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自と他の境界線を引くように?近年の朝ドラヒロインが言わなくなった台詞

「ええんちゃいますか、逃げても。どうにもならんことって、ありますねん」

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10月2日からスタートした連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合)の主人公・スズ子(趣里)が言った、この台詞が耳に残る。

「戦後、『ブギの女王』として一世を風靡した笠置シヅ子をモデルに、福来スズ子の『歌と人生』を描く」――。概要のみ一聞すれば、大阪を舞台に、いわゆる“コテコテ”なノリで、太陽のようにパワフルなヒロインが痛快・豪快に人生を切り開いていく……というようなドラマを連想するかもしれない。しかし、この朝ドラは一味違うようだ。

人生には、どうにもならないことがある。それでも生きていかねばならない。この朝ドラは、“そっち”を描こうとしているのではないだろうか。スズ子は梅丸少女歌劇団(USK)の団員を経て、のちにスター歌手になっていくのだが、ステージという夢の世界と背中合わせの、「現実の苦味」も深く描いていくのではないかという予感がする。

自と他の境界線を引くように?近年の朝ドラヒロインが言わなくなった台詞
連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK公式サイトより)

一昔前の朝ドラヒロインなら…

冒頭で挙げた台詞は、USKでスズ子と同期の和希(片山友希)が、自分の才能に限界を感じて退団を申し出た第13話に登場する。一昔前、特に1990年代から2000年代初めあたりまでにしばしば見られた、いわゆる「朝ドラヒロイン然としたヒロイン」ならばこういう場面で、辞めたいと言い出した仲間の肩を掴んで揺さぶったりして、熱い言葉をかけ、「自分から逃げてるだけよ!」とかなんとか言って、何としても引き留めようとした……かもしれない。

しかし、『ブギウギ』のこのシーンで「自分から逃げてるだけ」と和希を引き留めたのは、スズ子の憧れの先輩・大和礼子(蒼井優)だった。スズ子は礼子に対して、「どうにもならんこと」があるのだと言い、和希の事情に寄り添った。

物語の主人公であるスズ子は、娘役トップスターの礼子や、和希の挫折の一因でもある有望株の秋山(伊原六花)と違って、「才能のない側」の人間として描かれている。だからこそ、和希を無理に引き留めるのではなく、苦しみを分かち合おうとする。そして、それでも自分はもがきながら、歌と踊りを続けるしかないのだと、泣いて叫ぶ。

このシーンには、スズ子の少女時代のエピソードが「前フリ」として効いている。第1話に溌剌と登場したスズ子(少女時代:澤井梨丘)は「元気で猪突猛進でおせっかい」という、一見「よくある朝ドラのヒロインらしい」キャラクターに思えた。

しかしスズ子が、幼なじみのタイ子(少女時代:清水胡桃)が想いを寄せる同級生男子に告白するよう仕向け、タイ子の気持ちも考えず「前向き」の押し売りをしようとすれば、母のツヤ(水川あさみ)がたしなめる。自分と他人は違う人間であり、人には人の気持ちがあり、それぞれの事情があり、人生があるのだと教える。それがこの朝ドラの「一味違う」ところだ。

「おせっかい」の成長

家が貧しい和希(少女時代:木村湖音)が昼休みに干し芋をかじっているのを見たスズ子は、ツヤに弁当を2つせがんで、和希にひとつあげようとする。しかしその行為が彼女のプライドを傷つけてしまった。そしてスズ子は、「またやってもうた」と反省する。未熟で不完全な主人公が、3歩進んで2歩下がりながら、少しずつ心の成長を遂げていく姿が描かれた。

スズ子は、映画の脚本を書いて何度応募しても採用されない父・梅吉(柳葉敏郎)の「続けること」の苦しみをずっと間近で見てきた。そして、「才能がないのに歌と踊りを続ける意味」を自問し続けた。

こうした段階を踏んでいるから、スズ子が、USKを辞めたいという和希の決断を受け止めるという流れがすんなりと入ってくる。「どうにもならんことって、ありますねん」という言葉に説得力がある。スズ子は相変わらず「おせっかい」ではあるけれど、他者の気持ちに耳を傾けることのできる「おせっかい」へと成長したのだと腑に落ちる。

「『自』と『他』の境界線」を引く

登場人物どうし、そして作者と登場人物の「自他の境界線」をきちんと引くこと。他者への敬意を忘れないこと。一方的な「考えの押し付け」ではなく、「対話」すること。「多様性を重んじる」という現代社会の命題に沿うならば、朝ドラの作劇においてこれらは必須要件と言える。ここをきちんと意識して作られた朝ドラは信頼できる。

