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16歳の母親に捨てられ児童養護施設へ 戦隊俳優が語った「感謝」

〈「お母さんは16歳で僕を産んだ」「何日もオムツを替えられず放置され…」“戦隊俳優”古原靖久(37)が明かす、児童養護施設に入った経緯〉から続く

2005年に人気ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)で俳優デビューし、2008年2月から放送されたスーパー戦隊シリーズ『炎神戦隊ゴーオンジャー』(テレビ朝日系)で主演を務めた俳優の古原靖久さん(37)。

【画像】16歳で古原さんを産んだ母親との“ツーショット写真”を見る

古原さんは、高校を卒業するまで児童養護施設で暮らしていた過去を持ち、YouTubeや講演会などで自身の経験を発信している。そんな彼に、児童養護施設入所後の母親との関係や、芸能界デビューのきっかけなどについて、話を聞いた。(全3回の2回目/1回目から続く)

16歳の母親に捨てられ児童養護施設へ 戦隊俳優が語った「感謝」
俳優の古原靖久さん©深野未季/文藝春秋

◆◆◆

過酷な生活の中で息抜きになっていた「週末里親」

――古原さんは子ども時代、児童養護施設で厳しい生活を送っていたそうですが、当時一番辛かったことは何でしたか。

古原靖久さん(以下、古原)やっぱりずっと1人で、みんなの矢面に立って施設の先生に怒られ続けたことですね。先生には信用されないし、ずっと周りに人がいるんだけれども、僕の味方は誰もいない。独りぼっちみたいな感じだったので、それが一番きつかった。

――そうした状況の中で、心の支えになっていたものはありますか。

古原『ドラゴンボール』ですね。一番好きな漫画なんですよ(笑)。あとは週末里親制度も、過酷な生活の中で息抜きになっていました。

――「週末里親」は、月に1〜2回程度、週末などを利用してボランティアの里親家庭で過ごす制度ですよね。

古原そうです。最初は、知らない人がいきなり親のように接してくるのは嫌だなと思っていたんですけど、僕が行った里親家庭はすごくいい方々だったんです。僕のことをすごく自由にさせてくれて、いろいろなところへ連れて行ってくれました。

施設では、ずっと正座をさせられる日々を過ごしていたじゃないですか。先生の前で正座して、勉強する振りをして、みたいな。だから、施設の外へ出るだけで嬉しいわけです。そんな僕が、動物園に連れて行ってもらったりして、本当に楽しかった。そういった意味では、週末里親はずっと続けたかったですね。

――週末里親はいつまで続いたのですか?

古原小学3、4年生のときから、6年生ぐらいまでです。里親家庭のおばあちゃんが体調を崩したりして、それでなくなったんだと思います。そのあたりの記憶はあいまいですけど。

お母さんに会いに来てほしいから、わがままは言えなかった

――お母さまは16歳で出産して、古原さんが5歳の時に児童養護施設に預けたそうですね。最後にお会いしたのは小学5年生のときだったとか。

古原そうです。最後に会った時、お母さんの財布を見たら2000〜3000円しか入ってなくて。わかってはいたけど、小学生ながらに「お母さん、生活が苦しいんだな」と思うと辛くなりました。

だから当時の僕は、変に甘えないようにしていたり、嫌われないようにしていたんです。ただでさえめったに会いに来てくれないのに、お母さんにわがまま言っちゃうと、嫌われちゃって本当に二度と来なくなるんじゃないかって。

でもその日、お母さんと一緒にいる時間を少しでも延ばしたくて「ジュースが飲みたい」とねだったんです。デパートの上の自販機でジュースを買ってもらって。カルピスのつぶつぶミカンを、ちょびちょび時間をかけて飲みました。

ヤンチャだった父親と「喧嘩別れ」した経緯

――子どもながらに、お母さまとはもう会えないかもしれないと感じていたんですね。

古原だからこそ、次の約束を取り付けたかったんです。それで最後、僕が「次はポケモンの福袋がほしい」と言ったらお母さんは「わかったよ」と言ってました。それが最後の言葉でした。いやでも、まさか本当にあれが最後になるとは思わなかったなあ。

お母さんもずるくって、それまで半年に1回とか、たまに来ていたから僕も「まだ来てくれるんじゃないかな」って待ち続けたんです。でも1年経っても来ない。2年経っても来ない。それで「あ、これはもう来ないな」って。捨てられたんだって認識できるまで、それくらい時間がかかったんです。

――その後、お父さまには会わなかったのですか?

