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小泉今日子「昨年末に母を見送って。母の尊厳を守りたい一心で、在宅介護で姉と共に看取りを。母の住んでいた家を、みんなが集まれる場所にしたい」
〈6月15日発売の『婦人公論』7月号から記事を一部先出し!〉アイドル百花繚乱の1980年代に歌手デビューし、人気を集めた小泉今日子さん。歌手、女優としてキャリアを築く一方で、大きな転機を迎えたのは、50歳を目前に控えた頃だったといいます。(構成=篠藤ゆり撮影=岡本隆史)
【写真】たくさん授業料を払いましたよ、と笑う小泉さん
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すべての責任を自分で背負って
舞台や映像、音楽、出版など、エンターテインメント作品をプロデュースする会社「明後日」を立ち上げたのは2015年。その3年後に、デビュー以来36年間所属していた事務所から独立しました。
16歳でアイドル歌手としてデビューし、女優のお仕事もするようになって……、とくに不満があったわけではありません。ただ、組織の一員である以上、ルールには従わなくてはいけない。髪形ひとつ自分の意思では決められないんです。まぁ、私はルールを破ることもあったし、セルフプロデュースにも積極的でしたけど、自分の人生を自分では決められないという感覚は、ずっとありました。
30年以上そういう環境に身を置いていたけれど、50歳のタイミングが最後のチャンスだと思ったんです。これからはすべての責任を自分で背負って、今まで見えなかった景色を一通り見てやろう。自由を思う存分味わってから死のう、と。
また、演劇界には有名無名にかかわらず面白い人がいっぱいいます。彼らがチャレンジしたい時にプロデューサーとして力になりたい、という気持ちもありました。「こんなに面白い人がいるんだよー」って、みんなに言いたいんだと思います。
この8年で、もちろん失敗もたくさんしたし、それはもう、たくさん授業料を払いましたよ(笑)。私は高校1年の時に学校を中退して、ずーっと働いてきたので、今頃授業料を払っている感じですね。でも、なんとかなるさと楽観的に考えているんです。なにより、自分らしく生きているという実感があって幸せです。
『ピエタ』との出会い
会社を立ち上げる前の10年間は、『読売新聞』の読書委員として書評を書いていました。もともと本を読むのが好きで、テレビ局の楽屋や移動の車中ではいつも本を読んでいたけれど、それほど多読というわけではなくて。読書委員を務めていたおかげで、たくさんの本に出会えました。
2011年、読売新聞の担当の方が、「どうしても小泉さんに読んでほしい」と、大島満寿美さんの小説『ピエタ』を勧めてくれました。読み始めたら、止まらなくて……。
<中略>
会社を設立して間もない頃から、この作品の舞台化のために動いていました。実際、ある脚本家の方と具体的に話を進めていたのですが、残念なことにその方がご病気で他界されて。その後、劇作家で演出家でもあるペヤンヌマキさんが引き受けてくださり、満を持して2020年に上演することが決定。ところが今度はコロナで延期せざるをえなくなったのです。
すでに劇場を3週間おさえていたので、中止すればキャンセル料が発生します。2ヵ月ほどスケジュールを空けてくださっていた役者さんたちに、補償金も払いたい。「どうせ赤字になるなら、気持ちよく」と腹をくくりました。劇場はキャンセルせず、演劇、朗読、音楽などを日替わりで届ける企画に切り替え、『ピエタ』も朗読劇として上演しました。
<中略>
『ピエタ』の舞台化は、きっといつかできるだろうと信じていました。だからなかなか辿り着けなくても、ネガティブな気持ちにはなりませんでした。そしてようやく今年の夏、実現することに。
結果論ですが、今がベストタイミングだと思います。以前は流して読んでいたところが、しっかりと目に入ってきましたし。作品自体が、時期を選んでくれたのではないか、という気さえします。
<後略>
退院させて実家で看病することに
『ピエタ』の公演が無事終わり、一段落したら、家族や親戚と過ごす時間も大切にしたいと思っています。実は昨年末、母を見送りました。80代半ばでした。
腰椎を圧迫骨折して救急車で運ばれたんですが、その時の病院の対応が納得のいくものではなくて……。姉が怒りで震えているのを見て、「ここは私が」と思い、担当医とお話しして母を退院させました。それからしばらくは、一緒に外出もできたのですが、今度は脳梗塞で倒れ、また同じ病院に運ばれて……。
母は以前、上あごの腫瘍切除の手術を受けており、特殊な入れ歯を使っていました。でもそれを外されてしまい、食べることも話すこともできなくなってしまって。姉が何度も「つけてあげてください」とお願いしても、聞いてもらえませんでした。2週間何も口にできず、栄養は点滴のみ。
母の尊厳を守りたい一心で、姉と相談し、退院させて実家で看病することにしました。在宅医療の先生を探して来てもらいましたが、2週間も口を動かさなかったせいで、嚥下ができなくなっていて。本人が胃ろうや延命措置はしてほしくないというので、点滴で栄養を補給しながら、見守り続けました。
退院してから見送るまでの約1ヵ月間、毎日、叔母や姪っ子、姪の子どもたちなど、たくさんの人が母に会いに来てくれて。私もその間は仕事をほとんど入れず、姉と交替で母に付き添い、夜は母と一緒に過ごしました。
姉もみんなも、朗らかに、献身的に介護をしてくれる。その様子を見ながら、この人たちに何かあったら、私がお世話したいなぁと感じたんです。母が住んでいた家は、今、誰も住んでいないので、落ち着いたらちょっと手を入れてみんなが集まれる場所にしたい。私も、いつでも帰れるようにしたいです。
<後略>
外部サイト 小泉今日子「プロデューサーになったのは、残り時間は長くないから」 紺野美沙子「息子の独立、母を看取り、愛犬も見送って。生活を見直すタイミングで始まった氷見と横浜の二拠点生活。断捨離してこれからはモノよりコトに」 大黒摩季「病による活動休止、不妊治療…どんな向かい風も、向きを変えれば追い風に」関連芸能ニュース
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