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“ミモー”から30年、ちはるの現在地「オレンジの扮装が恥ずかしいなんて考えたこともなかった」

“ミモー”から30年、ちはるの現在地「オレンジの扮装が恥ずかしいなんて考えたこともなかった」

「あの番組は、とんねるずのお2人が映画の撮影でお休みすることになり、急きょ始まった番組でした。ウッチャンナンチャンもまだ25〜26歳と若かったからみんな必死!」

【写真】髪の毛も顔も全部オレンジ!ちはるの“ミモー”姿

当時を振り返り、そう語ったちはるさん。内村光良さん扮するマモーの愛人役『ミモー』として一世を風靡した。現在、タレント業だけでなく、カフェ「CHUMAPARTMENT」のファウンダー(始業者)ならびにチーフマネージャーとして活躍している。

「当時、フジテレビではとんねるずさんをはじめ、『ダウンタウンのごっつええ感じ』、山田邦子さんの『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』などの番組が人気を競い合っていました。スタッフを含め、みんながライバル同士だったから、“隣のスタジオで大爆笑”なんてことがあると、色めき立っていましたね」

「パンツ一丁は珍しくない」

当時、バラエティーには、ウッチャンナンチャンをはじめとするいまや大御所となったタレントが続々と誕生。さらには現在のようなコンプライアンスによる制約は皆無という時代だった。

スタッフ誰もが“われこそが一番面白い番組を!”と、時には過剰なほどに勢い込んでいた。

「だから私たちタレントもギリギリまで追い込まれて。コントとかでもタレントがオチをつけるまでカメラマンがずっとカメラを回し続けて、OKを出さないんです。カツラを取ってみたりとか、ウィキペディアでは私がリハーサルでパンツ一丁になったとありますが、記憶にないものの、その程度のことは珍しくもなかったですね」

出演者はじめスタッフの番組に懸ける思いは強烈で、オープニングやエンディングのテーマ曲選びひとつにも、一切妥協がなかった。

「エンディングをどの曲にするか、あるいはタイトル直後のひとコマ目に自分が初めて登場するとき、自分の顔をどう表現するのか。クチャッとするのかどうするのか?それを真剣に討論するんです。ですから“オレンジの扮装が恥ずかしくなかった?”とよく聞かれますけど、そんなこと、考えたこともなかったです」

緊張感で“オエッ、オエッ”

ちはるさんの心に、今も強烈に印象づけられている出来事がある。『やるやら』がまだ始まったばかり。番組の継続もウンナンのタレントとしての将来も、ここが勝負という時期のことだった。

「コントを生でしていた時代があったんです。その最初の半年間ほどですが、“よーい、スタート!”がかかるまで、ウッチャンもナンチャンも緊張感で“オエッ、オエッ”とずーっと嘔吐しているんです。それぐらい、プレッシャーがあったんだろうと思います」

番組同士のつばぜり合いもあり、それはちはるさん自身にも無縁ではなかった。

メイク室でオレンジ色のメイクをし、顔に線を入れていると、大ファンだった某有名アーティストが声をかけた。

「『大変だよね……。ところでその扮装、なんていうの?』って。当時は話しかけてもらえてうれしかったですが、今になって考えると、そのアーティストを通じてライバル番組からの探りだったんですね。なんでもないようなメイク室での出会いにも、当時思っていたよりずっと深い思惑とかがあったんだろうなあと思います(笑)」

タレントたちが画面で見せる軽快なコント。その裏には、競争心や計り知れないプレッシャーがあったようだ。

しかし『やるやら』は番組内での死亡事故により打ち切り。その後はミモーマモーのコントも、あまり触れられなくなってしまった。

プライベートでは1994年に結婚し、長男を出産。離婚したものの、2012年には再婚している。お相手は最初の夫の後輩で、なんと14歳年下という“年の差婚”を実現させた。

「彼はちょうど大阪に住んでいたんで、舞台で1か月大阪に行かなきゃいけない時なんかに、朝ごはんを食べる場所を教えてもらったり車を出してもらったり。“よくしてくれていた後輩の男の子”といった感じで、そこから生まれた付き合いでした」

夫婦円満のコツは、“束縛しすぎないこと”だとか。

「“ああじゃない、こうじゃない”とか“誰とごはんを食べに行ったの?”など探ったところで、お互いにイヤな気持ちになるだけです。だから気にしすぎない。大目に見合うようにしていますね」

とはいえ、現在39歳の夫は完全なネット世代。

「鬼滅でも韓流でも、この世代特有の“これ見なきゃだめだよ!”的な“共有し合いたい病”があって。そこには年の差を感じています(笑)」

ちなみに、前夫との間の子、登生さんは今年31歳。小さな時から音作りが大好きで、今では『デニロー』の名であのひろゆきとも共演。知る人ぞ知るアーティストになっている。

2002年、ちはるさんは実業家としてのスタートを切っている。カフェ&レストラン「CHUMAPARTMENT」を東京・目黒にオープン(現在は武蔵小山に移転)。もともと、インテリアが好きだったちはるさんだが、その趣味を生かし、倉庫を模した洒落たスペースに。スタジオとしても活用されている。

お客さんを楽しませたい思いは一緒

ただ、全国の飲食業の例に漏れず、コロナ禍による休業にも襲われたようだが……。

「実は2020年2月のコロナ禍が始まる直前の2019年の12月に、M&A(企業買収)してもらったんです。年齢も50歳にもなるし、一度M&Aを経験してみたくて。いい人に出会えて、コロナ直前に買ってもらえました。でもその直後にコロナ禍でしたから、社長さんにはホント、恨まれました(笑)」

カフェを売却したことで、ちはるさんは経営者からチーフマネージャーに。だが経営者から一従業員になることで、それまで見えなかったものが見えてきたという。

「M&Aまでは一人オーナーだったから、経営からの目線だけで見ていたんですよ。でもチーフマネージャーになったことで、経営と社員、両方の立場から考えられるように。スタッフが風邪をひいたらタクシーで送ってあげたりとか、関係がより緊密になりましたね」

そう語るちはるさんに、お客さんたちが、“あ、見てましたよ!”“ちはるん、会いたかったよ〜”と声をかける。

そんな声が、本当にうれしくありがたいとちはるさん。

カフェは20周年を迎えた。「お客さんを楽しませたい思いはテレビでミモーをやっていたころも、カフェにたずさわる今もずっと一緒」。バラエティー黄金期の疾風怒濤の経験は、現在のちはるさんの貴重な礎となっている─。

取材・文/千羽ひとみ撮影/北村史成

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