アイドルの肩書をかなぐり捨て、「楽器を持たないパンクバンド」として体当たりでロックの爆音に挑んできた6人組、BiSH。過激なプロモーション活動に賛否の声が上がることも多かったが、最終的に彼女たちは紅白歌合戦出場を果たすまでの人気と知名度を獲得した。6月末、夢だった東京ドーム公演を最後に解散することが発表されているが、果たしてこれは壮大なネタなのか、本気の青春完結ストーリーなのか。
◆「後悔は何もない悔いのない6月29日を迎えたい」

――まず、解散直前となる今の気持ちを教えてください。

アイナ・ジ・エンド：BiSHは今までの人生の中で、私にとって一番命を削れる日々だったなと思います。失敗はたくさんしてきたけど、後悔は何もない、っていうのが正直な気持ちです。このまま突っ走って、悔いのない6月29日を迎えたいです。

アユニ・D：すべてのことが当たり前じゃないって、解散をきっかけにようやく気がついたんですね。今は毎日が、「この6人でやる最後なんだな」と実感する日々ですね。

リンリン：うん。メンバーと一緒の時間や、楽屋での会話などたわいのない日常をずっと覚えていたいと思うようになりました。

モモコグミカンパニー：今までずっと駆け抜けてきたんです。明日も昨日も考えず、目の前のことだけをやってきた。でも最近は少し立ち止まって、後ろを振り返ったり。解散が決まってから日々を大切に過ごせてる気がします。いろいろ忘れないように、見逃さないように。

――「やっぱり続けたい！」と言い出す人はいませんでした？

リンリン：おばあちゃんになってもBiSHで激しいライブをするのは現実的に無理だと感じていたので。いつか来るな、とは思っていたんです。

セントチヒロ・チッチ：一度言ったことを曲げるのはBiSHらしくない。それくらい重い決断を、最終的には私たちで下しました。だから、決めたことに向かって進んでいくだけですね。

ハシヤスメ・アツコ：ただ、今もライブをしていると「BiSHに会えるのは今日がもう最後」っていう声が聞こえてきたり。解散発表前から一公演一公演を大事にしていましたけど、この清掃員の方々に会えなくなるんだっていうことを、今はより強く思うようになりました。

◆マリリン・マンソンから指導が始まった

――BiSHの清掃員たちは、生粋のアイドルオタクとは違う人たちが多かったです。

モモコ：やっぱりロックフェスに出たのは大きい経験だと思います。あと、私たちはほかのアイドルのようにサビ部分でメンバー全員揃って歌わない。“ソロ回し”がほぼで、6人の個性も声質もバラバラで。

チッチ：メジャーデビューのときにアイドルの言葉を捨てたんですよ。松隈ケンタさんの楽曲を背負っていく中で芽生えた反骨精神やBiSHらしさが、だんだん認められていったんでしょうね。「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトにハマったんだと思います。

アイナ：あとは松隈さんが作る楽曲は生粋のロックンロールだし、指導もマリリン・マンソンの動画を見せてもらうところから始まったり。最初からロックを叩き込んでいただいたので。見せかけのロックじゃない。

リンリン：BiSHはメンバーの作詞がよくあるんですね。いつも「恋愛の歌詞以外で考えてください」って指示があって。その経験も大きかった。

モモコ：うん。歌詞を書いてる＝等身大の自分でステージに立てる、というのもありました。ありのままをさらけ出す作業は何かひとつの覚悟を持つことにもなったのかな。

チッチ：プロデューサーの渡辺さんも私たちも、キラキラ光った人生を送ってきたわけじゃないので。もがいている中にひとつ光が見えて、そこに必死でしがみついていく。それがBiSHの根本、心の共通点だったと思っていて。等身大のメッセージも、私たちだからこそ伝わったのかなと思います。
1 2 次へ

• 
•