古原お母さんとの縁が切れたあと、中学生の時に会いました。でも、会ったらもう最悪ですよ。お父さんが今までの分を取り返そうと、めちゃくちゃ厳しくて。一番言われて嫌だったのは、「おまえ、勉強しろ」と。お父さんが昔ヤンチャだったから、僕にはそうなってほしくなかったみたいで。

でも僕は、お母さんから、お父さんがヤンチャだったことを聞いてたから、当時は「なんでこの人に怒られなきゃいけないんだ」という思いが強かったです。反抗期だったのもあったし、それでお父さんのことを嫌いになって。最後は喧嘩をして、それ以来ずっと会ってないですね。

本名で芸能活動をしている理由

――古原さんは本名で活動をされていますが、それはお母さまに見つけてほしいという思いからだったそうですね。

古原どこかで見てくれてるんじゃないかって思って、本名で芸能活動を始めました。お母さんは僕を捨てたんですけど、結果的には感謝している部分があって。彼女は僕のことを堕胎することもできたはずなのに、そうしなかったんです。

その気持ちが強くなったのは高校生の時に、後輩の女の子が中絶したという噂を聞いたりしたことがきっかけで。こんなことを思うのはあまりよくないことなのかもしれませんが、お母さんが産んでくれなかったら、僕はこうやっておいしいごはんを食べることもできなかったわけだし、周りの反対を押し切ってでも産んでくれたんだ、と。だからこそ、感謝しています。

芸能界に入り、『炎神戦隊ゴーオンジャー』の主演に抜擢

――芸能界に入るきっかけは、なんだったのでしょうか。

古原養護施設を出たかった、というのが理由です。18歳のとき、卒園予定の2週間前くらいになって「就職か進学か決まっていないと卒園できないよ」と言われてしまって。そうしたら先生が「この2週間で決まらないと思うから、住み込みの新聞配達の仕事をもう用意している」と言うんです。

別にその仕事が嫌だったわけではないんですが、僕の人生なのに、勝手に話を進められたことがすごく嫌で。「絶対に先生の思い通りにはさせない」という気持ちが爆発したんです。でも進学するお金はなかったし、2週間以内に自分で就職先を見つけることも困難だと思いました。

――それで芸能界に?

古原はい。もともと芸能事務所にスカウトされていて、芸能界に入りたかったわけじゃないけど、事務所に所属という形なら卒園できるんじゃないかと思ったんです。だから「俺、芸能界に行きます。事務所も決まっています」と先生に言ったら「わかった」という話になり、それで事務所に入りました。

本当は卒園したら芸能界を辞めようかと思っていたんですけれど、すぐに『野ブタ。をプロデュース』のドラマ出演が決まって。それから『炎神戦隊ゴーオンジャー』の主演を務めることになって。

約4年前に知った、母親の死

――『炎神戦隊ゴーオンジャー』に出演することになった当時、周りの反応はどうでしたか。

古原「おまえ、敵側だろ」って。おまえがヒーローなわけないだろって言われましたね(笑)。僕は学生の時、真面目というより、どちらかというとヤンチャだったので、そんな反応が返ってきたわけなんですけど。

でも、テレビを見た養護施設の子どもたちが「ヤスが目の前でめちゃくちゃ頑張ってる、だからヤスみたいになりたい」と言ってくれたときに初めて、自分が人から必要とされたように思えて。人に認められる瞬間って、意外とそれほど多くないと言いますか。

――お母さまからは何かアクションや連絡があったりしましたか。

古原いいえ、でも今から約4年前くらいだったかな、お母さんのお姉さんからDMで「アキコ(母)の姉です」と連絡があって。そのときにはもうお母さんは亡くなっていたんです。連絡があった1年前に病気で亡くなったそうで、僕はその連絡で初めて母の死を知りました。

撮影=深野未季/文藝春秋

〈小5で生き別れた母が死去、手紙には「会う資格がない」と…児童養護施設出身の戦隊俳優・古原靖久(37)が語る「家族」への想い〉へ続く

(吉川ばんび)

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