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「夢を追うのにもリスクがある。沼ってあるんです」社長からの暴行、子宮頸がん…32歳グラドルが年内で引退を決意した理由

「夢を追うのにもリスクがある。沼ってあるんです」社長からの暴行、子宮頸がん…32歳グラドルが年内で引退を決意した理由

前編【いじめ、給料ゼロ、枕営業…引退する32歳グラビアアイドルが歩んだあまりに残酷な“夢への道”】からのつづき

グラビアアイドルで、現在は舞台を中心に女優として活動する林美佐さん(32)。10月に子宮頸がんと診断された彼女は、12月12日からスタートする主演舞台「誰が為の歌姫」(17日まで、新宿スターフィールド)を最後に引退する。舞台は林さん自身とも重なる物語だが、その半生はあまりにも衝撃的だ。記事の後編では卵巣腫瘍、事務所社長からの暴行、そして引退を決めた今の胸中を明かしてくれた。【徳重龍徳/ライター】

【写真21枚】台本の読み合わせのはずが、「全身チェックするから脱いで」といわれ――辛い出来事も林さんはすべて語ってくれた

林さんは事務所から給料も払われず、枕営業するよう言われながらもグラビアアイドルを続けていた。だが、26歳のころ、突然度重なる腹痛に襲われるようになる。

「夢を追うのにもリスクがある。沼ってあるんです」社長からの暴行、子宮頸がん…32歳グラドルが年内で引退を決意した理由 “神様は乗り越えられる人にしか試練を与えない”?「綺麗事を言うなって思うんです」(撮影・徳重龍徳)

「急性胃腸炎に3か月連続でなって、おかしいなと思って消化器内科にいってレントゲンを撮ってもらうんですが、原因がわからない。それで別の病院に行くと『下の方も撮りましょうか』と言われて、レントゲンを撮ると、お医者さんから『林さん、卵巣腫瘍です。子宮が4倍くらいに腫れていて、破裂寸前です。手術してください』と言われて。一歩間違っていたら破裂していたんです。たしかにおなかの痛みも生理のタイミングできていました。ただ、それまで生理不順もなかったので、突然でした」

「グラビアがやれないならもういい」

手術は内視鏡で済んだものの腹には4つの小さな穴を開けた。その穴が目立つため水着はしばらく着られなくなった。所属していた事務所からは「グラビアがやれないならもういいよ」と言われ、事務所を辞めることになった。

1年間の病気療養後、別の事務所へと入り、再びDVDを出した。ただ事前の宣伝などもなく、売り上げは芳しくなかった。

「もともとグラビアがずっと好きだったので、まだやりたい、まだやりたいという気持ちは持っていました。でも27歳という年齢もあって、ニップレスをつけただけというほぼ裸にならないとDVDは出せないと言われてしまって、それでDVDは卒業しました」

その後、林さんは事務所を転々とする。有名事務所に入るも仕事をもらえなかったり、再び給料未払いになったりと良いところには巡り会わなかった。ただ、ある事務所の仕事で舞台の主演を務めたことで、そこから舞台の仕事が入るようになっていった。

台本の読み合わせのはずが……

舞台女優を目指そうと、役者が多く所属する事務所を知り合いに紹介してもらう。

「事務所に入る際には演技のテストもあるし、ここは本格的だなと思っていたら事務所の社長から『スタジオをとってあるから、そこで台本の読み合わせをしよう』と言われて。言われた場所はマンションだったんですけど『スタジオがついているんだ』と言い切られて」

マンションの部屋に入ると、そこにスタジオはなくただの部屋だった。

「部屋に入ると、社長から『全身チェックするから脱いで』と言われたので『演技のテストだって言いましたよね』と怒ったんです。すると『うるさい』と殴られて、そのまま暴行されて……。社長は70歳くらいだったんですけど、男の人なので力は強くて。訴えようと思いました。でも相談した人に『部屋に入ったのはあなたですよね。しかも未成年でもない。その際の写真とか録音はありますか?証拠がないと難しい』と言われ、泣く泣く諦めました」

子宮頸がんの発覚

林さんは現在、知り合いの事務所に預かりという形で所属している。徐々に舞台で主演を張るようになり、舞台俳優として生きていこうと考えていた。しかし10代の頃から続く精神的な不調がそこに大きくのし掛かった。

「メンタルの部分で、芸能活動を続けていくのがしんどくなってきました。16歳の頃にかかった精神科で『30歳までには落ち着く』と言われたけれど、30歳になってもひどくなる一方。一つの舞台で精神的発作で3〜4回は倒れるんです。過呼吸とパニックになって、自分の頭を強く打ち付けたり、物を壊し始めたりもする。それが本当にしんどくって。年内で芸能界を引退しようと考え始めました」

同じ元グラビアアイドルの浜田翔子が妊活を頑張っていると聞き、引退後は婚活、妊活をしようと考えた。しかし、試練は続く。ことし8月、卵巣の定期検診にいくと医者から卵巣腫瘍の再発の疑いがあると告げられた。

