美しいかどうかより、楽しいかどうか。「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」（TBS系）での社交ダンス企画を見て、その思いを強くした。浅田舞さんとキンタロー。さんのダンスの対比だけではない。代々のキャスティングのすごさにうなったのである。

【写真を見る】セクシーな衣装で抜群のスタイルを披露する浅田舞

社交ダンスを始めて4年、初の世界選手権で34位という成績を収めた浅田さんだが、スポットが当たったのは良い面ばかりではない。2017年の世界選手権7位、2018年の全日本選手権優勝を成し遂げた猛者・キンタロー。さんの、周りを笑顔にするエネルギーに満ちた踊りぶりと比べるとその差は歴然。

浅田さんの手足の長さを生かした華のあるポージングなどは素晴らしいが、トータルで見るとキンタロー。さん＆ロペスさんの迫力には一歩及ばない。パートナーであるオチョこと俳優の進藤学さんからは練習不足を指摘され、その言葉を裏付けるかのように、浅田さんの「直前大会のドタキャン」「サボり癖」が報じられると、ネット上の批判は一気に浅田さんに向いた。

浅田舞

見た目は華やかで本番にも強いが、練習に身が入っていない（と思われる）女性が炎上。この流れに既視感があるなと思ったら、元乃木坂46の市來玲奈さん（現・日本テレビアナウンサー）が同企画を降板した時と一緒だった。

一方的に企画からの離脱を告げた市來さんの態度には、当時ものすごい反感が集まったのを覚えている。パートナーを務めていた男性アナウンサーが、置いてけぼりにされたような表情で見送る姿もまた同情を呼んだ。

浅田さんと市來さんの共通点は、「憧れの舞台で1番になれなかった女性たち」ということだ。浅田さんはフィギュアでは妹・真央さんの陰に隠れ、市來さんもアイドル時代は白石麻衣さんらほどのインパクトは残せなかった。

国民的人気を誇る五輪メダリストや美少女たちと比べられ、「夢見た場所で自分は1番になれない」ことを思い知らされるつらさはいかばかりか。かといって容姿も器用さも人より抜きんでているばかりに、華やかな場所への未練は断ち切れなかったに違いない。「どこかに自分が1番になれる場所があるのではないか」と、ずっと思っていたことだろう。

金スマはそういう「くすぶっている美女」を見つけてくるのがうまい。そう、きれいなだけではだめで、何かひと波乱起こしそうなプライドの高さと野心を感じさせる面白い女こそ、バラエティーには必要なのだ。番組MVPは浅田さんでもオチョさんでもキンタロー。さんですらなく、キャスティング担当だと思うほどである。

過去には村主章枝も…長期型のチャレンジ企画では負けず嫌いが裏目に出る？

忘れられがちだが、キンタロー。さんのお休み中に後任を務めていたのは、元フィギュアスケーターの村主章枝さんだ。彼女もまた、1学年後輩に荒川静香さんという天才がいたばかりに、ことごとく2番手に追いやられてきた人である。

実際に2017年の「痛快！明石家電視台」に出演した際は、「スケートも恋愛も2番手。人生がちょっと足りない。1番がない」と話していた。その前にはヌード写真集を出版したり、レズビアンの女性と公開お見合いをしたり、「1番」の居場所を求めるかのように迷走していた村主さん。社交ダンスでは柔軟性と優雅な雰囲気は素晴らしかったものの、やはり「1番」とは言い難い印象のまま終わってしまった。

トリノ五輪本番ではノーミスながら表彰台を逃し、一部では「なぜミスをした他の選手より下なのか」と不満をこぼしたとの報道もあった。柔和な外見と違い、中身は相当に負けず嫌いなのだろう。浅田さんや市來さんにも感じられる「負けず嫌い」な一面は競技では功を奏しても、長期密着型のバラエティーには裏目に出てしまう。

浅田さんはオチョさんに「練習不足」と怒られた時、「実は別のスタジオに通って練習していた」と明かす場面があった。できない姿、結果を残せない姿を人には見せたくないというこだわりは、実を結べばカッコいいが、そうでなければ不信を買うだけだ。

市來さんも就職活動中という情報が事前にあったなら、視聴者だって拍手で送りだしたことだろう。けれども二人とも「結果を出してからじゃないと言いたくない」と、下手にかっこつけたせいで不興を買った。負けず嫌いの完璧主義は、長期にわたるチャレンジ企画においては、ただの秘密主義で心を開かない人に見えてしまう。

「くすぶってる女」ありきの社交ダンス企画心労で辞退もささやかれる浅田舞の後任は誰？

でも浅田さんや市來さんを見て、努力が足りないから1番になれなかった人たちだとは思わない。むしろ自分を輝かせる場所を求めて、一生懸命あがいている人だと思う。足りないのは努力ではなく、誰もが文句を言わないほどの圧倒的な成功体験、何より自分自身が完全に満足できるような成功体験に基づく自信なのかもしれない。

今回、浅田さんはネガティブな声があったことも理解しており、企画続行に迷いが生じているともいわれている。現在はアルゼンチンタンゴにも挑戦しているようで、彼女の「自分が1番になれる場所」探しはまだまだ続くのだろう。

もしかすると、金スマでの後任探しはすでに始まっているかもしれない。なにせ芸能界を見渡せば、身体能力の高い「くすぶってる美女」は山ほどいる。そのキャスティング会議の様子を思うと、スマイルどころか笑顔も凍るような気がするのだが。

冨士海ネコ（ライター）

デイリー新潮編集部

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