◇「鎌倉殿の13人」畠山重忠役・中川大志インタビュー（下）

俳優の小栗旬（39）が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」（日曜後8・00）は18日、第36回が放送され、俳優の中川大志（24）が“武士の鑑（かがみ）”ぶりを体現してきた武将・畠山重忠の“最期”が描かれた。「畠山重忠の乱」（元久2年、1205年）のラストシーンは、主人公・北条義時（小栗）との壮絶な殴り合い。時代劇異例の“肉弾戦”に、重忠の誇りと魂を込めた。中川に4度目の大河出演を振り返ってもらった。

＜※以下、ネタバレ有＞

稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に、御家人たちが激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組！」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

中川が演じた畠山重忠は、義時と同年代の武蔵の武者。謹厳実直な人柄にして、知勇兼備。「武士の鑑」と謳われる。最終的には対立を深めた北条時政（坂東彌十郎）の娘・ちえ（福田愛依）と結婚。北条家の一員でもあった。

第16回「伝説の幕開け」（4月24日）の「一ノ谷の戦い」（寿永3年、1184年）。重忠は義時に頼まれ、源義経（菅田将暉）に従軍。鉢伏山の断崖の上へ登る際に「馬を背負ってでも下りてみせまする。末代までの語り草になりそうです」と語った。

第20回「帰ってきた義経」（5月22日）の「静御前（石橋静河）の舞」。重忠は銅拍子を担当。適当な三浦義村（山本耕史）に「音曲を侮るな！私がこの域に達するまで、どれだけの年数がかかったとお思いか」と声を荒らげ「音曲ガチ勢w」などとSNS上の話題を集めた。

第28回「名刀の主」（7月24日）、梶原景時（中村獅童）の処分を訴える署名集めの際には、義村の「おまえは裏に回るには、見栄えが良すぎる」に対し「そうですか。やはり見栄えが…」とイケメンぶりを自覚。これも反響を呼んだ。

中川の大河ドラマ出演は、細川忠利の幼少期・細川光千代役を演じた11年「江〜姫たちの戦国〜」、少年時代の源頼朝役を演じた12年「平清盛」、豊臣秀頼役を鮮烈に演じた「真田丸」に続き、4度目。初回から登場した今作が自身最長の出演となった。

撮影は約1年にわたったこともあり「もう胸がいっぱい。本当に終わってしまったんだなという寂しさもあります。最初は未知の部分もあった畠山重忠という人物を知れば知るほど、どんどん引き込まれていきました。“武士の鑑”と語り継がれる意味を理解していく中、自分がしっかりと最後まで畠山重忠を体現しなくてはいけないという思いを強くして演じました」と感無量の様子だった。

「畠山重忠の乱」の合戦シーンは今夏に3日間、静岡県富士宮市で大規模ロケ。馬から落ちた後の重忠と義時の一騎打ちは最終日のラストに撮影を行い、中川はこれをもって自身のクランクアップを迎えた。

「敵は畠山重忠だぞ。怖くないわけないだろ」（義時）と恐れられた重忠。「そういう男の最後の戦。勇ましく戦うシーンをたくさん用意していただきましたし、これまでの戦とは違うものに、そして馬の稽古しかり、アクションしかり、集大成にしようという気持ちで臨みました」と気合十分。ただ、体力的にはハードとあって「夏に撮るシーンじゃないですよね」と苦笑いした。

小学6年の時、初めて足を踏み入れた大河ドラマの現場の「先輩方しかいない、もの凄い緊張感。他では味わえない特別な空気感が、自分の体に染み付いて、いまだに残っていまして。何年経っても、あのスタジオに戻ると、やっぱり背筋が伸びるというか、怖いんですよね。あそこに立つのって、勇気が要るんです。それでも今回は『のみ込まれずに戦い抜く』というのが、自分としての新たな目標やテーマの1つだったんですけど、畠山重忠という男が毎回、自分を奮い立たせてくれたのかと思っています」。初共演の小栗とは15歳差の24歳ながら、重忠と義時が全く同年代に映る中川の“貫禄”が見事だった。

“畠山重忠ロス”が広がる中、次は本格初舞台「歌妖曲〜中川大志之丞変化〜」（11月6日開幕、東京・明治座ほか）主演に挑む。

＝おわり＝

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