元アイドル・田中聖容疑者（36）が、2月24日、覚醒剤所持の疑いで愛知県警に逮捕された。逮捕2日後に身柄を検察庁に送られる際の様子では、慣れない留置所暮らしとはいえ、かつての面影はない。

この田中容疑者だが、薬物事件で逮捕されるのは今回が初めてではない。
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愛知県警による“潰しの捜査”発見から約1カ月の逮捕

田中聖容疑者の今回の事件を整理する。
1月30日、田中容疑者は音楽ライブのために名古屋市に行っていた。そのライブの合間にビジネスホテルを利用。このビジネスホテルをチェックアウトした翌日の1月31日、ホテルから警察に「違法薬物と思われる白い結晶を発見した」という通報があった。

愛知県警は捜査に乗り出してすぐに、この白い結晶が覚醒剤だと判明。薬物事件として本格捜査に乗り出した。ホテルの宿泊名簿を洗い出したり、部屋の中の指紋を調べる等の鑑識作業を行い、発見された覚醒剤は田中容疑者のものだと断定。

2月24日に覚醒剤所持の疑いで田中容疑者を逮捕した。覚醒剤発見から逮捕までは、約1カ月弱ぐらい経っていることになる。

加藤綾子キャスター：
覚醒剤発見から逮捕に至るまで、これくらい時間がかかるものなんですか？

社会部・平松秀敏解説委員：
いろんなケースがあると思うんですけど、今の事件について私はこうだと思うんです。

ホテルというのは色んな人が出入りします。そうすると、田中容疑者以外にも覚醒剤を所持していた可能性がありますから、「他の人が本当に覚醒剤を持っていなかったのか？」という“潰しの捜査”を慎重に進めていった結果、約1カ月後の逮捕になったんだろうと思います。

社会部・平松秀敏解説委員：
逮捕直後、田中容疑者は「分からない」「弁護士と話すまで答えられない」と供述し、容疑を否認していました。しかし結局、尿鑑定を行ったところ覚醒剤の成分が出てきた。もうこれ逃げられないと思ったのでしょう。「覚醒剤は自分のものだ」と認める供述も始めているということで、逮捕容疑自体は、現場のビジネスホテルの部屋に覚醒剤・約0.164グラムを所持した疑いで逮捕されたということです。

3つのポイントで分かる田中容疑者の薬物への“慣れ”

社会部・平松秀敏解説委員：
今回の事件で私が気になるのが3点ある。

まず、所持していた覚醒剤が約5回分に相当する。1回の使用量が0.03グラムと言われているので5回分ぐらいを所持していた。しかも、ライブの合間に部屋で使用していた疑いがある。さらに、お粗末なことに覚醒剤を部屋に置き忘れたんじゃないか。

これらの3つのことを総合すると、田中容疑者は“初心者”ではなく、かなり薬物に“慣れている”のではないかと推測できるんです。

社会部・平松秀敏解説委員：
それもそのはず。田中容疑者は過去に薬物事件で逮捕されたことがある。

5年前の2017年5月、場所は東京・渋谷区の道玄坂。田中容疑者は車に乗っていたところ、パトロール中の警察官が「怪しい」と思い、声をかけ職務質問をした。すると車の中から微量の大麻が見つかり、現行犯逮捕されました。

この時も尿鑑定の結果、陽性反応が出て、車内からは吸引時に使うと思われる巻紙も出てきた。事件としては完全に黒なんですが、田中容疑者は結局、不起訴処分になった。

大麻取締法の落とし穴不起訴になる理由

社会部・平松秀敏解説委員：
なぜ不起訴になったのか？ポイントは3つあるんです。
まず1つ目のポイントは、発見された大麻の量があまりにも微量だったので、それが本当に使用するためのものかどうかがはっきりしなかった。要は証拠能力が不十分だったということなんです。

2つ目は、大麻は車の中に隠されていたわけじゃなく落ちていた。しかも、この車は他人名義のものだったということで、本当に大麻が田中容疑者のものかどうかというのがはっきりしなかった。

そして3つ目は、ずっと言われていることなのですが、大麻取締法では所持・栽培を罰する規定はありますが、「使用」を罰する規定がないということ。

この3つの理由で結局、田中容疑者は不起訴処分になった。ところが捜査関係者の間では、当時も起訴の見送りについては疑問視・問題視する声も聞かれていたんです。

社会部・平松秀敏解説委員：
このようなケースは少なからずあるんです。例えば、使用の形跡があるけれどもブツ（大麻）そのものが見つからないケース。あとは、大麻が発見されるも、田中容疑者と同じようなケースで、本当に微量なので起訴できないというケース。こういったことで逮捕できない・起訴できないということが、本当に度々あるということで少し変に思いませんか？

加藤綾子キャスター：
もどかしく感じますね。ここで食い止められることもあるのではないかなって感じちゃいますね。

社会部・平松秀敏解説委員：
田中容疑者に例えると全くそうなんです。5年前は大麻だったんですが、5年後さらに依存性の高い覚醒剤に手を出していた可能性があるということなので、この5年間でさらに薬物にのめり込んでしまった可能性もある。2017年の時に起訴して裁判にかけていれば、「覚醒剤にまで手を出すことがなかったんじゃないか？」というのが、私としては非常に残念でならないということなんです。

社会部・平松秀敏解説委員：
国も重い腰を上げてまして、大麻取締法の中に使用罪を創設しようと今、議論が進んでいるという現状です。

加藤綾子キャスター：
これまでなぜ大麻の「使用」に罰則がなかったのか疑問に思ってしまうんですが、法改正の動きがあるということで、柳澤さんはどうご覧になりますか？

ジャーナリスト柳澤秀夫氏：
私もモヤモヤしてしまいます。大麻の場合、使っただけでは罰することができないというのはどう考えても不思議で理解ができないです。しかも、大麻というのは強い刺激を求めていく“薬物の入口になる”と言われていますから、その入口の部分できちっと対応することを考えれば、やはり法律の不備の部分だと思いますので、早急に法律を改めて対応できるようにしていかないといけないんじゃないかなと思いますね。

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