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探偵への依頼案件は浮気調査を中心に「男女関係」が主たる相談内容となる。このため私たちは日々様々な人間関係に遭遇しているが、中には事件へと発展しかねないと感じるケースも存在する。その1つの例として挙げられるのが「ストーカー行為」につながるおそれのある場合だ。

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国内の「ストーカー事案」の実態は

まずは国内のストーカー行為に関する実態を押さえておきたい。

警視庁の「ストーカー事案の概況」によれば、ストーカー行為等に関する相談件数は、平成28年には2,586件であったのに対し、令和2年には1,232件と約半分に減少している。一方、ストーカー行為の検挙に関して見ると令和2年のストーカー行為の検挙は126件と、前年に比べ29件も増加している（なお平成28年は149件）。

こうしたデータに加え、私たちのもとに寄せられる数々の相談内容からも「ストーカー行為」が社会の裏面で顕在化してきているのではないかと感じる。こうした行為の心理の中には、恋愛感情が入り混じっていることもあり、一旦、こじれると暴行や傷害など、人身への加害に発展する場合もあるので要注意だ。日々私たちが直面する現場で何が起きているのかを見ていこう。

(※登場人物のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています）

最初は全く「別の依頼」だった

今回紹介する案件は、当初、ストーカー被害とはまったく別のものであったが、調査の過程で予想もしなかった事実に遭遇し、意図せず、現代社会の闇を垣間見る結末となった。

専業主婦だという50代の女性が訪ねてきたのは、午前8時という朝早い時間だった。探偵社に依頼者が訪ねて来て忙しくなるのは、午後から夕方にかけてが多く、わりと珍しい時間帯だ。

依頼者の名前は渡辺由里子さん(仮名・52歳)。弊社のチラシを見て相談の予約を申し込んだという。

「実は娘の件で調べて欲しいことがありまして……」

由里子さんが話し始めたのは、確かに親ならば心配せずにはいられない出来事であった。

写真はイメージです（photobyiStock）

由里子さんの家族は会社員の夫と長男、そして都内の大学に通う20歳の長女の4人暮らし。今回問題となったのは、長女の行状だ。

それはある朝のことだった。

社会人の長男と夫が、すでに朝食を済ませて慌ただしく出勤した直後、寝坊した長女がようやく起き出して、支度を始めたのである。ダイニングの椅子の上には、長女のバッグが無造作に置かれていた。

「ホントにもう、あと10分早く起きれないものかしら…」と、由里子さんは、洗面所で化粧をする長女に聞こえよがしに愚痴を言いつつ、簡単な朝食を用意していた。そしてテーブルにハムエッグの皿を置こうとしたその時、うっかり椅子にぶつかって長女のバッグを落としてしまった。

スマホや化粧道具、ノートなどが一部散乱してしまったが、その中に奇妙なものを見つけたのである。

それは厚みのある銀行の封筒。何気なく中を覗いてみると、中に入っていたのは100万円以上のお札だった。由里子さんは見てはいけないものを見てしまったような罪悪感にとらわれ、そのまま他のものと一緒にバッグに片づけてしまった。

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その直後、身支度を終えた長女がバッグをひったくるように抱え、トーストだけを食べながら出かけていく。

「きっと何かよからぬことをしていると思うんです。オレオレ詐欺ですか？大学生が加担して捕まったというニュースもあったので、もしもウチの長女がと思うと、心配で心配で…」

長女への尾行で「わかったこと」

これまで若い女性の行動調査は幾度も行ってきた。そのほとんどが、夫の浮気相手ではないかとの疑いを持つ妻からの依頼であったが。そして、これまでの調査経験で若い女性が大金を手にしていたケースでは風俗で働いていた例やパパ活をしていた例などが少なくなかった。

もちろん、すべてがそうとは限らない。株式投資で運良く大当たりしたり、暗号通貨で大きな利益を出す人もいるだろうが、それはほんの一握りではないだろうか。

ともかく、由里子さんの長女の場合はどうなのだろうか。今回のように尾行からの素行調査はそれほど難しいものではないので、探偵2人が追いかけることになった。

朝、家を出るところから尾行してわかったことは、事前の想定の通りだった。長女は性風俗の世界にどっぷりとつかっていたのだ。まず大学での講義が終われば、すぐに繁華街に足を向け、週に3回のペースで性風俗店で働いていたのだ。またこれ以外の日には、週に2日程度、客の自宅や指定されたホテルに出向くデリヘルもこなしていた。

さらに驚くことに、週末はなんと父親ほども年の離れた、いわゆる“パパ”ともデートをしていたのである。こちらは、月に2回程度。密会するのは都内のシティホテルだ。

一体、何のためにここまでしてお金を稼がなくてはならないのだろうか。そこが疑問ではあったが、母親の由里子さんが見たという100万円以上という金額を稼ぐことはそれほど難しいものではないようだ。

探偵が気づいた「怪しい男性」

長女への素行調査は、こうして全貌を掴むことができたが、ひとつ懸念していたことがあった。

それは尾行していた際、ある特定の男性が同じように尾行していたのである。探偵は、そのプロなので周囲の状況を的確に把握し、記憶にとどめる能力を身に付けている。場所が変わっても、その人物は常に長女を遠巻きに観察していたのだ。

探偵たちは、風俗嬢として働く長女に、別の危機が迫っていることを直感的に感じていた。一体、男性は何者なのか、その詳細は後編＜「20歳女性の素行調査中」に探偵が気づいた「彼女を追う別の人物」、二重尾行で見えたその“正体”＞でお届けする。

(※登場人物のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています）

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