2023年は、近年まれに見るテレビドラマ豊作の当たり年だったと思う。中でも、あまりにも素晴らしい最終話を見て、これは「最高傑作だ！」と叫ばずにはいられなかった作品がある。

奈緒が主演した『あなたがしてくれなくても』（フジテレビ）だ。2組の夫婦が織りなす不倫ドラマが描かれる本作だが、奈緒の相手役だった岩田剛典が不思議と純愛色に染めていた。

最終話（他に第1話と第2話）の演出を担当したのが、岩田の代表作『シャーロック』（フジテレビ、2019年）の西谷弘監督だったことも大きい。

そんな『あなたがしてくれなくても』のBlu-ray＆DVDBOXが、2023年11月22日（水）に発売された。

「イケメンとドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、本作最大の功労者のひとりである岩田剛典について力を込めて解説する。

◆『あなたがしてくれなくても』一択

2023年は、どのクールも特筆すべきテレビドラマが目白押しだった。早くも総決算気分でベスト作品をあげるなら、筆者は『あなたがしてくれなくても』一択となる。理由は大きくふたつある。

ひとつ目は、フジテレビ木曜日10時枠の作品としてストーリーの運びと主人公たちの心情変化がよく噛み合っていたこと。これは現在放送中の『いちばんすきな花』にも受け継がれ、質が高い同放送枠のブランド力を印象付ける。

そしてふたつ目は、筆者の興味と独善により、岩田剛典その人となる。岩田が演じた新名誠というキャラクターの魅力を語ることが、即ドラマ全体の素晴らしさを伝えることになるからだ。

ドラマ内でもSNS上でも、「新名さん」、あるいは「ニーニャ様」と親しまれていたことからも、キャラ自体の人気ぶりが伺えた。

◆“副”が付く肩書を持つ夫婦関係

本作に登場する主要人物は、それぞれがセックスレスに悩む4人。主演の奈緒演じる吉野みちとその夫・陽一（永山瑛太）、みちが働く会社の副部長にして不倫相手の新名、そしてその妻・楓（田中みな実）。

みちと新名の他、カフェ店長の陽一は、店員の三島結衣花（さとうほなみ）と不倫関係になる。

ただひとり、楓だけが不純さからは無縁の生活。全編を通じて潔白を貫く。人気女性誌の副編集長の激務で不倫どころではなく、家庭をかえりみない妻との日々に夫の方が虚しさを募らせるのだ。

お互い“副”が付く肩書を持つ夫婦ながら、仕事がメインである楓に対して新名はあくまで仕事はサブ、プライベートをメインに考えたい家庭人だ。そのため彼は上司としてノー残業デーを推奨し、基本的に退勤時間を守る。家では主夫として懸命に振る舞う。

◆岩田剛典による料理場面の重要性

新名が仕事以上に熱を込め丹念に仕上げるのが料理だ。毎話に必ずと言っていいほど新名による料理場面が描かれる。もはやレギュラー化する恒例ぶりに筆者は、“新名クッキング”と名付けたくなってしまった。

初料理場面が第2話。メニューは、妻の健康を気遣ったヘルシー酢豚だった。豚肉を湯通ししてオイルカット。パプリカの照り具合が優しい味わいを感じさせる。

手料理を食べてくれたら、レスも解消かと思うが、仕事で帰りが遅い楓は食べてくれない。新名は作ったものをすぐにタッパーにつめてしまう。

調理から即保存へ。冷蔵庫で急速に冷える惣菜は、新名夫婦の関係性そのもの。そして冷蔵庫を開ける瞬間、冷蔵庫内から新名の悲しげな表情が捉えられ、岩田特有の切ない表情を四角いフレーム内で輝かせる。

この表情、冷蔵庫をのぞく可愛らしい妖精に見えることから、名付けて“冷蔵庫の妖精さん”。しかも岩田の瞳が潤む“魂の潤み典”。筆者にとって新名誠とは、つまり岩田剛典に対する命名の連打とラッシュでもあった。
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