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世に出るまで14年…超苦労人・いとうあさこ人気の秘密を芸人が分析

世に出るまで14年…超苦労人・いとうあさこ人気の秘密を芸人が分析

“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は、すでに“馬鹿売れ”しているピン芸人・いとうあさこの人気の秘密に迫ってみた――。

いとうあさこさんは本当にすごい女芸人で、尊敬しています。いまはテレビやラジオで活躍していますが、もともとは「ネギねこ調査隊」という女性コンビでコントをされておりました。

僕は当時、人力舎の養成所・スクールJCA(8期生)に通っていました。そのころにあさこさんが人力舎の事務所ライブ「バカ爆走」にゲスト出演しているところを拝見したことがあります。

1997年から2003年までコンビで活動し、事務所ライブのゲストやテレビ番組などにも出演。一見順調でしたが、解散してしまいます。その理由は当時の人気番組「進ぬ!電波少年」(日本テレビ)の企画「電波少年的15少女漂流記」に参加したこと。無人島でサバイバル生活を送るという企画だったため、コンビの活動ができずに解散してしまいました。

それからピン芸人として活動を始めたのですが、コンビで評価されていた芸人が、ピンになっても評価されるのは生半可なことではない。舞台でネタをやるにしても、コンビとピンでは求められるものが全く変わってくる。しかも芸歴はかなり長いので「このぐらいはできるだろう」とハードルは高くなる。コンビで呼ばれていたライブもピンだと呼ばれなくなることもあり、簡単なことではないのです。

でもあさこさんはあきらめず、ピン芸人としてネタをし続けた。しかもつらそうなところを見せないのが魅力です。当時は女性ピン芸人の自虐ネタをやる人があまりいなかったこともあり、徐々に人気が出てきました。

それでもコンビを解散したのが33歳ぐらい。あさこさんが世に知られるようになったのは「浅倉南、38歳!」という、キャラと実年齢をいうフレーズだったから、5年くらいは不遇の時代があったことになります。

実際にはその前にコンビで6年間やっていたので、世に出るまで11年近くもかかっている。さらに言うと芸能界を目指したのは1994年。喜劇女優に憧れ演劇専門学校に入学したので、そこからカウントすると約14年。相当の苦労人です。苦労を知っているぶん、数多い芸人の中でも特に腰が低く見えてしまうのは僕だけではないでしょう。

あさこさんのテレビでの振る舞いは、いつも勉強になります。自然体でしゃべるのがうまい。トークがうまいというイメージはあまりないかもしれませんが、技術的にすごいです。トークがうまい人ほど、うまく見えないような技術を持っていることもあるんです。

自虐ネタを始めたきっかけは、最初は毒舌に挑戦しようとしたけどウケないから「自分をくさすか」となったそうです。浅倉南のフレーズでブレークをしたんですが、一発屋の印象が全くないのもすごい。要するに停滞していない、売れ続けているということです。

あさこさんを見続けて思うことは、どの番組に出ても笑顔が絶えない。人よりも明らかに笑顔が多いうえ、笑顔になる初速というのか?笑うスピードが他の出演者よりも速い。最初に笑ってくれるので、バラエティー番組ではカメラに映りやすいこともあるのかもしれません。

もちろん笑顔だけではなく、先ほど言ったようにトークのうまさもあります。あさこさんは長くしゃべっても、内容が細かく丁寧なぶん話す時間が長く、しっかりと伝わる時間に使っているのでムダに感じないのです。長い時間しゃべると、悪目立ちする場合もありますが、あさこさんの場合、しゃべっている相手の話の筋からそれず、相手の話題に乗っかったうえで長尺トークができるので、悪目立ちすることがないのです。

トーク力と笑顔という武器により、同じ数の番組に出演したとしても、テレビに映っている時間が長くなるのではないでしょうか。そのうえ腰も低く謙虚だし、「なんでもやりますよ!」というスピリットも感じる。番組側がいつまでも起用したくなるのは当然のことだと思います。これからもずっとテレビに出続ける女芸人なのは間違いないでしょう。

☆しんどう・たつみ1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THEMANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THEW」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。

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