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絶体絶命の場面での神対応…イモトアヤコが「一生ついていこうと心に誓った」女性芸人とは?

〈「ただ断捨離をするとかそういうことではなく…」イモトアヤコが憧れる「ホンモノの丁寧な暮らし」〉から続く

鳥取より上京後、芸能界で活躍の場を広げ、お茶の間の人気を博しているタレントのイモトアヤコさん。

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ここでは、このたび文庫化された初エッセイ集『棚からつぶ貝』(文春文庫)を一部抜粋して紹介します。イモトさんが「一生ついていこうと心に誓った」女性芸人とは?(全2回の2回目/最初から読む)

絶体絶命の場面での神対応…イモトアヤコが「一生ついていこうと心に誓った」女性芸人とは?
©文藝春秋

◆◆◆

初めてプライベートで親交を持った芸能人

仕事を始めて早10年。それほど数は多くないものの、いわゆる芸能人と呼ばれる方と交流する機会が増えた。しかし最初の頃は、親しい芸能人の方は皆無であった。

そりゃそうだ、今よりも海外で過ごす時間が長く、ほぼ3分の2は異国、しかも僻地の私にとって、日本の芸能界の方など遠すぎる存在だ。正直まだアマゾンのターザンの方が近い存在であった。

そんな特殊すぎる私の芸能生活において、初めてプライベートで親交を持ったのがいとうあさこさんである。前々からなんとなく名前の雰囲気、顔の雰囲気に親近感を抱き、将来の自分の姿を重ねていた。そう思うのは私だけではないらしく、あさこさんも、私が24時間マラソンを走った後、知らないおば様によく「マラソンお疲れ様でした」と声をかけられたと言っていた。

そんなあさこさんと、初めて一緒にロケをしてすぐさま意気投合。連絡先を交換し、ご飯に行きましたとさ。

めでたしめでたし、とはならなかった。

連絡先を交換したのまでは良かったが、なんせ初めての芸能人の先輩。

自分からどうお誘いしてよいか分からず、23歳のイモトはモジモジしていた。

初めてのサシ飲みは…

そうこうしているうちになんと、とあるドッキリ番組で私があさこさんに仕掛けることになった。私がお酒好きのあさこさんを誘いサシで飲み、あさこさんからおもしろ名言を聞き出すというもの。要は騙すのだ。連絡先は知っているが、まだ一度もプライベートでは飲んだことのない先輩を騙すのだ。すごく良心がとがめた。なんでもっと早く誘っておかなかったんだろうと後悔の念に駆られた。

一発目がドッキリだなんて……。しかし仕事は仕事。仕掛け人としてはきっちり役目を果たさねばとあさこさんに連絡した。

「あさこさん‼もし良ければ今度一緒に飲みませんか?」

「いいね、もちろんだよ」

「お店はこちらで手配します‼」

焦りからなのか「!」を多用したのを覚えている。

無事に日程やお店も決まり(番組のスタッフさんが全てやってくれました)いざ当日。

収録中に起きたハプニング

いかにもドッキリ番組で出てきそうな個室の部屋……。

いたる所に隠されている小型カメラにマイク。脂汗ダラダラの後輩。そんな異常すぎる状況にあさこさんが気付くのも時間の問題ではなかろうか。

ただどんなに怪しかろうと、大好きなあさこさんとの初めての食事に変わりはない。そうだ、たまたまカメラが回っているだけだと考え、あさこさんとの時間を盛大に楽しもうではないか。そう思うと一気に気持ちが楽になり、結果、聞きたいことを聞き、伝えたいことを言い、笑いあった。

サシ飲みも終盤。

ほぼドッキリの仕掛け人であることも忘れかけていたその時だった。

いきなり、壁に仕込んであったマイクの送信機が我々のテーブルに落ちてきたのだ。紛れもないマイクの形。あさこさんも仕事の現場で幾度となく見ていたマイク。あまりにも突然のことに、仕掛け人である私はただただ慌てふためきアワワ状態。完全にばれた。私だけでなく、裏でモニタリングしているスタッフさんも終わったと思ってるであろうその時。

いとうあさこのスゴイ対応

あさこさんが平然とした様子でピンポンを押し、来た店員さんに「ここの部分が外れましたので直してもらえませんか」と言った。

あまりにもそれが自然だったため、その後何事もなかったかのように話題を戻し、話を続けた。

まさに神対応。

この瞬間、あたしゃこの方に一生ついていこうと心に誓ったのだ。しかもさらにあさこさんが凄いのは、未だにあれはお店の何かが外れたんだと言ってくれるところ。こういう方が本当の大人なんだなと思う。

これがあさこさんと私の初めてのご飯。後日の収録でドッキリだったと知ったあさこさん。あさこさんは冗談で「仕事だったから誘ったんかい」と笑い飛ばしてくれ、それ以来、仕事ではなく本当のプライベートでお世話になっている。

愛おしいと思った姿

私の誕生日当日、3年連続で一緒に過ごしてくれるあさこさん。ペーパードライバーの私の練習の相手を命がけでしてくれるあさこさん。山登りロケの前後、素敵なお店に連れて行ってくれるあさこさん。汗ダラダラでお台場に一緒にポケモンGOをしに行ってくれるあさこさん。ポケモンのことをバケモンと言ってしまうあさこさん。すべてが愛おしいあさこさん。

中でも私が一番あさこさんのことを愛おしく感じたのは、以前『イッテQ!』のロケで冬のフィンランドに行った時のこと。その日、あさこさんは背中に火をつけられて自転車に乗り、そのまま海に飛びこむというロケを控えていた。それを待っているロケバス車内。

やけどしないようにビシャビシャのパーカとウェットスーツに身を包んだあさこさんが、車内の後部座席でシューシューと息を吐きながら、戦いに向け精神を統一していた。

その姿は、まさに日の丸を背負った侍の如し。しかし私は頭の中で「この人こんなに精神統一してるけど、結果、今から背中に火をつけられて自転車で極寒の海に飛びこむんだよな」と思ったらたまらなく可笑しく、たまらなく愛おしく感じた。

わたしはそんなあさこさんをたまらなく大好きで尊敬しております。

P.S.これを読んだあさこさん、きっと「おめぇまたそうやって私のこと小馬鹿にしてんだろう」と言ってくれるんだろうな。

後日談

先日ついに50歳を迎えられたあさこさん。

年々身体を張る機会が増えている気がします。腰や膝が痛くても、絶対に痛いと言わないあさこさん。我慢強さは良いところでもありますが、あさこっ子からするととても心配です。そして2019年の夏、本当に24時間マラソンお疲れ様でした。

(イモトアヤコ/文春文庫)

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