5月19日、テレビ番組の司会などマルチに活躍した元タレントの上岡龍太郎さん（本名・小林龍太郎）が亡くなった。享年81歳、死因は肺がんと間質性肺炎だった。2000年に芸能界を引退後、公の場に姿を見せることのなかった上岡さんの「晩年」とは。

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「（上岡さんは）引退後はゴルフをしたり、芝居を観に行ったりと、悠々自適の生活を送っていました。ここ数年は直接のやり取りはありませんでしたが、“体調を崩している”などといった話も聞いていなかった。だから突然の訃報に驚くばかりで……」

沈痛な声でこう話すのは、上岡さんと生前、親交のあったタレントの大村崑氏（91）だ。

人気絶頂時の上岡さん

上岡さんは1960年、横山ノック氏（故人）らと漫才グループ「漫画トリオ」を結成し、“横山パンチ”を名乗って「しゃべくり漫才」のスタイルを確立。人気絶頂だった68年に解散するも、その後はテレビやラジオ番組の司会者として不動の人気を得た。

「テレビなどではあけすけなトークで知られましたが、プライベートでは紳士そのものでした。相手が目上や年下、子供、女性を問わず、話すときはいつも優しい口調だった。実際、僕は彼（上岡さん）が怒る姿を一度も見たことがありません」（大村氏）

「何の未練もない」

「探偵！ナイトスクープ」の初代局長を務めたほか、「上岡龍太郎にはだまされないぞ！」や「鶴瓶上岡パペポTV」（笑福亭鶴瓶氏とのダブルMC）など多くの人気番組を世に送り出したが、2000年に「芸能生活40周年で隠居する」と宣言して芸能界を突如引退。世間をアッと驚かせた。

「上岡さんは“僕の芸は20世紀で終わり”と言って、引退してからは本当に表舞台に立つことはなかった。“東京嫌い”を公言しながら、その人気はすでに全国区になっていたため翻意をうながす人も多かったが、意に介さなかった。己の信念を貫いた見事な引き際を指して“山口百恵さん以来の電撃引退”などと囁かれました」（関西ローカル局の元プロデューサ―）

引退後も「（芸能界には）何の未練もない」と話していたという上岡さんは、自身のことを「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流」と評したこともあった。

「金がいるのは、子育てと見栄のため」や「若い時の苦労は買ってでもしろと言いますが、それは違います。苦労なんか買わんでもどんどん向こうからやってきます」など、軽妙ながら本質をついた言葉は「上岡語録」とも呼ばれ、いまも色褪せることはない。

「矛盾の塊のような人」

大村氏が振り返る。

「どんなに売れても偉ぶるところがなく、“兄さん”“兄さん”と私のことを慕ってくれたのは嬉しくもあり、良い思い出です。10歳年下でしたから、私からすると可愛げのある“弟”のような存在でした。けれど、いまもまだ（亡くなった）実感は湧いてこず、ただ“つらい”という思いしかありません」

家族はメディアに宛てたコメントで、上岡さんについて〈矛盾の塊のような人でした。（中略）弱みを見せず格好つけて口先三寸……。運と縁に恵まれて勝ち逃げできた幸せな人生〉だったと表現した。

捉えどころがない反面、礼節を知り、人生の機微にも通じた上岡さんを偲ぶ声はいまも絶えない。

デイリー新潮編集部

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