はい。6月24日(土)に三重県で、事務所の後輩とふたりでゲストをお招きしてやらせていただきます。歌はコロナ禍でずっと歌っていなかったので、ちょっと不安なんですけど、歌とトークで楽しいステージができたらと思っています」
−お元気になられて本当に良かったですね−
「ありがとうございます。つい先日うちの母に会ったら、もう93歳だから欲がなくなっていると思うんですけど、『あなたはもう無理はしなくていいよ。すごい頑張って無理をしていたのをよく知っているから。ダンナさんと幸せに生きなさい』って言われたんです。母から心底、安心させて貰える言葉をもらいました(笑)。
ただ、母が劇団に入れてくれたことから始まっているので、なんとなく母に安心してもらえるようなお芝居をしていきたいなというのはあったんです。その母が無理をしなくていいよって言ってくれた時点で、何かまた一つ違ったものが生まれて、次に行けるなあという感じになりました。舞台、テレビ、映画、できるものはこれからもやっていきたいと思っています」
昨年12月、マネジャー志望だった高樹さんの才能を見出して女優業へと導き、片側顔面痙攣で5年間事務所を離れて休業している間も復帰を信じて待ち続けていた社長が急逝。
「私にとって大人になってから40年以上の間、ずっと親のようでもあり親友のようでもあった、故・成田忠幸(前)社長には感謝しかないです。
私の芸名『高樹澪』の名付け親でもありますし。精神的に大変なときにも何度となく相談することのできる数少ない方でした。昨年の暮れに突然、急逝してしまい、いずれはそういうタイミングを迎えるという認識はありましたが、やはり常に『高樹澪』の基本を考えてくれていた知恵袋みたいな方でしたから…。
当然、事務所のスタッフ共々私も『さて、どうしたものか…』と、まさに何十年ぶりかの“はじめの一歩”の心境になりました。きっと今でもどこかで私たちが何をしているのか落ち着かずにヤキモキしているかもしれません(笑)。
でも、突然の急逝こそが成田社長の遺言だった気もします。『そろそろ自分たちで自分のことは考えなさい』と言われたようで。それから今の事務所に変わるまでの時間に今までずっと気づけなかったことにも気づける機会ができて。
母の言葉もそうですが、成田社長のことも一つのまた違う生き直しを示唆して貰えた気がしています。今の私たちにしかできないことをコツコツと地道にやって行こうと、みんなで決めたので頑張っていきたいと思っています」
特徴的な声とエクボが印象的。ほがらかで明るい笑顔に充実した日々が感じられる。映画の公開に加え、ライブの稽古…多忙な毎日が続く。(津島令子)
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