ひとつ遡って、2023年前期の朝ドラ『らんまん』の“実質”ヒロイン・寿恵子(浜辺美波)はどうか。彼女も、「自他境界の線引き」と「対話」を重んじるヒロインだった。寿恵子は、植物学に生涯を捧げた夫の万太郎(神木隆之介)を「三歩下がって陰で支える」のではなく、常に能動的に行動して、夫の夢に“投資”し、共に「大冒険」を続けた。明治時代の物語設定でありながら、実に今日的な人物造形だ。

寿恵子は、借金取りと交渉するときや、仲居として働く料亭で「お偉方の客」が暴れるのをなだめようとするとき、待合茶屋を開業する際に地元の人々に“プレゼン”するとき、体当たりの「猪突猛進」ではなく、相手の言い分を理解しつつ、知恵と機転によって切り抜けた。

近年の朝ドラヒロインが言わない「ある台詞」

このように、朝ドラヒロインは、時代と共に変わってきている。現在、午後2時45分からNHK総合で再放送されている2002年前期の朝ドラ『さくら』を見ていると、なおさらそう感じる。そして筆者は、ある現象に気づいた。近年の朝ドラヒロインの口から、久しく「ある台詞」を聞いていない。かつて「朝ドラヒロインが言いがちな台詞No.1」と言っても過言ではなかった「そんなぁ〜!」という台詞だ。

「そんなぁ〜!」は主に、一昔前の朝ドラのヒロインがおせっかいをやいて、他者の人間関係をとりまとめようとしたり、自分の考えを力まかせに押し通そうとしたとき、他者から「No」を突きつけられた際に発生しがちだ。「そんなぁ〜!」には、ヒロインの「良かれと思ってやったのに、どうして?」という気持ちが現れている。当時の朝ドラは、ヒロインと他者との自他境界線が、もっと曖昧だった。

『さくら』第5週「昨日の敵は今日の友」を例に挙げてみる。ハワイ生まれの日系4世のヒロイン・さくら(高野志穂)が、英語教師として赴任中の岐阜県・飛騨高山で下宿先の嫁姑問題に口を挟み、仲を取り持とうとするというエピソード。この週でさくらは10回以上「そんなぁ〜!」を発動していた。

しかし、このタイプのヒロインは「No」を突きつけられても「そんなぁ〜!」と言うだけで、あまり深く考えない。幼なじみに次いで同期にも「要らぬおせっかい」をやいてしまい、落ち込んでいたスズ子のようには自省しない。

近年の朝ドラヒロインは「そんなぁ〜!」を言わない。それはつまり、むやみに人間関係をこじ開けようとせず、自他境界線をきちんと引いて行動しているのだとわかる。

『カムカム』『まんぷく』の場合

さらに振り返ってみると、『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)の安子(上白石萌音)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)からは「そんなぁ〜!」を聞いた覚えがない。『舞いあがれ!』(2022年後期)の舞(福原遥)も「航空学校編」ではややおせっかいに“キャラ変”したが、辛うじて言っていなかった気がする。『らんまん』の寿恵子は前述のとおり。そしてもちろん『ブギウギ』のスズ子からも聞いていない。

現在、朝7時15分からBSプレミアムで再放送中の『まんぷく』(2018年後期)の福子(安藤サクラ)は一度だけ「そんな……」と言っていた。しかしこれは「おせっかい発動時」ではなく、将来の夫・萬平(長谷川博己)が冤罪で憲兵に捕らえられたときに発した、「理不尽すぎる」という意味での「そんな」だったので例外とする。

「コミュニケーションの変化」というのも、重要なキーワードと言えそうだ。一昔前の朝ドラヒロインは、何にでも体当たりでぶつかって、人間関係の中で「おしくらまんじゅう」をしながら揉まれて学び、成長していった。対して近年の朝ドラヒロインは、距離感を大事にする。こんなところにも時代性を感じる。

時代ごとに異なるヒロイン像

朝ドラのヒロインが謎の“万能感”を発揮して、「どうにもならないこと」をどうにかしてしまう。そんな時代が、かつてあった。しかし最近の朝ドラは、「どうにもならないこと」は、「どうにもならないこと」として、ありのまま描く傾向にある。「どうにもならない」、ならば「どうするか」。現代を生きる視聴者には、そんな作劇がフィットしているのかもしれない。

最後に、本稿において「そんなぁ〜!」型ヒロインを否定する意図はないと明記しておきたい。時代ごとに求められるヒロイン像がそれぞれ異なる、ということだ。何事においても、歴史の積み重ねの先に、今日がある。

はたして、最新の朝ドラヒロイン・スズ子はこれから、どんな人間関係を構築し、どんな人生を歩むのだろうか。

(佐野華英)

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