「20代は本当にいろいろ大変なことがあって、だから30代はもう大丈夫でしょと思っていたんです。それが、まさか再発するとは思っていなかったので、落ち込みました」

それでもまた腫瘍だけを取ればいいと思っていた。親にも再発を知らせ「でも落ち込まなくていいよ」と伝えると、悲しそうな声が返ってきた。

「親から『実は前の卵巣腫瘍の際に、先生から次に再発したら子宮摘出になりますと告げられていた』と明かされて。親的には再発する前に結婚もして、子どもも生まれるだろうと考えて、言わなかったみたいなんですけど」

妊活を考えた矢先、手術をすることで子どもが産めなくなることを知った。そして10月、医師から子宮頸がんの陽性反応が出たと告げられた。

「自分自身、12歳から児童劇団で初めてステージに立って、そこからずっと夢に向かって走ってきた。今は32歳。節目じゃないですけど、ちょっと走りすぎてきて疲れた部分もあって。1回、頑張るのをやめてみるのも人生の選択じゃないかなと思ったんです。夢、夢、夢できたけれど、さすがにがんというワードは響きましたね」

子どもの頃からの芸能の仕事につくことだけを夢見て走ってきた。でも引退すると決めたとき、気持ちがふっと楽になった。つらいことが多すぎた夢への道に、やっと終止符がうてると思った。

「夢を追い続ける。言葉にするとかっこいいじゃないですか。でもそれだけではなくリスクがあるんだなって。がむしゃらにやってきたけど、いつかプツンと切れる瞬間がある。私、すごく嫌いな言葉があって。『人生落ちたら、上がるだけ』『神様は乗り越えられる人にしか試練を与えない』というやつ。それを聞くと、綺麗事を言うなって思うんです。底だと思っても、まだその下に落ちていく。沼ってあるんだよって」

最後の舞台への思い

林さんは今月12日から芸能生活最後の舞台「誰かの為の歌姫」に立つ。自身がプロデューサーを務める舞台は、“西成の歌姫”と呼ばれる坂田佳子さんをモデルに、林さんの人生を重ねた物語だ。

「最後だからと事務所が舞台を企画してくれて、脚本まで書いてくれました。演出家の意図としては御涙頂戴で終わらせたくないということで、内容は人生の寄り道ハートフルコメディです。脚本家の方も私の病気を知ってくださった上で『これから治療するにせよ、いつでも戻ってこられる場所はある』という意味も込めて台本を書いてくださって。本当に私のための舞台なんです」

今回、林さんにとって嬉しいことがもう一つある。芸能活動についてよく思ってはいなかったという両親が、初めて舞台を見てくれるという。

「父親は芸能活動にはずっと反対でした。ご当地アイドルをやっていた頃もグラビアをやっていた頃も絶対見ないと言っていたんです。でも実家に帰った時に、探し物を頼まれて父親の机を探していたら、私がライブをしている写真が出てきて。私が雑誌に掲載されたものも切り抜きでちゃんとファイリングしていてくれていて」

「子宮頸がんになったとき、親からは『もういいから早く帰ってきて』と言われていたんです。でも12月までは自分の人生を、夢をテーマに生き抜いていこうと決めたので。20年間エンターテインメントの世界に生きてきて、自分の最後の姿をどうしても親に見てほしい。そして今までやってこなかったけれど、舞台が終わったら頑張ってきた自分を褒めてあげたいんです」

「親孝行ってなんですかね?」

引退後は実家に戻り、まずは親と一緒にいたいという。

「これまで病気とかいろいろありましたが、病室で目を覚ますとそこにはいつも親がいてくれて、その安心感がすごくかったんです。なので引退したら実家に戻って親との時間に向き合おうと思っています。そして病気にちゃんと向き合いたいです」

林さんはそう話すと「親孝行ってなんですかね?」と私に質問した。壮絶な人生を聞いた後、なんと言っていいか迷ったが「親より長く生きることじゃないかな」と答えた。だからこそ林さんに生きていてほしいという思いもあった。

芸能人・林美佐としての最後の舞台の幕がもうすぐ上がる。少女の頃に抱いた夢への道のりは荊(いばら)という表現でも生ぬるいほど厳しく、刃物のような現実に血を流しながら歩んできた。そして舞台を降りれば、再び病気との戦いが始まる。その人生を知ればいつかハッピーエンドがやってくるとは軽々しく言えない。ただ神様がもう少し彼女に優しくあることを願う。

前編【いじめ、給料ゼロ、枕営業…引退する32歳グラビアアイドルが歩んだあまりに残酷な“夢への道”】からのつづき

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

「夢を追うのにもリスクがある。沼ってあるんです」社長からの暴行、子宮頸がん…32歳グラドルが年内で引退を決意した理由 外部サイト 【この記事の前編を読む】いじめ、給料ゼロ、枕営業…引退する32歳グラビアアイドルが歩んだあまりに残酷な“夢への道” これで「露出控えめ」なんて信じられない!東京オートサロンに勢ぞろいした“過激衣装“のコンパニオンたち 女性自衛官がスパッツ姿で美ボディを披露!男性は驚異のムキムキボディ!全国から“体自慢”の自衛隊員が集結したイベントをレポ―ト!

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